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翌朝。
外はよく晴れ渡っている。
「アイビー、おはよう。支度をお願い。」
「おはようございます、お嬢様。まぁ、目が腫れていますわ」
アイビーは眉尻をさげて、冷えたタオルを目に押し当てる。
「用意周到ね。」
鏡の前に座ると、確かに目は腫れぼったく、頬も少し赤みかがっていた。
昨晩。
お兄様から、他国に嫁ぐ事になったと告げられた。
その場では平静を保ったものの、部屋に戻りアイビーと2人になったら涙が止まらず、夜も更けるまで泣いていたのだ。
生まれ育った荘園を出なければならないことも、今まで一度だって会いにきてくださらなかったお父様のことも、私のことを良くは思ってないだろう伯母様のことも、何もかもが怖かったのだ。
まだデビュタントもしていない15歳。病気がちで、近くに住む貴族との交流すらも出来ていない。
降って湧いた結婚話に動揺するなというのも、無理な話だろう。
「こんな顔でお会いしたら、お父様はどうお考えになるかしら」
「大丈夫ですよ、お嬢様。お支度の間冷やしていれば治るほどです。」
もう一度、大丈夫ですよ、とアイビーは言う。
「ねぇ、アイビーはお父様にお会いしたこと、あるの?」
「いいえ、このお屋敷にご奉公するときにお見かけしただけで、お会いしたことはございませんよ」
「優しい方かしら...」
「お嬢様は、亡くなられたお母君によく似ておいでです。きっと、お母君の面影を残すお嬢様を大事にしてくださいますよ。」
タオルは私が押さえて、アイビーには髪を整えてもらう。
「今日はどのドレスになさいますか?」
「そうね、できるだけシンプルな装飾の物がいいわ。お父様や伯母様に好感を持っていただけるような。」
アイビーの手でするすると髪が編まれていく。
ドレスに着替えて、朝食の席につく。
今日のメニューはフレンチトーストとサラダ、オニオンスープだ。
やけに豪華なのは、シェフが私を気遣ったのか、アイビーの差金なのか...、どちらにせよ、余程心配をかけたらしい。
給事するアイビーに笑顔を向けると、ほっとしたような笑みを返してくれる。
部屋で朝食を終えると、今度はお兄様のお部屋に伺う。廊下に出ると、目的はすぐに果たされた。
「ロゼ、おはよう」
「あら、お兄様。おはようございます。ちょうど伺おうと思っていたのよ」
「それは、すれ違いにならなくて良かった。父上と伯母上がいらっしゃる前に、応接室に行こう」
「お二人は何時ごろいらっしゃるの?」
「急いで向かっているらしい。午前中にいらっしゃるだろう」
「あら、それは...。本当に随分急いでくださるのね」
兄と連れ立って、心持ち早足で応接室に向かう。




