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「ロゼに、縁談がきた。アストラバーグ国の伯爵家、御三男だ。」

我が国と戦争になりかねないほど仲が険悪な国の、れっきとした貴族家に、正妻の子ではない私が嫁ぐ?何かの間違いだわ、きっと。えぇ、そうよロゼ。眩暈なんて起こさなくていいの。

「お兄様、悪い冗談はおやめくださいな。驚いたではありませんか。」

ぎこちない笑顔だったと思う。だって、お兄様の目がこれ以上ないくらい真剣だったのですもの。


「お兄様...?」

「ロゼ。ショックを受けただろう。だけどこれはもう決まってしまった事なんだ。」

お兄様が席を立って、私の横に来る。そのまま膝をついて私の手を取る。

「力の及ばない兄を許しておくれ」

私の手に額をつける兄に、もう冗談では、なんて言えなくなってしまった。


「本当なのね、本当に私がお貴族様に嫁ぐのね。それも、アストラバーグの貴族家に。」

「そうだ。ただ、お前独りで行くわけではない。他に我がミネツタック国からアストラバーグに嫁ぐ女性が他にもいる。」

その言葉に引っ掛かりを覚える。

ミネツタックから、アストラバーグに何人もの女性が嫁ぐ?まるで...。

私の中で、不安はますます募っていく。

「お兄様、私、デビュタントさえ出来ない歳よ。一緒に行くご令嬢がいらしても、その方達とは面識もないわ」

根拠のない不安を押しやり、現実的な問題を訴える。

「お前のデビュタントは、父上の姉君、我々の伯母にあたる方が取り仕切ってくださる。伯母上はそれまで、改めてお前を教育してくださるとのことだ。」

礼儀作法や歴史、教養なんかは身に付けたけれど、それがどこまで通じるのかは確かに未知数だわ。けれど...。

「そうなの...。でも、でもお兄様、私の血筋でお相手は納得してくださるの?」

「お前のお相手は...、今回のお話を受け入れてくださっているのは、間違いないようだ。すまない。友好国ではない上に、お相手は御三男だ。情報は今から集めることになる。」

お兄様は、相変わらず私の前に膝をついて、私の手を握り、私の目を覗き込んでいる。その目に浮かんでいるのは、義憤と憐憫だった。

この話をまとめてきたのはお兄様ではないのよ、ロゼ。これ以上ご心配もご迷惑もおかけしてはならないわ。

「お兄様、私、覚悟を決めるわ。お兄様の妹として恥ずかしくないように。今まで養育してくださったお父様に報いるために。」

「ロゼ。遠く離れてもこの兄はお前の味方だよ。それは忘れないでおくれ。」


私達は固く手を結んだ。

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