【番外編】
「よかったわね、レイちゃん。おめでとう。お姉さんもうれしいわ」
妖艶な微笑みを浮かべるつぐみが、優しく私の肩を抱き寄せてくれた。
足元では、羊の姿をしたタオさんが「メェ」と鳴きながら、私の足にすりすりと頭を擦り付けてくる。言葉は喋れなくても、そのふかふかとした温かな毛並みから、純粋な祝福と喜びの感情が真っ直ぐに伝わってきた。
「これからママンになるんだから、もっともっと強くならないとね」
幸子が満面の笑みで、私の顔を覗き込む。
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥がじんわりと熱くなり、視界が涙で滲んだ。
(……私がお母さんに)
ずっと、一人ぼっちだった。孤独な暗闇の中で息を潜めて生きてきた私を、サトル様が見つけ出してくれ、優しく手を引いてくれた。彼と出会って、私の世界はどこまでも広く、色鮮やかなものになった。
そして今、私のお腹の中には、彼との愛の結晶である『新しい命』が宿っているのだ。
ポロポロと涙が頬を伝うと同時に、かつての過ちが脳裏をよぎった。
白面に唆され、心の隙を突かれた時のこと。あの時、私の弱さのせいで、サトル様や大事な人たちをひどく傷つけてしまった。
また同じ過ちを繰り返すのか?
今度も自分の心の弱さのせいで、まだ見ぬ愛しい我が子まで危険な目に遭わせるというのか?
――答えは、絶対に『否』だ。
娘か息子かはまだ分からないけれど、私とサトル様の子だ。
この子も、サトル様も、周りにいる大切な人たちも、絶対に私が守り抜いてみせる。
強く、誰よりも強くならなければ。
私がぎゅっと拳を握りしめ、魂の底から覚悟を決めた、次の瞬間だった。
ゴォォォォォォッ……!
「……え? なに、これ……」
私の中から、信じられないほどの凄まじいパワーが、まるで火山が噴火するように湧き上がってきた。
ひんやりとしていた霊廟の空気がビリビリと震え、私を取り巻く霊力が、目に見えるほどの眩い光となって立ち昇る。
幸子たちが驚いて一歩後ろへ下がるほどの、圧倒的な熱量と力。
守るべき存在を得た『母としての覚悟』が、私の霊力の底を、限界すらもいとも簡単に突き破って引き上げたのだ。
【おしらせ】
※3/1(日)
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