【番外編】
私は一人、深く反省していた。
今回の騒動は、ひとえに私の心の弱さが招いたものだ。
最愛のサトル様や、周囲の皆に多大な迷惑をかけてしまった。
もっと心を強くしなければならない。
どんな困難にも負けない、確固たる強さが欲しい。
私は目を閉じ、意識を心の奥底へと深く沈めていく。
向かった先は、私自身の精神世界である霊廟だ。
ひんやりとした静謐な空気が肌を撫で、どこからか白檀の甘い香りが漂ってくる。
目を開けると、そこには見知った顔ぶれがくつろいでいた。
おかっぱ頭の座敷童子である幸子。
妖艶な鵺の美女であるつぐみ。
そして、もこもことした羊の姿をした饕餮のタオさんだ。
「どうしたの、レイ?」
幸子が不思議そうに小首を傾げて近づいてくる。
「私、もっと強い心を手に入れたいです! どうか、修行させてください!」
私は力強く宣言し、勢いよく頭を下げた。
自分の不甲斐なさを乗り越えるためには、私自身の精神を鍛え直す必要があるのだ。
そんな私の決意に対し、幸子はあっさりと頷いた。
「そうだね。レイは母になるわけだし、強くなるのは良いことだよ」
「……はは?」
幸子の口から飛び出した予想外の単語に、私は間抜けな声を漏らした。
母。はは。マザー。
思考が完全にフリーズし、パチパチと瞬きを繰り返す。
「あ、やべ。今の完全にネタバレだった」
幸子がペロッと舌を出し、短い両手で慌てて口をふさいだ。
しかし、すでに放たれた言葉は取り消せない。
「え? え? ええっ!?」
「おめでとうございます。実は、レイ様……妊娠してます!」
つぐみが満面の笑みを浮かべて拍手し、タオさんが嬉しそうにメェと鳴いた。
唐突すぎる祝福の言葉を浴びた私は、衝撃のあまりバタッと膝から崩れ落ちる。
「……えええええええええええっ!?」
精神修行のお願いに来たつもりが、とんでもないサプライズ発表を食らってしまった。
私の素っ頓狂な絶叫が、静かな霊廟の中にいつまでも木霊し続けた。
【おしらせ】
※2/25(水)
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