【番外編】
互いの唇が離れ、照れくさそうに微笑み合った直後だった。
ふいに、足元から小さな影がひょっこりと顔を出した。
おかっぱ頭に赤い着物。座敷童子の幸子だ。
彼女はどこか申し訳なさそうに眉を下げ、私の服の裾をきゅっと掴んだ。
「レイ、ごめんね。……うちがついていながら、こんなことになっちゃって」
「ううん、いいの。幸子のせいじゃないわ」
私はしゃがみ込み、幸子の小さな頭を優しく撫でた。
「全部、私の心の弱さが招いたことだから。幸子が謝ることなんて何もないのよ」
「レイ……」
「それにね、幸子に聞きたいことがあったの。……白面は、完全に滅びたの?」
先ほど、すみさんから器が残っていない以上は復活できないと聞いたばかりだ。
だが、あやかしの性質に詳しい幸子の見解も聞いておきたかった。
私の問いに対し、幸子はこくりと頷いた。
「うぃ。あの白面金毛九尾は、確かに消滅したよ。ただね……妖魔が完全に滅びるっていうのは、実は無いの」
「どうして?」
「妖魔は、巡るから」
幸子は真剣な眼差しで、ぽつりぽつりと語り始めた。
「人の負の感情が漏出し、固まったものが妖魔となる。人から感情がなくなることはないように、妖魔が真の意味で世界から消え去ることはないんだよ」
「……それは、またいつか、あいつが復活するってこと?」
「ううん、そうじゃない」
幸子は首を横に振って否定した。
「あの滅した白面と、全く同じ人格の妖魔が生まれることは二度とない。でも、行き場を失った力は世界を巡って、また別の形で出てくるかもしれないの」
「別の形……」
「うん。そのときは記憶も人格も消えた、全く別の妖魔となるかもしれない。あるいは、人間として生まれ変わるかもしれない」
人間として。
その言葉に、私はわずかに目を見開いた。
「うちも、元は普通の人間だったしね。その逆も、当然ありえるってこと」
「……そっか」
幸子の言葉を聞いて、私の中にあった最後のわだかまりが、すっと溶けていくのを感じた。
妖魔も人間も、元を辿れば同じ魂の循環の中にいる。
ならば、必要以上に恐れることはないのだ。
私はもう一度幸子の頭を撫でて立ち上がると、隣にいるサトル様に向かって、晴れやかな笑顔を向けたのだった。
【おしらせ】
※2/20(金)
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