#6 シャンバラ
よろしくお願いします。
「にゃ~。すごい人と露店の数ですにゃ~」
「すごいでしょ~。この街の名物よ~」
そこはかなり広い丸形の広場だった。
所狭しと露店が並び、多くの人が商品を眺めたり、交渉している。
僕達は店を回る。露店は地面に布を広げて、その上に商品を置いているので非常に見やすい。
もちろんここでもナナキは目立つ。しゃがんで商品を見ておりしっぽがユラユラ揺れている姿に周りは釘付けである。
何店か回ったが、ナイフは多くあるものの手頃な刺突剣がなかなか見つからない。
広場を彷徨っていると、
「おやおや。可愛いお客さんだ。猫さんはどのようなものをお探しですかな?少し見ていってくれませんか?中々皆様見てくれなくて。出来はいいと保証致しますよ。まぁ、私が作ったものではないですが」
「にゃ?」
横から声をかけられる。
そこにいたのは、
「執事?」
執事服を思わせる燕尾服を着こなす紳士がいた。灰色の髪はミディアムショートのクセッ毛で片目を隠している。さらにカイゼルひげとあごひげがマッチしているナイスガイだ。ヒューマンだろうか。特に耳が長かったり動物の特徴もない。纏う気品は貴族と言われても信じる。
そんな出で立ちの男が木箱に座り、露店をしている光景はかなり違和感がある。
(NPC?貴族の道楽に巻き込まれたか?)
「ちなみに私は同郷ですよ」
プレイヤー!?職人にしてはロール間違ってないか?
シィナさんが質問する。
「あなたは職人なの~?。店番は職人しか認めれないはずよ~」
見習い広場だものな。ということは職人なのか。全くイメージが出来ない。
「はっはっはっ!でしょうなぁ。しかし、だからこそ面白いでしょう?さて自己紹介を。【シャンバラ】所属【細工職人見習い】のサバスと申します。今後とも良きお付き合いを」
シィナさんの質問に楽しそうに笑い答える。そして、立ち上がり綺麗な礼を取りながら名乗る。細工職人なのか。
「ニャニャキですにゃ。これでも男ですにゃ」
「シィナよ~。ギルド職員してるわ~」
「ナナキさんにシィナさんですな」
さすがは執事紳士。発音の問題に理解してくれている!
「さて、自己紹介が終わったことですし。私も職人らしく商売をしましょうか。お求めはなんでしょう?」
サバスさんが商売を始める。あれ?意外と違和感なくなってきたな。
「この子の装備を見に来たのよ~。駆け出しだからね~。それにしても幅広い商品を置いてるわね~。武器に服に装飾品。しかも調度品まであるわね~」
「なるほど。初めは店舗での購入は敷居が高いですからな。商品の幅が広い理由は簡単ですよ。ここにあるものの細工は私が担当したからです」
サバスさんの露店はシィナさんの言う通りジャンルが様々だ。剣にナイフ、盾。革鎧にジャケット、ローブにマントに手袋、ピアスにネックレスなど。そしてティーカップや皿。細工職人では作れないものが多い。
サバスさんはその理由を答える。
僕達はその理由に納得する。
「なるほどね~。珍しいわね~。見習いで共同制作するのは少ないと思ってたわ~。どっちの作品と呼ぶかとか売り上げで揉めたりするのよね~」
「そうですな。我々も師匠たちに言われましたよ。しかし解決方法は意外と簡単なものですよ」
僕はシィナさんの言葉を考える。確かに装飾された剣を作った場合、剣を打ったのは鍛冶職人だが、装飾したのは細工職人。どちらも自分の作品と呼べる。だから売れた場合単純に折半では納得できない者もいるようだ。自信があるから故だよな。
「簡単にゃんですか?結構ややこしい気がしますにゃ」
しかし、サバスさんは簡単に解決できるという。僕は思いつかなかった。
「ふふふ。見習い広場の特徴を考えれば思いつきにくいでしょうな」
サバスさんは答える。
それにシィナさんは反応する。
「どういうこと~?広場の在り方はいいものだと思うわ~。あなたはそれを否定するの~?」
「とんでもない。でなければここにはいませんよ。答えは本当に単純です。見習い同士で1つの店を作ることです」
しかし、それでは今までと変わらないのでは?
「今まで揉めた方々は『自分の名前』をブランドにされていたからと考えています。ならば店を作り、作品のブランド・制作者・売り上げも店名に集中させればいい。我々はそう考えました」
なるほど。言われると簡単だが……。
「もちろん売り上げの振り分けはしっかりと決めないといけません。ちなみに私の取り分は各ジャンルの売り上げの2割です。基本ほとんどの商品は私の細工を施しているのでそこそこ稼げていますね。それに振り分けてはいますが、店としての売り上げなので制作費が厳しいジャンルが出れば他の職人たちから援助として振り分けられます。中々なものでしょう?まぁ、師匠達を説得するのは骨が折れましたがね」
「なるほどね~。確かに他の職人たちでは厳しそうね~」
サバスさんは肩すくめて答え、シィナさんはそれに納得し感心している。
「と、いうわけで色々お求めならどうぞ。見習いですけど、様々な職人を抱えている我が店ならばナナキさんのご要望にお応えできるかと思います。正直ナナキさんの装備は色々とオーダーメイドになりそうですしね」
「そうですにゃ~。防具とか服は間違いにゃくオーダーメイドですにゃ。大きさも違うししっぽもあるし」
「ここは中々当たりかもね~」
1つの店で終わらせられるのは魅力的だ。シィナさんからもお墨付きもらったし。
「ではサバスさん。お願いしますにゃ」
「かしこまりました。では、いくつか質問させていただきます。今のところ優先すべきものは武器と防具とお見受けします。始めたばかりですから資金も初期から変わっていないでしょう。種族はウェア・キャットまたは大穴でケット・シーと考えてますがいかがでしょうか?」
お見事。
「僕はケット・シーですにゃ。一番欲しいのは武器ですにゃ」
「……本当にケット・シーでしたか。いや、シィナさんがいる意味を考えれば簡単でしたね。まだまだですな私も。武器となると職業をお聞きしてもよろしいですかな?」
「フェンニャ―ですにゃ。刺突剣を考えてますにゃ」
「「……フェンニャー?」」
僕の職業を聞いてシィナさんとサバスさんは首を傾げる。
僕は猫の呪いについて説明した。
説明を聞いてシィナさんは後ろを向いて肩を震わせている。
サバスさんは顎をさすりながら考えているみたいだ。
「片手剣と盾が持てませんか……。どうやら他の職業はかなり制限がありそうですな。ここに一本レイピアがあるのですが、持ってみていただけませんか?これも…もしかしたら何かあるかもしれません」
サバスさんは考えてアイテムボックスからレイピアを出してきた。何かあるかもって嫌なこと言うなぁ。
差し出されたレイピアを持つ。ちょっと重い。それになんか持ち上げにくいな。
ゆっくり持ち上げて僕はバランスを崩しそうになる。その様子を見て2人は少し顔をしかめる。
「……やはり一般的なレイピアでは重心のバランスが合いませんか。少し重そうですね。ナナキさんはやはりオーダーメイドがおすすめですかね」
「体格や筋肉の付き方の違いがここまで大きいとヒューマン基準は難しいわよね~」
「それに手の形も独特だね。柄も考えないと突いたときすっぽ抜けると思うよ」
「「「ん?」」」
シィナさんとサバスさんが考えていると不意に声が聞こえてきた。サバスさんの後ろからだ。
目を向けると、そこにいたのは小麦色の肌に白髪を後ろで纏めヘアバンドしている女性だった。
身長は150cmほどの小柄だがスタイルは良くメリハリはシィナさんにも劣っていない。
そんな彼女の額からは小さい角が2本生えている。鬼族であろうか。
「サバスさんのところの職人さんかしら~」
「そうだよ。【下級鍛冶職人】のカラナだよ。よろしくね。お姉さんに猫ちゃん」
僕とシィナさんも自己紹介する。僕が男であることを聞いた時は少し目を見開いていたが。解せぬ。
サバスさんがカラナさんに事情を説明する。
カラナさんは僕を見つめる。そしていきなり手をつかむと観察を始めた。
「うーん。やっぱりナナキ君の刺突剣は色々と試行錯誤しないとだめだね。正直、そのナイフも使いづらいと思うよ」
「マジかにゃ」
「超マジ」
カラナさんの言葉に思わず嘆く。それに大真面目に返すカラナさん。
「ニャイフもですかにゃ?」
「ぶふっ!ニャイフ……くふははは」
猫語にカラナさんが噴き出す。
僕は少し不機嫌に聞き直す。
「こっちもですかにゃ?」
「ごめんごめん。向こうじゃネタじゃないと猫語なんて聞かないから、ついね。まぁ、多分だけど何かに切り付けたら手から弾き飛ばされると思うよ?」
カラナさんの返答に顔を顰める。
その表情を見てカラナさんは再度説明してくれる。
「大丈夫。ナイフは柄を直せばいいだけだから。問題は刺突剣だね。これはさすがに僕も一回で作れるとは思えないから明日とかでも工房に来てほしいな。師匠にも説明しとくから。これ店の場所ね」
カラナさんはそういって地図を渡してきた。そのついでにフレンド登録をした。サバスさんもついでに。
明日店に行く約束をして2人と別れた。
「防具は今度にしましょうか~。武器の金額が分からないし~」
「ですにゃ。お金はどうやって貯めようかにゃ」
狩りに行けばシィナさんに招き猫にされてしまう。
「ちゃんと街中で出来る依頼を紹介してあげるわよ~。討伐だけが冒険者の仕事じゃないわよ~」
「ありがとうございますにゃ」
今のところ全くゲーム感がないけど……これもDTOの醍醐味かな。いろんなことを楽しもう。
未だに戦闘シーンもないし、ヒロインも出ない(-_-;)
もう少しで戦闘あります!
ありがとうございました。




