#45 世界の片隅でにゃっふーーー!
よろしくお願いします。
僕とナティは第2の街【ツヴァート】に向かう準備を始めていた。
その道の途中には洞窟があり、そこにいるボスを倒さないと街には行けない。
「野宿ににゃるにゃ。どうしようかにゃ?」
「テント買いますにゃ?」
「そうだにゃあ。買っといても損はにゃいにゃ」
宿で必要な物をピックアップする。
雨の可能性もあるもんね。
そこにナラルスさんが声を掛けてきた。
「2人だったら、ヒューマン1人用テントでも十分じゃないのん?」
「そうですかにゃ?」
「だってポーチに荷物入るしねん。身一つで寝れるでしょん?だったら余裕で寝れると思うわよん」
「確かににゃ……」
言われてみれば確かに……。
あの神殿のベッドだって、2人で寝ても余裕あったもんね。
うん。買おう!
「買うにゃ」
「ですにゃ」
「2人だったら寝袋より毛布2枚買っておいた方がいいだろうねぇ。ケット・シー用の寝袋は売ってないしねぇ。君達だったら毛布でも2人で使えるだろう?」
エリマさんがアドバイスをくれる。
確かに。
おぉ!かなり節約できるね!
ナティも頷いてくれている。
よし!
「そういえば、2人で行くのかい?」
「みんにゃあっちこっち行ってるにゃ」
ディノや白蓮達はすでに第2の街にいる。
イベント終了後にあっという間に行っていた。
ラドンナとオグマ、ニナも今は護衛クエストで、第2の街に向かっているそうだ。
チルッチは「しばらくファクトリーでチューニング!」と言って旅立った。
どうやら、種族レベルを上げるための場所があるようだ。
ということで、クランメンバーほぼ全員がいない。
「そういうことならねぇ。でも、少し不安だねぇ」
「こればっかりは手を出してはダメよん。エマ」
「分かってるよ。ラル」
仲良いよね、お2人。
僕達は買い出しに出かける。
テントと毛布を買い、簡単なキャンプキット一式を購入する。
食材やアイテムも買い込んで、とりあえず買い物終了。
せっかくなのでお茶でもすることにした。
和風の茶屋【茶屋《兎》】が目に入ったので、そこに入ってみる。
「いらっしゃいませ~。あら~!噂の猫さん達じゃないですか~」
出て来たのは赤いうさ耳をした和服を着た給仕の女性。
……なんか見たことがある気が?
「2人行けますかにゃ?」
「大丈夫ですよ~。どうぞ~」
席に案内してくれるお姉さん。
ナティも首を傾げている。
やっぱりどっかで会った気がする。
「私はヒサナっていいます。今後とも御贔屓に」
「ニャニャキですにゃ」
「ニャティですにゃ」
「猫っぽくてかわいい名前ですねぇ」
「ちゃんとニャ前が言えにゃいんですにゃ」
「あら。ナナキ様とナティ様でしたか。失礼」
「しかたにゃいですにゃ」
大福とお茶をお願いする。
席は畳の座敷だ。ただテーブルはカウンター型で僕達は並んで座っている。
他にもお客さんは結構いる。
人気店のようだ。
それにしても……。
「座敷ってにゃんか落ち着くにゃあ」
「そうですにゃあ。寝転がりたくにゃりますにゃ」
「これは……畳の部屋にすべきかにゃ?」
「……それがいいかもですにゃ」
ベッドも嫌ではないが、畳に布団の方が気持ちいい気がするな。
……白蓮に僕の部屋は畳にしてくれって連絡しておこう。
「お待ちどう様です~。兎大福セットです~」
ヒサナが持ってきたのは、兎の形をした大福が2つ。
お茶の受け皿も兎の顔の形をしている。
おぉ。可愛いな。
「可愛いですにゃ」
ナティもニコニコしている。
うん。可愛いが倍増!
さっそく一口。
うん。ウマー。
ナティも両手で掴んで食べている。
僕達には少し大きくて、ナティは一生懸命頬張っている。
うん。可愛いが3倍!!
周りを見ると、他の客達もナティを見てほっこりしていた。
正確には2人にほっこりしているのだが。
すると、ヒサナが近づいてきて、お皿を僕達の前に置く。
「店長からのサービスです~。どら焼きをどうぞ~」
「ありがとうございますにゃ!」
ナティは笑顔を輝かせる。
どら焼きが好きだったみたいだ。
メニューにはなかったけど?
「新商品です~。ナティ様の感じだとメニュー追加でもよさそうですね~」
「大好きですにゃ!」
どら焼きの皮には兎の顔が焼き入れされている。
ナティはパクっと食べて、うっとりする。
かわええなぁ。
思わずヒサナに親指を立てる僕。
それにヒサナも親指を立てて返してくる。
うん。通わせて頂きます!
満足して店を後にする2人。
ヒサナはそれを手を振って見送る。
ヒサナは厨房に戻る。
「ふぅ~。ちょっと焦ったわ~」
「バレてないか?」
「食べるのに集中してて途中からは忘れてたみたいよ~」
「なるほど」
ヒサナと話しているのは青いロップイヤーのウェア・ラビット。
大福やどら焼きを作って、右往左往している。
「セイヤの和菓子は気に入ってくれたみたいよ~」
「それは良かった」
「まさか【青兎忍軍】が普段は茶屋してるなんて思ってないわよね~」
「いいじゃないか。これもロールさ。楽しまないと」
サブ職業【下忍】。これの特徴の一つは忍びルックスで無い時は、他のサブ職業に就くことが出来る。 『世を忍ぶ仮の姿』と言う奴である。
さらに忍でいるときは『忍用の名前』を設定できる。
セイヤ、ヒサナの時はクラン名も表示されない。
この茶屋《兎》はノリで始めたのだが、思ったより人気が出てしまったのだ。
「……もう少し稼いだら料理人増やそう」
「そうね~。忍が出来ないものね~」
「そのために始めたのに」
「でも和菓子屋も昔夢見てたんだしょ~?」
「……うん」
このままでは忍を引退しないといけなくなる。
でも、和菓子屋も好きだったため、ちょっとここも捨てがたいセイヤであった。
僕達はタマ師匠とジェジェン先生の所に顔を出していた。
「にゃあ?ツヴァートに行くのかにゃ?」
「はいにゃ」
「う~ん。俺も」
「だめですにゃ」
「にゃんでにゃ!」
「仕事が届いてますにゃ」
「……………」
タマ師匠は拗ねたように顔を顰める。
それを見て苦笑するジェジェン先生。
仕事って何だろう。
「仕事?」
「ニャニャキ達にはまだ出来にゃい仕事ですにゃ」
そう言われては何も出来ない。
タマ師匠はそれにブスッとしながら、腕を組む。
「だったら、ニャニャキ!ニャティ!今から模擬戦だにゃ!」
「「にゃ!?」」
「俺が外でもやっていけるか最終試験してやるにゃ!!」
ということで、相対するタマ師匠と僕達。
「お前らはいつも大人しすぎるにゃ!いいかにゃ!戦いは勢いが支配するときもあるにゃ!」
「どうすればいいですかにゃ?」
「相手がにゃにをしてくるのかとビビらせるにゃ!だから、はっちゃけろにゃ!」
「「にゃ?」」
タマ師匠の言葉に首を傾げる僕達。
はっちゃけるってなんやねん?
「こういうことだにゃ!…にゃーーーーー!!」
「「にゃ!?」」
タマ師匠が急に吠えて、笑いながら突っ込んでくる。
怖いよ!?
そして、両腕をブンブン!と振り回し始める。
な!なにをしてくるの!?
「にゃーーー!パーーーンチ!!」
「にゃふぅ!?」
「ニャニャキーー!?」
ただのパンチだった。
構えていた僕は逆に固まってぶん殴られる。
「こういうことだにゃ!普通にゃら避けられるものでも虚を突けば当たるにゃ!お前らはよく考えているが、そのせいで読みやすいことが多いにゃ!」
な、なるほど。
奇天烈な振る舞いで相手を油断させろと。
確かにあれは怖かった。
「さぁ、やってみるにゃ!普段は真面目にゃお前らだからこそ、これは効果が出るにゃ!」
「や、やってみるにゃ!ニャティ!」
「わ、分かりましたにゃ!」
僕達は並ぶ。
「「(ฅ^Ф Α Ф^ฅ)にゃっふーーーー!!」」
思いっきり叫び、両手を挙げて走り出す僕達。
それを見て、タマ師匠はうんうんと頷く。
ジェジェン先生はそれを見て頭を抱えていた。
「別に間違いではにゃいですが……」
「にゃがはははは!こいつらにはこれくらいがちょうどいいにゃ!」
そう言って、タマ師匠も前に出る。
結果はもちろんボッコボコにされました!
でも、こういうのも有効かもね。
外に出たら試してみよう。
僕達はギルドを後にして、告白した城壁の上に行ってみることにした。
いい感じに夕暮れ時で、人もいなかった。
僕達は城壁の端に座って、夕日を眺める。
「あれから随分経った気がしますにゃ」
「それだけ楽しかったってことだにゃ」
「そうですにゃ」
僕達は肩をくっつけている。
ドキドキもする。
でもそれ以上に安心するようになった。
あぁ。もう、彼女がいることが当たり前なんだな。
そう気づいた。
「……ニュウにもおにゃじことしますにゃ?」
「……わかんにゃいにゃ。でも……ここには連れてくる気はにゃいにゃ。ここはニャティとの場所にゃ」
「はいにゃ」
ナティは嬉しそうに笑う。
不安だろうな。
……そろそろ、もう一歩踏み出そう。
ナティの手を握る。
そして、ナティの方を見る。
ナティもこっちを見る。
「ニャティが一番だって……証明しておくにゃ」
顔を近づける。
ナティは顔を真っ赤にして目を瞑る。
お互いの口に柔らかいものが触れる。
初めてのキスの味なんて覚えられなかったよ。
とりあえず。
「にゃっふーーーーーーーー!!!」
幸せと恥ずかしさに、叫ばずにはいられなかった僕だった。
ありがとうございました。
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