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#38 回収完了

よろしくお願いします。

 階段を降りると、そこは牢屋が所狭しと並んでいる部屋だった。

 目に見えるだけでも、50部屋近くある。

 これ、捜すのも面倒だな。

 牢屋には多くのプレイヤーがいた。


「あっ!!まさか助けが来てくれたのか!」

「マジでか!?おーい!ここだー!」

「は、早く来てぇー!!もう襲われたくないー!!」

「もぉう!そんなことぉ言わなぁいでちょうだぁいよぉ♪」


 牢獄でゲイが現れるという噂は本当だったのか……!

 開けたくないなぁ。


「これ……1つ1つ開けていくのか?」

「それはめんどいのう」

「機械仕掛けなんだから、一気に開けられるところありそうじゃない?」


 とりあえず、牢獄内を一周することにした。

 ちょっと待っててね。


「そんな!?せめて、ここだけでも!?」

「開けた所で、そいつも出てくるよ?」

「に~が~さ~な~い♪」

「いやあぁぁぁぁぁぁ!?」


 南無南無である。

 

 奥に行くと吹き抜けのようになっていて、下にも多くの牢屋が見える。


「本気で面倒だねぇ」


 ラドンナもうんざりしたような声を出す。

 カードキーも1枚しかないしな。

 ここを全部回るだけで、イベントが終わってしまう。

 

「こっち、案内板がある」

「……いいのかしらそれって。安全面的に」

「囚人からは見えない位置」

「なら……ありえなくはないか」


 案内板を見ると、1つ下の階に管制室があるようだ。

 とりあえず、そこに行くことにした。


 階段を下りて、歩いていると、


「ヘルプミーー!!アイムヒアナーーーウ!!」


 聞いた覚えのある叫び声が聞こえてくる。


「チルッチだ!」

「なんか切羽詰まってるねぇ」

「行ってみるにゃ」


 声は絶えず聞こえる。

 どうやら、同じ階のようだ。

 それにしても、一体何に怯えてるんだ?


「ノーーーーーーウ!」

「あそこだね」


 チルッチのいる牢屋に辿り着いた。

 そこにいたのは、部屋の隅に蹲っているチルッチと、


「グリフォン?」

「の、子供みたいですわね」


 チルッチに憑りつき、顏や首を舐め回っているのは茶色のグリフォンだ。

 といっても、大きさは僕よりも小さい。

 子供のようだ。

 なんでここにいるのかは分からないけど。


「大丈夫かい?」

「へ、ヘルプミー!!と、と、と、鳥は苦手なのーー!!」


 途中からキャラクターを保てていない。

 

 カードキーで牢屋を開ける。

 僕が中に入ると、


「キュウアアァァー!」

「ぶにゃ!?」


 ちびグリフォンが顔に飛び付いてきた。

 いや!?耳は噛まないで!!タヌキになりたくない!!

 なんとか、顏からはがす。


「きゅあー」


 ちびグリフォンは嬉しそうに鳴く。

 随分人懐っこいな。

 その間にラドンナ達はチルッチに声を掛ける。


「大丈夫かい?」

「ヒグッ……全身。ヒグッ。嘗め回された。ヒグッ。1日中~」

「もう大丈夫だよ~。よしよし~」


 完全に泣き崩れるチルッチをニナが撫でて慰める。


「何故こんなところにいたのでしょうか」

「ヒッグ……ここに入ってすぐに……ヒッグ……機械が連れてきた…ヒッグ」


 どうやら紛れ込んで捕まったそうだ。

 新入り同士は同じ檻ってことか。

 チルッチにとっては災難だったな。


 移動を始めようとすると、ちびグリフォンは僕の頭の上に乗った。

 離そうとしても離れない。

 気に入られたらしい。


「きゅあー♪」


 機嫌良さそうに鳴き、小さな羽がパタパタしている。


「まぁ、仕方ないねぇ。チルッチに行かない様にするんだよ」


 ラドンナがお母さんみたいに、こっちを見て言ってくる。

 待て。僕は飼いたいなんて言ってないぞ!


「かわいいですにゃ」


 お母さん!飼いたい!ちゃんとお世話します!!

 


 頭に乗せたまま移動を再開し、管制室に入る。

 中にはモニターのようなものが沢山あり、スイッチもいっぱいある。


「どれだ?」

「あっ。モニターにディノ達がいる」

「だらけてるわね」

「まぁまぁ。無事でよかったです」

「These!」


 チルッチが幾つかのスイッチを押す。

 牢屋の扉が開いていく。

 そこから多くのプレイヤーが出てくる。

 ディノ達も出てきて、体を伸ばしている。


 ナナキ達はディノ達の元に向かう。

 プレイヤー達は仲間に連絡を取りながら、上に上がっていく。

 

「お!おまえらだったのか!いやー、助かったぜ!」

「チルッチも無事だったみたいだね」


 ディノ達は笑いながら近づいてくる。

 それにニュウが蹴りを飛ばす。


「いてぇ!?」

「反省」

「う……すまん」

「ごめん」


 頭を下げるディノとツヴェルト。

 それに偉そうに頷くニュウ。

 ようやく全員が集まったな。


 僕達はディノ達に、今までの経過を話す。


「そんなイベント盛りだくさんだったのかよ!?チキショウ!!」


 ディノが悔しがる。

 後ろでさり気なく、ニュウは指を咥えてナティを羨ましそうに見ていた。

 リリリとシェーンは呆れたように僕を見ていた。

 ツヴェルトは魔神軍のことで顔を顰めていた。


「とりあえず、これから魔神軍を迎え撃つってことでいいんだよな」

「正確には神殿を防衛しようってことですわね」


 ディノの言葉を白蓮が修正する。


「まぁ、俺達は今回役立たずだったからな。そっちの方針に従うぜ」

「そうね。無理して、またここに来るなんて嫌だもの」


 ディノ達は文句ないようで、クランの方針が決定する。


 牢獄の外に出る。

 まだ攻めてきてはいないようだ。


「まだ来ないのか?今日は最終日だろう?」


 オグマは首を傾げる。

 確かに、予定では今日の夜で終わりだ。

 今から攻めてこないと、戦闘中に終了するぞ?


「嫌な予感がしますわねぇ」


 白蓮は顔を顰める。


 とりあえず僕達は神殿に戻る。

 神殿はあと1時間もすれば海に浮かぶだろう。

 昼ご飯を食べていると、青影さんが近づいてきた。


「無事に助けられたで御座るか」

「おう。久しぶりだな」

「で御座る」

「まだ侵攻はないのですか?」

「影も形もないで御座るな」


 青影さんの言葉に白蓮達は考え込む。


「きゅえー♪」


 ちびグリフォンは僕達からもらった肉をおいしそうにつまんでいる。


「にゃ前はどうしますにゃ?」

「そうだにゃあ」

「この子ってオス?メス?」


 持ち上げて確認するも、特に目立つものはない。

 メスのようだ。


「きゅあ!」

「ぶにゃ!?」


 顔を蹴られた。

 恥ずかしかったのか。

 ちびグリフォンはナティの胸に飛び込む。


「じゃ~、エリザヴェス!」

「ねぇよ」


 ニナが言う。

 無駄に発音良いな!

 ディノが切り捨てる。


「天翼丸はどうで御座るか?」

「メスだって言ってるでしょうが」


 青影さんが参加してくる。

 論外だったが。


「羽子」

「あんたも黙ってな。犬にワンコって名付けようとした馬鹿なんだから」


 オグマもダメなようだ。

 犬にワンコって……逆にシュールでありな気がしてきた。


「……フライクイーン」

「競馬かよ」


 ニュウもアウト。

 いや、確かに馬型だし速そうだけども。


「駄鳥!」

「嫌いなのは分かるけど。それにこの子は飛べるよ」


 チルッチが一番ひどい。

 

「はぁ。ナティ。あんたが決めてくれ」

「にゃ?…にゃ~。……リフォン」


 ナティがちびグリフォンと目を合わせながら言う。


「きゅあ♪」


 ちびグリフォンがナティの頬を舐める。

 気に入ったようだ。


「じゃ、この子は【リフォン】だね。ちゃんと世話すんだよ。もう一匹増えるんだからね。ナナキもだよ」

「「はいにゃ。お母さん」」


 僕だけに拳骨が降り落ちる。

 痛みに転がる僕。

 なんで僕だけ!?

 

 昼食を終え、準備を始める僕達。

 すると、島が揺れる。

 どうやら、海に着いたようだ。

 

 その瞬間、


グゥギィアアアァァァァァ!!!


 叫び声が響き渡り、空が紫色に染まっていく。


「来たね!」

「よっしゃあ!」


 全員が気合を入れる。

 すると、インフォメーションが流れる。


___________________________________________

《緊急!!》

 突如、島の周辺に大量の悪魔や魔獣が出現した!!


 島の周囲に結界が張られてしまい、干渉出来なくなってしまいました!!

 このままでは皆様を回収出来ず、元の世界に戻すことが出来ません!


 魔獣軍を撃退し、結界を解除せよ!

*討伐終了までイベントは期限を越えても継続します。

___________________________________________

 まさかの疑似デスゲーム!?

 

「そういうやり方かい!?」

「終わるまで帰れねぇってか!」

「どちらかが全滅するまでじゃの」


 空に魔獣と思われる姿が見え始める。

 

 進軍が始まった!! 


 

ありがとうございました。



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