#35 長靴を履いた猫
よろしくお願いします。
「お前は……絶対に許さん!!」
オグマが叫び、魔獣に突撃する。
魔獣に近づき、右拳を握る。
左脚を前に出して、思い切り踏みつける。
オグマの真後ろの地面が大量に盛り上がり、オグマの右腕に巻き付く。
魔獣の目の前に上半身を埋め尽くすほどの巨大な岩の拳が生まれ、目の前に迫る。
「自流!!【大岩崩重拳】!!」
魔獣は巨大な拳に吹き飛ばされる。
壁に叩きつけられるが、ほとんど傷はなく、ダメージもあまりないようだ。
その姿にオグマは歯を噛み締める。
「くそぉ!!」
悔しがるオグマの姿にラドンナが同情する。
その時。
『助けてにゃ~!』
「は?ナナキ?」
「「えぇ!?!?」」
ナナキの声が聞こえた。
周りを見渡すも姿が見えない。
ふとナナキが踏まれた場所を見る。
そこには、穴が開いているのが見えた。
ラドンナ達は慌てて穴に近寄る。
穴の中にはナナキが魔獣の抜け殻や瓦礫に埋まって、顔だけが出ている状態だった。
「ナナキ!!無事だったか!!」
「ニャニャキ!?」
その言葉にナティも穴に駆け寄る。
ナナキは踏まれる直前に【ピット・フォール】で真下に穴を作り、そこに逃げ込んでいたのだ。
「助けてにゃ~。手も動かせにゃいから【スイッチ】も使えにゃいのにゃ~」
穴はあまり大きくなく、白蓮達では届かない。
埋もれる~!
縄もないので、ナティが降りても意味がない。
「オグマ!」
「………すまん。今ので魔力が……」
「あんたってやつは……!!」
ラドンナは頭を抱えるも、さっきの状況では仕方がないと諦める。
「どいて」
すると蘭羅が声を掛けてきた。
ラドンナ達が退くと、蘭羅は穴に飛び込む。
え。なにするの?
蘭羅はナナキの首周りの瓦礫をザクザクと掘って除けていく。
「そうか!ドワーフ特性【発掘】か!」
ドワーフは鉱石などの採集が出来るように、地面や岩を簡単に掘る能力がある。
ピッケルが折れるほどの硬い岩盤でも、ドワーフならば「ちょっと硬い」で掘れるのだ。
戦闘メインの蘭羅には無縁かと思っていたが、意外なところで役に立った。
蘭羅は5分もかからずにナナキを発掘する。
「初発掘。ナナキを掘り当てた」
「ありがとにゃ~」
蘭羅はナナキを背負い、上に登る。
出た途端にナティがナナキを抱きしめる。
全員がホッと息を吐く。
オグマはナナキに声を掛ける。
「すまない。ナナキ。助かった。ありがとう」
「いいにゃ~。こっちも心配かけたにゃ。オグマの怒ってくれた声も聞こえたにゃ」
ナナキは笑顔で答える。
「助かったのは良いことだがよ!こっちも助けてくれや!」
魔獣を引きつけてくれていたフルレッドが叫ぶ。
「こいつ!硬くなったみてぇでよ!もらったスキルでもさっきみてぇには効かねぇ!」
その言葉に白蓮達も参戦する。
しかし、事実攻撃があまり効かず、魔法を放つも素早くなり避けられてしまう。
「くっ!早くて当たりません!転ばしてください!」
「こっちだって当たんねぇんだよ!」
ケーンが叫ぶもフルレッドが怒鳴り返す。
ラドンナにナナキは声を掛ける。
「ラドンニャ。矢を貸してにゃ」
「は?どうするんだい?」
「魔力を込めるにゃ。それをあいつの顔目掛けて飛ばしてにゃ」
その言葉にラドンナは理解する。
ラドンナはすぐに矢を渡す。
魔力を込めて、すぐにラドンナに返すナナキ。
「いくよ!」
「にゃ!」
「【レーザー・アロー】!」
ラドンナが矢を放つ。
それを手で防ごうとする魔獣。
「【スイッチ】!」
触れる直前で入れ替わるナナキ。
そのまま魔獣に触れる。
「【フリップ】!」
魔獣がひっくり返り、頭から落ちる。
「【フロート】!」
落ちるナナキは魔法でフワッと浮かぶ。
妖精魔法【フロート】は対象を浮かべる魔法。重さによってかかる魔力は増大するが、自分位の魔力ならそこまで消費しない。
ナナキは降りたら、ダッシュで離れる。
周りはその隙を逃さない。
「叩き込めぇ!!」
バサラの号令でスキルや魔法を叩き込む。
魔獣は叫び声を上げる。
すると、魔獣の体がまた光り始める。
「またか!?」
また脱皮するのかと全員が顔を顰める。
しかし、魔獣の姿が消えた。
「は?」
フルレッド達が固まる。
すると、
「ナティさん!後ろです!?」
全員がナティを見る。
ナティの後ろに足を持ち上げている魔獣の姿があった。
「転移だと!?」
「ナティーー!」
ニナが走り出す。
魔獣の足が降ろされる。
ナティは先ほどのオグマのように固まってしまっている。
「ニャーーティーーー!!」
僕は全速力で走っていた。
あともう少しだが、もう魔獣の足はナティの目の前だった。
ざけんな!!
もっと早く!ナティを!助けるんだ!!
僕は足に力を入れる。
すると、僕が履いているブーツが光り輝く。
僕のスピードが爆発的に上がり、気づけば目の前にナティがいた。
うぇ!?
僕は驚くもナティを抱きかかえて、そのまま駆け抜ける。
魔獣の足は叩きつけられるも、何も踏むことはなかった。
僕はナティを抱えたまま、止まり切れずに転がる。
なんとか止まって、僕達は起き上がる。
「ニャニャキ」
ナティは僕を見て、そしてブーツに目を向ける。
僕もブーツを見る。
ナティにもらった薄汚れたブーツ。
その姿は変わっていた。
汚れなど一切なく、踝には羽が付いている。
肉球のマークが付いており、その真上にはハットのマークもある。
……あぁ。ナティ。君は本当に凄いよ。
「これは…?」
「これがニャティが当てたものにゃ。ニャティ。君は僕より、ずっとすごいものを当ててたにゃ」
僕は鑑定した結果に、心を震わせる。
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名前:忠義猫の長靴(長靴猫シリーズ)
Rank:Legend
効果:敏捷A+、スキル【立体機動】付与
主のために鬼と戦い、王へと導いた伝説の猫が履いていたとされる長靴。
魔道具にまで昇華しており、履いたものが真に守りたい者が現れた時、この靴は真の力を現す。
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ナティを助けたい。
その思いに応えてくれた、ナティがくれた靴。
「やっぱりニャティは、いつも僕にかけがえのにゃいものをくれるにゃあ」
あぁ。叫びたい。
こんなにも素晴らしい人が!
自分の傍に居てくれる!
僕は立ち上がる。
魔力ポーションを飲んで、魔力を回復する。
そして、ナティを見る。
「行ってくるにゃ」
ナティはその僕の顔に顔に見惚れてしまう。
助けてくれたものも相まって、ナティも思いが止まらない。
ナティは僕に頷いて、微笑む。
「はい。行ってらっしゃいにゃ」
ナナキは魔獣に向かって走り出す。
そのスピードはもはや青影達すら追いつけない。
魔獣はナナキに拳を叩きつけるも、ナナキは容易く避ける。
そして、拳や腕を足場に体を登っていく。
「にゃにゃにゃにゃにゃにゃ!!」
振り払おうと腕を振るうが、ナナキは魔獣の体を飛び回りながら登っていく。
顔まで到達する。
ナナキは爪を研ぎらせて、スキルを叫ぶ。
「【爪技《連》】【クレセント・ネイル】!自流【月爪乱舞】!」
三日月の刃が舞い飛び、魔獣の顔を切り刻む。
魔獣は両目を潰され、叫ぶ。
「まだまだいくにゃ!【フリップ】!【スリップ】!」
魔獣は再び頭から叩きつけられる。
「今にゃ!こいつはもう見えにゃいし、立てにゃいにゃ!」
「おっしゃあ!!」
再び全員が攻撃を浴びせる。
魔獣は起き上がろうにも滑って起き上がれない。
魔獣の体が光り、姿が消える。
ガァアアァン!!
魔獣は目が見えないため、でたらめに飛んだ結果、上空に転移してしまい床に叩きつけられる。
「ざまぁ!!」
「ナナキ様とナティ様のお返しをさせていただきますわ!【氷輪凍華】!!」
再び、全員が攻撃を続ける。
全員の猛攻に、魔獣はついに力尽き動かなくなる。
魔獣の体が淡く光り、少しずつ消えていく。
そして、その姿を完全に消滅させる。
全員はしばらく周りを見渡して警戒するも、何も現れない。
勝利を確信する。
「よっしゃあああ!!勝ったぞおお!」
「にゃあああ!!」
フルレッドが叫びながら、傍に居たナナキを放り投げる。
他のメンバーもナナキに近づき、胴上げする。
いつの間にかナティも一緒に胴上げされている。
ナナキとナティは飛ばされながらも手を握って笑い合う。
ナナキ達を胴上げする仲間達の目には。
空に浮かぶ大きな月を背に、2匹の幸せそうな猫が映っていた。
ありがとうございました。
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