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#34 猫踏んじゃった

よろしくお願いします。

 エントランスに戻ると、やはり白蓮達はすでに集まっていた。


「あ。おかえり。ナナキ君」


 ファナが声をかけてくる。


「はいにゃ。そっちも鍵があったかにゃ?」

「あったぜ」


 それぞれのリーダーが鍵を出す。

 その鍵もそれぞれ形が違う。


「では、合わせてみましょうか」


 僕は白蓮に鍵を渡し、残りの鍵も受け取る白蓮。

 4つの鍵を合わせると、豪華な鍵が生まれた。

 おぉー。


「これならあの扉にも合うな」


 フルレッドさんの言葉に全員が頷く。

 全員が大扉の前に集まる。


「準備は良いですか?」


 マヤウェルさんの確認に全員が頷く。

 全員がボス戦を想定している。


 鍵を差し込み回す。

 問題なく回ると、ガシャン!と大きな音が響く。

 鍵が消えて、大扉がギギギギ!と独りでに開いていく。


 中は通路で、奥には階段が見える。

 僕達は中に入るが、特に敵は現れない。


「階段の上で待ち構えているってことか」


 オグマの言葉にバサラさんとフルレッドさんが楽しそうにしている。

 こういう姿を見ると、バサラさんは意外と子供っぽく見えて、怖くなくなってきた僕だった。


 階段を上がりきったところは、天井が無く星空と月に照らされている大広間のようなところだった。

 広間の奥には玉座のようなものが見える。

 ここはどうやら謁見の間のようだ。

 玉座の後ろには大きな銅像がある。

 周りを見渡すも、特に敵の姿は見えない。


「と、いうことは」


 白蓮が呟く。 

 それと同時に、銅像が動き出した。


「やっぱり、そうなるよねぇ」

「でかいにゃ」


 銅像だった体は生々しく紫色の肉体になり、閉じていた口からは牙が見え、涎が流れる。

 下半身は四足で、上半身には巨大な爪を持つ腕。

 まさに異形だった。

 その魔獣が広間に入り込む。

 それだけで広間の1/3が埋まる。


「よっしゃあ!行くぜぇ!」


 フルレッドさんが武器を構えて笑う。

 僕達も展開して、武器を構える。


「とりあえず魔法を叩き込みましょう!」


 マヤウェルさんが指示を出す。


「『燃やせ』【ファイヤー・レーザー】!」

「『ピピピポ』【ゲイル・ブラスト】」

「『光よ。裁け』【ホーリー・ジャッジメント】!」

「我が敵を吹き飛ばせ!【シルフ】!」


 魔法が叩き込まれる。

 魔獣はわずかに上半身を仰け反らせるも、特にダメージを負っているように見えない。

 


「これは……厳しそうですね」


 マヤウェルさんは結果に顔を顰める。

 紅玻璃さんは指で顎を押さえながら考えている。


「あそこまででかいとうちも出来ることが限られるなぁ」


 他の者達も顔を顰めている。

 

 バサラさんとフルレッドさんが前に出て、前足に迫る。


「自流【͡虎牙連斬】」

「【スイング・インパクト】!」


 2人の攻撃が叩き込まれるも前足がやや後ろに下がっただけだった。

 皮膚も少し血が出た程度で、ほぼ無傷だった。


「ちっ」

「かてぇな!」


 ボヤキながら後ろに下がる2人。


「なら、次は顔だねぇ!」


 ラドンナが弓を構える。


「【レーザー・アロー】!」


 矢が光線となって魔獣の顔に向かう。

 魔獣は顔を動かすも、頬に突き刺さり顔を仰け反らせる。

 その光景を全員が見逃さなかった。


「顔が弱点ですか」

「せやけど、矢か魔法しかないなぁ」

「あれを転ばせるのは面倒で御座るな」


 青影さんの言葉に全員が同意する。

 その時、魔獣が動く。


ギャアアアァァァ!!


 巨体が両腕を振り回しながら突撃してくる。

 慌てて全員が避ける。

 魔獣はチルッチを見据える。

 ラドンナが矢を放つも腕で振り払われ、オグマ達が足を攻撃するも魔獣の足は止まらなかった。


「【リフレクト・ウォール】!」


 ナティが壁を作るも踏みつぶされ壊れる。

 チルッチは全力で走るも、魔獣の一歩が大きすぎて全く離せない。

 なんで執拗に狙ってるんだ?


「『縛れや縛れ。暴れど暴れど切れはしない。お前の自由は鎖の自由』【天鎖縛動(てんさばくどう)】」


 紅玻璃さんが札を数枚投げつけると、魔獣の周りに展開し、そこから鎖が生まれる。

 鎖は魔獣に巻き付き、動きを封じる。

 おぉ~!かっこいい!


 魔獣は暴れ回る。

 紅玻璃さんは右手人差し指と中指を立てて、その間に札を挟んでいる。

 札は輝いており、魔力を通しているのが分かる。


「くぅ!これは……あんまなごぅはもたへんわ…!」 


 その間にチルッチは離れる。

 魔獣の顔に矢や魔法が飛ぶ。

 何発か当たると魔獣が痛みに暴れている。


「行けるか!?」


 魔獣が口を開く。

 次の瞬間、口から光線が放たれる。

 飛んできていた魔法を吹き飛ばす。


「マジかよ!」

「まぁ、考えられるわよね!」


 フルレッドさんとルナイラさんが叫ぶ。

 鎖が千切れ、魔獣が自由になる。


「離れろ!」


 足元にいた白蓮やフルレッドさん達がいた所に、腕が叩きつけられ地面が砕ける。

 魔獣はその瓦礫を掴み、ターゲットから外れたと思っていたチルッチに投げつける。

 

 チルッチは完全に不意を突かれ、固まってしまう。

 巨大な瓦礫が隕石のように飛んでくる。

 チルッチは覚悟を決め、僕達に向かって親指を立てる。


「アイルビー!バグゥゥゥ!?」


 セリフを叫びながら、瓦礫に潰され死に戻る。

 何してん。


「『私はバグになるだろう』?」

「いや。ターミ〇ーターのセリフが言いたかったんだろうねぇ」

「言い切る前に潰されるとああいうことになるんだな」


 残念ながら決め台詞を言いきれず、死に戻ったのに微妙な空気が流れる。

 その間も魔獣は暴れている。


「そろそろ魔力がきついですね」

「チルッチがやられたのが効いてきてるねぇ」

「しかし、わたくし達の魔法も期待できませんわよ?」

「儂らの魔法はあくまで種族特性だからのぅ」


 後衛組の魔力切れが近くなり、ラドンナの矢も少なくなってきた。

 このままでは手詰まりになる。

 僕達は焦り始める。


 フルレッドさん達は集中的に前足を狙い続ける。

 僕も参加するが火力不足だった。

 かといって、妖精魔法もトリックも相手が大きすぎて効果がないし、使いづらい。


「にゃあ!【フォース・セイバー】!」


 僕は剣を振るい続ける。

 

バキン!


「にゃ!?」


 しかし、魔獣の皮膚が硬すぎて武器の耐久値が無くなり、折れてしまった。


「にゃあもう!【クレセント・ネイル】!」


 やけくそ気味にスキルを使う。

 すると、三日月の爪が魔獣の肉を深く切り裂いた。

 傷からは大量の血が流れだす。


「にゃ?」

「なるほどな!こいつは【月】が弱点か!」


 それを見ていたフルレッドさんが女神が加護をくれた理由を理解する。


「加護でもらったスキルを使え!」

「おう!」

「そういうことか!」


 全員が息を吹き返す。


「おらぁ!【月輪衝】!」

「【銀鉤爪刃】」

「【半月刃衝】!」


 フルレッドさん、バサラさん、オグマが続けてスキルを叩き込む。

 魔獣の前足から大量の血が噴き出す。

 魔獣が痛みに叫んで膝を着く。

 マヤウェルさんとアガタが、魔獣の膝を使って飛び上がる。


「行きます!【ルナティック・ハウリング】!」

「受けるがよい!【月光炎】!」


 マヤウェルさんの口から咆哮の光線が放たれ、アガタの両手からは青白い炎が噴き出す。

 光線は魔獣の胴体に直撃し、その直後に上半身を炎が包む。

 

 魔獣がのたうち回るも、しばらくすると動きが収まる。

 炎が収まると、上半身を黒焦げにし、口からも煙を吐き出す魔獣がいた。

 すると魔獣の体がひび割れ、光が溢れ出す。

 終わったと、消滅のエフェクトだと思った全員は、ホッと息を吐く。

 

 体が崩れ始めた魔獣が突如、前足を持ち上げる。

 オグマを踏みつぶそうと迫る。

 オグマは油断していたため、固まってしまった。



「【爪技《衝》】!」

「な!?」


 突如、オグマの体が吹き飛び、足の範囲外に出る。

 周りが見たのは腕を振り抜いているナナキの姿だった。


 全員が動こうとしたが、魔獣の足は、ナナキの真上から叩きつけられる。

 その衝撃で地面にヒビが入った。


「ナナキ!?」

「ナナキ様!?」


 周りが叫ぶ。

 ナティも見てしまった光景に固まる。


「ニャ……ニャニャキィーーー!!」


 ナティの叫び声が広間に木霊する。


 魔獣の肉体が崩れていく。

 その下からは、一回り小さくなるもオグマの2倍以上は大きい、2足で立つ異形の巨人が現れる。


「……第2ラウンドってか」


「………許さんぞ」


 フルレッドが苦々しく言う。

 その後ろから怒りに染まった言葉が聞こえる。

 フルレッドが後ろを向く。

 そこには、



 顔を憤怒に染め、景色が歪むほどの怒気を噴き出しているオグマがいた。



ありがとうございました。


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