#28 私のダンスで応援を
よろしくお願いします。
スタート地点で一夜を過ごし、僕達は山を目指して移動を始める。
途中で果物や肉を回収しながら進む。
「にゃあ~。やっぱりこの体だと回りが大きすぎるにゃ」
「ですにゃあ」
僕とナティは体が小さい故に、草木が意外と障害物となっているのだ。
ニナですら、易々またげる木でも2人にはよじ登る必要がある。
草に関してもニナ達には膝上位の高さでも、2人には胸元までの高さがある。
ジャングルなんて大っ嫌い!
僕は都会っ子の猫です!
「あぁ~。そうだねぇ。でも、でかくても困るみたいだよ?」
ラドンナはオグマを示す。
「む……むむ……むぅ」
オグマは頭に木々の枝が引っかかり、ラドンナでも普通に歩き抜けれる木々の隙間を、体を横にしないと抜けられなかったりと制限があるようだ。
あぁ。デカいと逆に避けられないのか。
木を折りながら行くわけにもいかないもんね。
「何事も程々が一番と」
「そういうことだね」
ニナとラドンナが言う。
うるさいやい。
「そういえば、オグマ」
「なんだ?」
僕はオグマに尋ねる。
「ウェア・キャットの知り合いはどうしたにゃ?」
「あぁ……。あいつは他の街にいるようだ。だから、当分は会えんな」
まだ他の街への道順は判明していない。
「そうにゃのかにゃ。残念だにゃ」
「ま、あいつはどこでも楽しめる奴だから、大丈夫だろう」
森を抜けて、草原に出る。
草原を歩いていると、
「ぬお!?」
オグマの右足が地面を踏み抜いた。
「沼かい!?」
ラドンナが警戒すると、
「嫌。下には硬いものがあった」
オグマは、踏み抜いた穴に手を入れる。
その下は硬い岩のようなものがあり、空洞も感じられる。
「隠し通路か?ふん!」
オグマは蓋になっている地面を持ち上げる。
するとその下からは階段が現れた。
おぉ!冒険者っぽい!
「これは流石に隠しダンジョンだよね?」
ニナが全員に確認する。
「入ってみるかい?」
ラドンナの言葉に頷き、階段を下りる。
中は石で出来た迷宮で、明かりもある。
まさにダンジョンの様相をしている。
オグマの身長でもギリギリ入ることが出来た。
「しかし、あまり派手には動けんな」
「まぁ、しかたないさね」
オグマも結構制限あるなぁ。
僕達はゆっくりと進む。
ラドンナが先頭を進み、オグマが最後尾だ。
歩いていると、
「ストップデス!トラップがセットされてるデス!」
チルッチが前を見て言う。
「分かるのかい?」
「ミーのサブは発明家。サイボーグと相まって、周囲の物を自動で解析し、発見するデス!そのおかげかトラップも見つけられたデス!」
「それすごくない?」
ニナの言葉に全員が同意する。
シーフなど斥候系がいなくても罠を見つけられるのはかなり優位だ。
僕の危険感知は罠が起動しないと反応薄いんだよなぁ。
「でも、解除できるかはアイドントノウ!デス!」
「解除できるのかい?」
「発明家デスから!」
「なるほど」
チルッチが解除を試みる。
「お」
「出来たの『ガキン!』かい!?」
ラドンナが声を掛けようとすると、壁から槍が突出しラドンナの前を横切る。
ラドンナはなんとか仰け反って回避した。
こわ!?
「ソーリー。エラーしたデス!」
「だろうね!」
チルッチにラドンナが突っ込む。
結果チルッチには罠解除のスキルはなかった。
5回も失敗したのだから、期待は出来ない。
いや、まぁ、それが普通か。
オグマとラドンナの漢解除で進んでいく。
毒ガスなどはオグマの【地変】で穴をふさぐ。
なんかずるいな。
一行は少しずつ先に進むも。
「魔獣もなにも出ないね」
「これだけトラップが多いとねぇ。この先に待ち構えているかもね」
僕達は油断せずに進む。
すると、僕達の進む先に広場のような部屋があり、その先に大きな扉が見える。
僕達が広場に足を踏み入れたと同時に、扉の横に設置されていた壁像が動き出す。
「定番だねぇ!」
現れたのは2体のゴーレムだ。
片方は大槌を構え、もう片方は盾と剣を持っている。
僕は鑑定を行い、レベルを確認する。
「ゴーレム・ファイター!ハンマーがLv19。盾持ちがLv17にゃ!」
「同時に相手は厳しいね!ハンマーからやるよ!ナナキ・ナティ・チルッチは、時々魔法で盾持ちをけん制!」
ラドンナが指示を出し、飛び出す。
オグマとニナも走る。
僕とナティは盾持ちを監視する。
チルッチは少しだけ前に出て、両方に魔法を撃てるようにする。
ラドンナは弓を構えて、ゴーレムの顔を狙う。
「【インパクト・シュート】!」
ラドンナが放った矢はゴーレムの顔目掛けて飛び、顔に当たった瞬間、衝撃音を響かせる。
衝撃で、ゴーレムの上半身が後ろに仰け反るも、倒れるまではいかなかった。
しかし、その間にニナとオグマが足元まで近づく。
「【フォース・セイバー】!」
「【破鋼拳】!」
2人の攻撃がゴーレムの右足に叩き込まれる。
右足はややひび割れ、少し後ろに下がっただけだった。
「やはり硬い」
「私の剣じゃ厳しいかも!」
「ならあたしもダメだねぇ」
オグマ達がゴーレムの硬さに嘆く。
「ではミーが!『ピピッポ』【ファイヤー・レーザー】!」
チルッチの右腕の機械から赤い光線が放たれる。
光線は右足に当たり、ヒビが大きくなり少しだけ抉れる。
「よし。あたしらは体にヒビを入れるよ!チルッチ!あんたはヒビを狙いな!」
「イエス!」
オグマ達は左足にもヒビを入れようと攻撃を加え、チルッチが魔法でヒビを狙って体を砕いていく。
すると、もう一体のゴーレムがいた所から音と衝撃が飛んでくる。
「な、なんだい!?」
オグマ達が目にしたのは、逆さまになって地面に叩きつけられるゴーレムだった。
ラドンナ達がもう一体の足を攻撃している間に、僕は盾持ちのゴーレムを相手に翻弄していた。
出来る事をやってみよう!
「にゃー!」
僕はゴーレムの足元を走り回り、翻弄する。
ゴーレムが足や剣で僕を狙うも、僕の方が早い。
どうだ!デカブツ!
しかし、僕にはゴーレムを砕くほどの攻撃手段はない。
だから徹底的に邪魔する気でいた。
ゴーレムが再び僕を踏もうと左足を上げる。
僕はその瞬間に、
「【スイッチ】!」
先ほど魔力を込め、右足近くに置いていた小石と入れ替わる。
そして右足に触れる。
「【フリップ】」
ゴーレムは魔法により頭が下になり、地面に轟音を響かして地面に頭から落ちる。
僕は急いで離れ、ナティの元に行く。
おぉ!行けるね意外と!
「大丈夫ですかにゃ!?」
「大丈夫にゃ。ただ魔力がゴッソリ持っていかれたにゃ」
ナティが心配して声を掛けてくる。
僕は問題ないと返事をするも、今の魔法で魔力を多く消費したことを感じた。
どうやら【フリップ】は大きさで消費魔力が変わるようだ。
「さて、今のは出来て後一回にゃ。どうしようかにゃ」
「私もお手伝いしますにゃ!」
僕が考えていると、ナティが声を掛けてくる。
しかし、ナティは回復役だ。
強い攻撃魔法もないし、どうするのだろうか。
ゴーレムが起き上がる。
「行きますにゃ!【シールド・フェアリーズ】!」
ナティが魔法を唱えると、ゴーレムの周りに小さい盾が無数に現れる。
ゴーレムが剣で盾を攻撃すると、盾は砕けたがリフレクトされているのか、剣を持つ腕が大きく弾かれる。
すると、他の盾に当たりさらに弾かれ、また他の盾に当たり弾かれる。
盾に弾かれ続け、ゴーレムは身動きが取れなくなる。
「おぉ~。すごいにゃ!」
僕は素直に驚く。
ナティはそれを聞いて、胸を張る。
うん。かわゆい!
ラドンナ達はそれを見て、苦笑する。
「ほんとに面白いことが出来るねぇ」
「今のうちにこっちを終わらせよう」
「一個聞きたいんだけどさ」
ニナがオグマに話しかける。
「なんだ?」
「あんたの【地変】ってスキルはゴーレムに聞かないの?あれって壁像だったじゃん?」
「……試してみる」
「忘れてたのね」
オグマは少し哀愁を漂わせる背中を見せて突撃する。
「【地変《爆砕》】!」
ゴーレムの右足にスキルを使い、拳を叩き込む。
すると、右足は爆発して砕け散った。
「……行けるようだ」
「ほら。とっとと行きなさいな」
ニナが容赦なくオグマを追い立てる。
ちょっとは優しくしてあげて!?
オグマのスキルによって、簡単にゴーレム2体は砕けた。
その後は特に何も現れず、僕達は扉を開ける。
扉の中は宝物庫のようだが、宝箱が2つあるだけだった。
罠はなかったので開けて見る。
片方には赤色のグリーブ。もう片方には青いロザリオが入っていた。
「にゃあ。結構すごいかもにゃ」
僕は鑑定して結果を伝える。
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名前:ルージュムーンのグリーブ
Rank:C+
効果:防御D+、敏捷D+、スキル【クリムゾン・キック】付与
朱い月の光を浴び続けた足甲
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名前:アズールムーンのロザリオ
Rank:C+
効果:魔力D+、知力D+、スキル【サファイア・ガーデン】付与
青い月の光を浴び続けたロザリオ
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「朱い月に青い月か。これは何か意味してるんだろうねぇ。」
「で?どうする?これ。」
「ロザリオはナティだろう」
「グリーブはオグマさんかニニャですにゃ」
「俺は蹴りは他にもスキルがあるからな。ニナでいいだろう」
「マジ?ありがとう!」
配分はさらっと決まった。
僕達がダンジョンを出ると、外は夕暮れだった。
早くも2日消費したなぁ。
周りを探してセーフティポイントを見つけたので、そこでキャンプを始める。
食事を食べていると、ナティのスキルについての話になった。
「さっきの盾の魔法は上手く使ったな」
「そうだねぇ。あれはかなり助かるよ」
「思いつきでやったですにゃ。上手くいきましたにゃ」
「そういえばなんか気になるスキルがあるって言ってなかった?」
「気になるスキル?」
「【ニャニャニャ】ってスキルですにゃ。効果は周りのプレイヤ―へのステータスアップみたいにゃんですが、どう使うのかよく分からにゃいですにゃ」
「あ。僕にもありますにゃ」
ナティが言うスキルは僕にもあった。
名前や効果だけでは何が起きるのかよく分からなかったので、試していない。
怖いよね。
「なら、ここで試してみればいいだろう?」
「そうだね」
「にゃら2人でやってみるにゃ」
そう言って僕とナティは、火から少し離れて広いところに立つ。
「「【ニャニャニャ】」」
スキルを発動する。
すると、
「「にゃっにゃっにゃっ♪にゃ~にゃにゃっにゃ♪にゃっにゃっにゃ♪」」
僕とナティが笑顔で踊り出した。
応援団で使われるようなBGMを口ずさみながら。
『ぶふぅ!』
見ていた全員が噴き出して笑いを耐える。
チルッチだけは爆笑していた。
「「にゃっにゃっ♪頑張れ♪にゃっにゃっ♪頑張れ♪にゃ~にゃにゃっにゃ♪頑張れにゃ~♪」」
僕達は笑顔でシンクロしながら踊って応援している。
ナティを見ると顔が時々ピクピクしている。
誰が動かしてるの!?
止めて!
1分ほど踊る。
「「にゃあん♪」」
最後は2人でハイタッチして終わる。
その瞬間僕達は崩れ去り、羞恥に悶える。
「ぷっ、ぷふふ。ず、随分と可愛らしい…ぷはは……スキルじゃないか」
ラドンナが笑いを耐えながら話す。
ナティは蹲ったまま固まっている。
僕は少しだけラドンナ達に目を向けて話す。
「勝手に体が動いたにゃ。にゃにも出来にゃかったにゃ。拷問だったにゃ」
ナティが声を出さずにコクコクと頷いている。
ナティ!しっかり!
傷は……そこそこ深いね!
「で、でも効果はな、凄いわよ。くっ、ひひひ」
ニナも笑いを耐えながら言う。
その効果は、
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ステータスアップ(04:37)
生命力:+D、魔力:+D、筋力:+E、防御力:+E、精神力:+D、知力:+E、敏捷力:+D
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「5分間のステータスアップかい?戦闘に関わるのも全てを上げるってヤバイねぇ」
「あぁ。これはバレたらヤバいぞ。ターゲットにしかならんな」
「バット!バトル中にこれをするのは厳しいとシンキングするデス!」
笑いから復活したラドンナ達が分析する。
とりあえず、このスキルはしばらく封印する方針になった。
その夜、ナティはその場から全く動かず、僕が下に毛布を敷き、その上にナティを寝かせの横に寝る。
翌朝、起きるとナティが僕に抱き着いており、再び蹲って動かなくなり僕やニナが必死に慰める騒動があったのは、ここだけの話となった。
ありがとうございました。




