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#29 絶景かな絶景かな

よろしくお願いします。

 サバイバルを始めて3日目。


 僕達はようやく山の麓にたどり着いた。

 他の皆はどうやって過ごしてるんだ?


「しかし……誰にも会わないねぇ?」

「本当よね。参加者が少ないなんてないだろうし」


 ここまで他のプレイヤーの影すら見ていない僕達。

 そのことに疑問を感じていた。


「魔獣を見ている限り、死に戻りも多くなる感じじゃないしねぇ」

「どこかに大規模なダンジョンでも見つかったのだろうな」


 僕達も昨日たまたま見つけたダンジョン。

 あれが島中にあれば、大規模なものが見つかってもおかしくはない。

 でも、これじゃあ順位を決めようがない気がする。


「ま、とりあえず登るかね。上にはいるかもしれないし。魔獣も強くなるのも定番だよ。注意しな」


 ラドンナの言葉に全員が頷き、山を登り始める。


 ちなみにこの間、ナティはずっと僕の服の裾を握って、下を向いたまま黙っていた。

 昨日のダンスと、朝の僕への抱き着きを見られたダメージが未だに癒えていないのだ。

 起きたときはラドンナやニナはニマニマとからかったが、移動を始めてもこのままだったので流石にからかえなくなったのだ。

 もちろん僕はこの状態に心の中ではナティの可愛さに悶えていた。

 かわゆいよね!

 このちょこんと握ってるのが特に!


 実はナティはすでに落ち着いていた。

 しかし、ナナキの尻尾が無意識なのかナティの体をスリスリとこすってくるのが嬉しくてたまらないため、そのままの状態でいたのだ。

 大好きな人が無意識に自分に好意を示してくれる。

 それがたまらなく幸せだったのだ。

  


 山を登り始めて1時間ほど、さっそく魔獣が襲ってきていた。


「ええい!空を飛び回って鬱陶しい!」

「『ピピピポ』【サンダー・バーン】」


 放射状に雷が放たれる。

 鳥型の魔獣が数匹焼かれて落ちる。

 魔法すげー。

 しかし、その隙間をすぐに新しく魔獣が埋める。

 アーミー・ホークの群れである。

 一羽ずつは弱いが、群れで襲ってくる魔獣だ。

 多いな!?

 むぅ。僕のスキルじゃ届かない。


 ラドンナ達は飛行型の魔獣への手数の少なさが露呈し、中々撃破できなかった。


「【シールド・フェアリーズ】!」


 ナティが盾魔法を使い、少しでも近づいてくる数を減らす。

 前衛組は遠距離攻撃スキルで一羽ずつ減らしていく。

 

 戦い始めて40分近く経過したところで、魔獣達は不利と理解して逃げ出していく。

 僕達はその場で座り込む。

 疲れた~。


「さすがに……きついねぇこれは」

「上に休めるところってあるかしら」

「ないことはないだろうがな」

「いまさら降りるのも無理にゃ。」


 僕達は疲れた体に鞭を打って山を登る。

 しばらくすると、洞窟が現れる。


「行かなきゃだめだよね」

「あの鳥を相手するよりはいいにゃ。ニニャ」

「それもそうか」


 ニナが嫌そうに言うも、ナティの言葉に納得して洞窟に入っていく。

 しかし、すぐにそれを後悔した。


「蝙蝠に虫とかふざけんなーー!」

「叫んでないで、さっさと終わらせるよ!」

「にぃにゃーーーーーーー!!」

「ニャティ!落ち着くにゃ!」


 洞窟の中ではホール・バットやケイブ・スパイダーなどの魔獣がわんさかいた。

 ナティは虫が苦手なようでパニックになっている。

 まぁ、僕も気持ち悪くて怖いけどね!?

 僕の顔見て!はい!深呼吸!

 すーはーすーおぉう!?虫が落ちてきた!?


「にぃにゃーーーー!!」


 あぁ!?また振り出しに!

 しかも、洞窟内では崩落の危険性があるため、オグマは全力で戦えない。


「全く!巨人族って!あてに!出来ない!こと!ばっかりだねぇ!」

「すまん」


 ラドンナが剣を振って、前に出る。

 オグマもチマチマと殴り倒している。

 頑張ろう!


「『ピピッピポー』【ゲイル・ブラスター】」


 チルッチが風魔法で吹き飛ばす。

 僕はナティが背中にくっついているため、爪で攻撃している。

 嬉しいけどやりにくいよ。

 なんとか撃退に成功する僕達一行。


「先行き不安だねぇ」

「バット、バックも出来ないデス」

「だよねぇ」


 僕達はボヤキながら進む。

 ナティは僕の背中にぴったりと張り付いている。

 顔も埋めており、周りを全く見ない。

 よっぽど虫が嫌いなのか。

 けどなんか、妙に背中に感じる吐息が荒いような?

 僕はそう感じていたが、嬉しいことには変わりないので気にしないことにした。


(ふにゅ~。ナナキのいい匂いがします~。尻尾も絡まってきて、こそばゆいけどそれも心地いいです~。もうちょっとこのままで~。ふにゅ~)



 洞窟を抜けると、そこは壁に囲まれた広場のようになっていた。

 上には木々が生い茂り、空を隠している。

 そこには、プレイヤー達が何人かいた。


「どうやらここはセーフティエリアみたいだねぇ。やっと休めるよ」

「疲れた~」


 ラドンナ達がホッとする。

 すると、ラドンナ達に人影が近づいてきた。


「おやまぁ。可愛らしい子らがいはりますなぁ」

「ニャニャキですにゃ。あにゃたは?」

「【虎玄楼】の紅玻璃いいます。お前様がナナキはんですか。噂通りかわええなぁ」


 紅玻璃さんは僕を見てコロコロと笑う。

 そっちは綺麗ですね。

 もちろん心の中で言う。

 その名乗りにラドンナが反応する。


「ここにいるのは【虎玄楼】なのかい?」

「それだけやありまへんえ。他にも有象無象がおりますわ。うちらもバラバラにされてもうて困ってますのや」


 紅玻璃さんは肩を竦める。

 ラドンナはその言葉に頷く。


 紅玻璃さんは簡単に挨拶し、コール登録をして別れる。

 僕達は空いてるところを探し、キャンプの準備をする。

 テントを設置し、火を起こす。

 とりあえず最低限に準備を終えると、全員がだらける。


「あぁ~。やっとくつろげる」

「まったくだねぇ」

「しかし、もう半分が終わったぞ。どうするんだ?」

「確かににゃ。まったく情報がにゃいにゃ」

「あるじゃないか。周りに」


 ラドンナが周りのプレイヤ―を示す。


「でも、こっちが出せる情報にゃんてにゃいにゃ」

「月が怪しいってくらいだものね」

「ほぅ。そっちも月に関しての情報がありますのん?」

「ん?」


 そこに紅玻璃さんがいた。

 腕の中にはなぜか白い子狐がいる。

 おぉ。可愛い!


「そっちもってことは」

「麓の小さいダンジョンの宝箱にあったんよ。『白い月』ってやつやね」

「白い?こっちは『朱い月』と『青い月』だったにゃ」

「やっぱりなぁ」


 紅玻璃さんは僕の言葉に頷く。

 月かぁ。

 ニナが質問する。


「やっぱりっていうことは?」

「向こうのパーティーは『緑の月』やったそうや」

「それはどう考えるべきかねぇ。普通に月って考えるのはダメそうだねぇ」 


 ラドンナはその答えに悩む。

 紅玻璃さんも苦笑する。

 どうやら同意見らしい。


「けど、まだ誰もこの上には行っておまへん。せやから行かんと分からへんってのも確かや」

「誰も?」

「今のところ、全員死に戻ってはるみたいやわ。誰も下りてけぇへん」


 その言葉に全員が顔を顰める。

 上にそれだけの強さのボスがいることになる。

 今までの感じだと厄介そうだよね。


「……その人達はいつ登りましたかにゃ?」

「ん?」


 ナティが質問する。


「どういうことだい?」

「普通に月ではにゃいかもしれませんが、夜に登った人はいにゃいかにゃと」

「それは……誰も行ってへんかもねぇ」


 紅玻璃さんは考えながら述べる。

 腕の中の子狐も首を傾げる。


「ところでその子狐ちゃんはなに?」

「下で拾たんよ。なんやご飯あげたら懐かれてしもてなぁ。同じ狐同士惹かれるものがあったんやろなぁ。ちなみにうちの旦さんには狼さんや」


 その答えに全員が子馬を思い出す。

 どうやらあれは友好MOBだったらしい。

 そうか。あれもこのイベントの醍醐味だったか。


「そうやなぁ。夜に登るか。試してもええかもなぁ。行くんやったらお先にどうぞ。発起人やしな」


 そう言って紅玻璃さんは去っていく。


「どうするんだい?」

「見に行くだけ見に行くにゃ」


 とりあえず登ることに決めた。


 夜になって、僕達は山を登る。

 魔獣は遠目には見えるが、こちらを見つけられていない。


「ふむ。鳥目か」


 夜は見えないようだ。

 それは凄い助かる。

 山の山頂近くまで登る。


「山頂になんかあるってことだよねー」

「そうだな」


 ゆっくりと息をひそめて山頂に近づく。

 覗ける位置に行くと、見る限りでは何もいない。


「これはナティの考えが当たりかねぇ?」


 6人は周りに注意しながらゆっくり進む。

 

 山頂の広場の地面から薄っすらと光の柱が見える。


「月の光に反応してるってことか?」

「多分そうだにゃ」

「地面を掘らなきゃダメですにゃ」


 僕達が地面を掘ろうとすると。


ガァアアアアァ


 大きな山犬のような魔獣が2匹現れた。

 ここで来るんかい!?


「ケイブ・ウルフリーダー!Lv25!Lv26!」


 僕は鑑定結果を叫ぶ。

 僕達の後ろにいたオグマとニナが構える。

 ラドンナは弓を構える。

 僕達も動こうとすると、突然地面が揺れる。


「にゃあ!?」

「地震!?」


 ウルフ達は突如、僕達から逃げ始める。

 

「なんだい!?」


 僕達は慌てるも揺れが大きくなり、しゃがんだ場所から動けなくなる。

 え!?大丈夫だよね!?


ビキビキっ!


「「にゃ!?」」


 僕とナティの下の地面にヒビが入る。

 あかんやーん!?

 逃げようにも揺れがひどい。

 ヒビはさらに大きくなる。

 ちょっと待ってください!待ってってばよ!?

 どうやらヒビは光の柱の真下から広がっているらしい。

 すると、ついに地面が崩れる。


「「にゃああ!?」」

「ナナキ!ナティ!」


 いやーーー!?

 ラドンナがこっちに向かって叫ぶも、どうにもならなかった。

 今度は崩れた地面が盛り上がる。


「下から何か来るぞ!」

「どうしろっていうのよ!?」

「ノォォォォォォォォォォォォォォォウ!?ア゛ウチ゛!」


 ナナキ達に近いところにいたチルッチは、投げ飛ばされ山頂の入り口に落ちて地面に叩きつけられる。

 ラドンナ達も入り口側に追いやられる。

 地面から現れたものは。


グルルゥォォォォォォォ!!


 白銀の竜。

 月の光に当てられて輝いている体。

 金色に輝く眼は力強い。

 翼を広げ、空に浮かび上がる。


 ラドンナ達はそれをポカンと見上げる。


グルルゥォォォォォォォ!!


 竜が再度吼える。

 ラドンナ達は耳を塞ぐ。

 しかし、その雄叫びの中に。


『にゃあああああぁぁぁぁぁ!!』


 猫の声が聞こえた。


「ナナキ君!?ナティ!?」


 ニナは2人の姿を探す。

 しかし、近くに2人の姿が見えない。

 下に落ちたのかと思い、穴に近づこうとすると。

 竜の翼の羽搏きによる風に足を止める。

 ふと、竜を見ると。


『にゃあああああぁぁぁぁぁ!』


 竜の頭の上に僕とナティはいた。

 だずげでーーー!!


「そんなとこどうすればいいのよぉ!!」


 ニナが思わず叫ぶ。


 すると、竜が空へと舞い上がり、山から離れていく。


「この!!ラブバカ猫共があぁぁぁぁ!!!!!」


 やけくそ気味のニナの叫び声が、山の上から木霊する。

 そんなこと言われても!?


 山の頂上から竜を見送る光景は絶景だなぁ。


 ラドンナは現実を拒否するように、遠い目をして考えていた。





ありがとうございました。


今更ですが、『面白い』『頑張って書け』『努力賞』など思ってくださる方は下の評価をクリックしていただけたら嬉しいですm(_ _)m

これからもよろしくお願いします。


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