#16 私はあなたが
やっとここまで来ました。
よろしくお願いします。
7日目。ナナキは今日も元気です。
怪我したところも特に問題なし!
食堂に降りて朝ご飯を食べる。
ナティとニナも降りてきた。一緒にテーブルに座り、朝ご飯を食べる。
「今日は防具を見るんですかにゃ?」
ナティが質問してくる。
「その予定にゃ。ニャティのニャイフも取りに行かにゃいといけにゃいし。行けたら午後からクエストを探してみるにゃ」
僕の言葉にナティも頷く。
ニナは今日は僕達と同行するようだ。
襲われた直後だから心配しているようだ。
そこにラドンナが現れる。
「おはようさん」
「おはようですにゃ」
「おはようございますにゃ」
「おはよう」
ラドンナも同じテーブルに座り、朝食を頼む。
「今日はオグマが来られないから、あたしもそっちに同行するよ」
オグマはリアルで用事があるようだ。
僕達は予定を伝える。ラドンナは特に異論はないようだ。
「店は決めてるのかい?」
ラドンナが聞いてくる。
僕は頷く。
「カラニャさんに聞いたにゃ。スミス・ストリートに防具職人のプレイヤーがいるみたいにゃ。服飾職人も顔を出してくれるって言ってたにゃ」
それを聞いて3人が頷く。
話をしながら全員が食事を終える。
「じゃあ行こうか」
ヒョイッ
ラドンナは僕を掴み上げ、肩に乗せる。
「にゃ?」
僕はまたもや反応出来ずにストンと座る。
なんで僕の周りの人は掴むのが上手いんですかね!?
ナティはそれを見て、頬を膨らませる。
ニナはそれを見て苦笑し、ナティを抱き上げる。
うん。あったかそうだな。
「ニニャ!?」
「まぁまぁ、こうしたほうが歩くの速いし」
ラドンナはナティの様子をニヤニヤしながら見ている。
ちなみに、厨房でナラルスさんがその光景を見て、腹を抱えて笑いを耐えている。
止めてよ!
猫2匹の抗議は無視され、4人は宿を出る。
もちろん通りでは注目の的だ。
長身の女性が肩に猫を乗せて歩いている。
そんな光景が人目につかないわけがない。
僕はもはや無我の境地にいる。諦めたのだ。
そんなナナキの表情に何人かはアマゾネスにペットとして捕らわれているように見えた。
憐みの眼で見送る。
そんな状況の中、4人は店についた。
「ここだね?」
「はいにゃ」
4人は店に入る。
「来たか」
「待ってたよ。ナナキ君」
中には2人いた。
カウンターの中にドワーフ。店側に中性的な見た目をしているヒューマン。
宝塚俳優でいそうだな。
「カラニャさんから紹介されましたにゃ。ニャニャキですにゃ」
「……俺はドガンガ。【下級鍛冶職人】だ。防具を主に作ってる」
ドガンガさんは青髪のドワーフだ。髭は生えていない。目つきは鋭い。
「私はレベレッド。【下級裁縫職人】だよ。よろしくね。子猫ちゃん達」
レベレッドさんは紫色の髪をショートにしており、髪色に合わせたフロックコートに黒のズボン。そして首元に白のクロヴァットを身に着けて貴族を思わせる装いだ。
そして声は女性にしてはやや低めで宝塚を思わせる。
意識しているのだろう。言動もそれっぽい。
女性に人気そうだな。
ナティ達も自己紹介し、フレンド交換をする。
ドガンガさん達は僕に注目し、防具や衣装を考えている。
「……あんまり重いのはダメだな。…胴に革鎧。脛当てくらいだな。それ以上になると動きが阻害されるかもしれん」
「そうだね。袖が長いのも考え物だ。よくて7分袖までかな。猫ちゃんの良さを消すのは無粋だ」
どうやらイメージは固まってきているようだ。
ゴテゴテの鎧は無理だよね。
僕は倒れて起き上がれない姿しか浮かばないよ。
とりあえずお任せすることにした。採寸して予算5000エンと伝えると問題ないと返答があった。
ついでにナティにも脛当てを依頼し、店を出る。
その後ドヴァ親方の店に行き、ナティのナイフを受け取る。
僕達はギルドに行き、クエストを見る。
今回は南門を出てすぐの草原に出没するスタンプ・ホースとイビル・ドッグの討伐と薬草の採集だ。
僕達は南門を出る。
無事に帰れますように!女神様!
フォーメーションは僕が前衛。ニナとラドンナが遊撃。ナティが後衛だ。
……僕、紙装甲だよ?
いや、ラドンナの防御力知らないけど。
その肉体で僕より弱いってことはないでしょう?
ラドンナは弓を背負っている。腰には剣を携えている。
ニナは片手剣にバックラーを装備している。
イビル・ドッグを2匹見つけた。
「「【ピット・フォール】」」
僕とナティの魔法で1匹が落とし穴に落ちる。
もう1匹に対して、僕は走る。
イビル・ドッグも僕に気づき、突撃してくる。
「【ミラージュサイン】」
ナナキが急に止まり構える。
イビル・ドッグはそのままナナキに突撃するが、
「!?」
ナナキの姿が霞のように消える。
イビル・ドッグが慌てていると、
「【スナイプ・シュート】!」
胴体に矢が突き刺さる。
「ギャウン!?」
イビル・ドッグが痛みに悶える。
僕は隙を見逃さない。
「【スラスト・エッジ】!」
僕の刺突剣がイビル・ドッグの喉に突き刺さる。
イビル・ドッグはビクン!と体を震わせ倒れる。
どんなもんだい!!
それを見て、ニナは監視していた落とし穴へと走る。
ニナは穴の直前で飛び上がり、穴の中のイビル・ドッグを視認する。
「はぁ!【スワロー・エッジ】!」
剣を振り下ろすと剣圧が飛び、イビル・ドッグの首を斬る。
イビル・ドッグは粒子となり消滅する。
よし!終わった。
ニナが一息つくとナティが叫ぶ。
「スタンプ・ホースが来ますにゃ!数1!」
連戦かよ!?
僕達は武器を握り直し、敵を見る。
馬が1頭スピードを上げて走ってくる。
スタンプ・ホースは前足を地面に叩きつけて衝撃波を飛ばしてくる魔獣だ。
あまり近づきすぎると避けられない。
ナティが両腕を突き出す。
「【ライト・レーザー】!」
光線がナティの両手から放たれる。
距離があるためスタンプ・ホースは避ける。
しかし、避けた分スピードが落ちる。
そこをラドンナが狙う。
「【レーザー・アロー】!」
光を纏った矢が、高速で飛び一筋の光を作る。
矢は見事にスタンプ・ホースの胴体に刺さる。
スタンプ・ホースが痛みに悶えている間に、僕とニナが駆けつける。
「「【フォース・セイバー】!」」
同じ技名を叫び、2人の剣が光を纏いスタンプ・ホースの体をやすやすと斬り捨てる。
スタンプ・ホースが消滅し、周囲を見て追加がないことを確認し武器を収める。
上手く連携出来たようだ。
その後も特に問題なく討伐は完了し、薬草採集も終える。
僕達は笑顔で街へと戻る。
上手く出来ました!女神様!!
空はオレンジ色に染まってきている。
ギルドへと戻り、エリマさん達に迎えられる。報酬をもらい素材を換金する。
ラドンナは人に会う約束があると言い、ギルドで別れる。
ニナも友人を見つけたとのことで別れる。
僕とナティはアイテムを補充しようと2人で街を歩く。
2人で歩く様子に周りは笑顔で見つめる。
ある程度買い物を終えると、
「ニャニャキ。ちょっと行きたいところがありますにゃ」
僕はもちろんと了承する。
ナティが連れてきたのは外壁の上だった。
エアリスの外壁は高さ55mもある。他の始まりの街も同じ高さの外壁がある。
ナティによるとここは展望台でもあり、夜までは一般開放されているらしい。
ここのことはニナやエリマさんに教えてもらったそうだ。
2人は外壁の縁に座る。
普通の人なら少し座りにくいが、ナナキ達には十分座れる広さだ。
2人は沈む夕日を眺める。
ナナキもさすがにこのシチュエーションにドキドキして、しっぽが落ち着かない。
ナティも同じく顔を赤くして、しっぽが落ち着いていない。
するとナティが話し出す。
「ゲームのにゃかではもう一週間ですにゃ。ニャニャキと一緒に行動してから6日ですにゃ。『もう』にゃのか、『まだ』にゃのかは分かりませんにゃ」
ナティはまっすぐ前を向いて話す。
「私はリアルじゃすごく内気ですにゃ。男の人とはにゃしたことにゃんてほとんどにゃいですにゃ。にゃのに一緒にいてすごく楽しかったですにゃ。………怖くにゃかったですにゃ」
僕は顔が赤くなるのを感じる。
「けど……襲われた時は……ニャニャキが怖かったですにゃ」
僕はナティを見る。
ナティは泣きそうな顔をしている。
「この世界はゲームですにゃ。死んでも生き返りますにゃ。それにゃのに……にゃんであんにゃに頑張るのか分からにゃくて……にゃんでそこまでしてくれるのか分からにゃくて」
ナティの頬に涙が流れる。
「だけど……怖い以上に…そこまでしてくれるニャニャキを怖いと思ったことが…そしてにゃにも出来にゃかった自分が……どうしようもにゃく憎かったですにゃ」
ナティはさらに大粒の涙を流す。
「決めたんですにゃ。ニャニャキにつぐにゃいをするって。ニャニャキの役に立つって」
僕は慌てて言葉を告げようとする。
そんなことをしてもらうために一緒にいるんじゃない!助けたわけじゃない!
しかし、その前にナティが僕を見て続ける。
「でも、それ以上に想っていることがありますにゃ。こんにゃことを想って良いのか分からにゃいですけど。言っていいのか分からにゃいですけど。それでも言いたいって、言うって決めたですにゃ。一緒にいるために」
ナティは僕の両手を握る。そして涙を流してはいるが、今の自分にできる最高の笑みで。
「私は、ニャニャキが、大好きですにゃ。ゲームのにゃかだけだとしても、ずっと一緒に、傍に居たいですにゃ。ニャニャキを助けていきたいですにゃ」
ナティの告白。
僕はその笑顔に見惚れる。その言葉に聞き惚れる。
夕日も相まって、本当にただ「美しい」と感じた。
それはどこから来ているか。僕はもう知っている。ずっと前から知っている。
…ダメな奴だなぁ。僕って。
僕はナティの両手を握り返す。
「ごめんにゃさいですにゃ」
僕は謝る。
その言葉にナティが顔を歪ませる。
違うよ。ナティ。
「それは僕から言わにゃければいけにゃい言葉だったにゃ」
ナティは僕の顔を見る。
「ずっと思ってたにゃ。ずっと言いたかったにゃ。けど……断られたらと、怖かったにゃ」
ぶっちゃけ一目惚れです。
だから、僕が言うべきだったよね。
僕はナティの両手を強く握る。
ナティの眼をしっかりと見る。
「ニャティが大好きですにゃ。これからも、ずっと一緒にいてほしいですにゃ。一緒にこの世界を見て、一緒に笑いたいですにゃ。だから……付き合ってくださいにゃ。ニャティに先に言わせちゃうダメにゃ男ですけどにゃ」
僕もしっかりと伝える。最後は苦笑いだったが。
ナティはその最後の言葉に首を振り、新しい涙を目に溜め、とろけるような笑顔を見せる。
2人は笑いあい、夕日を横目に抱き合う。
キスは……恥ずかしくて出来なかった。
2人は夕日が沈んだのを見届けて外壁を降りる。
夜になった街を歩く。
手を繋ぎながら。
その様子を見た街の人は微笑ましく見つめる。
その中には先ほど2人が歩いていた姿を見ていた人もいる。
先ほどと2人の雰囲気に違うことに気づき、少し目を見張るも手を繋いでいる様子を見て悟り、笑顔になる。
中には嬉しさに泣き始める者すらいた。
もちろん2人は気づかない。今は幸せ過ぎてお互いのことしか頭にないから。
2人は宿に入る。
ナラルスが出迎える。2人の様子にすぐに気づき、慈愛の笑みを浮かべて祝う。
ナナキとナティは笑顔で感謝を伝える。
ナラルスは2人を奥にある個室へと案内する。
ナナキ達は少し恥ずかしいが、ナラルスの気遣いに礼を言う。
ウィンクしながらナラルスは少し待ってほしいと伝える。
2人っきりになったナナキとナティは恥ずかしそうにお互いを見合い笑う。
会話少なくても幸せだからそれでいい。そう思っている。
ナラルスが料理を運んでくる。
出てきたのは肉がメインのコース料理だった。
ナナキはナラルスを見ると。
「今日くらいは相手のことで盛り上がりなさいねん」
と言って、綺麗な礼をして去っていく。
2人は苦笑する。しかし心の中ではナラルスに礼を言う。
今までのこと、これからしたいこと、行ってみたいところ、ニナやオグマにエリマ達の話。
色々話した。
食事も終わり、部屋に戻ろうとする。
ナラルスが現れ、ニナが友達を部屋に連れて寝込んでしまいナティのベッドがないと言ってきた。
申し訳ないがナナキの部屋で2人一緒に寝てくれないかと頭を下げる。
ナナキ達はナラルスの気遣いに気づいてしまう。
2人は顔を真っ赤にしながら手を繋いで部屋へと向かう。
2人は部屋に入る。
部屋にベッドはただ1つ。
ナナキは恥ずかしさにナティの顔を見る。
ナティはナナキの手を握ったまま、ベッドへと引っ張る。
ナナキも覚悟を決め、2人は一緒にベッドに入る。
心臓がドキドキしているのがはっきりわかる。
2人は手を握り合い、顔を合わせる。
お互い顔が真っ赤だ。
それを見て笑う。
落ち着くと眠気がやってくる。
2人は一緒におやすみを言い、眠りにつく。
すぐに寝息が2つ聞こえてくる。
手はまだ繋がっている。
その手は朝まで離れることはなかった。
恋愛表現って難しいですな。
ここまででありがたいことに1800PVを超えました。思ったよりたくさんの方に見ていただき感謝しかありません。
ちょうどいいので明日からは基本1日1話で投稿していきたいと思います。
ストックが切れる直前というのもありますが(笑)
これからもよろしくお願いします。
ありがとうございました。




