第89話 学院入学前夜
それから。
数か月が過ぎた。
俺たちは。
それぞれ力を伸ばしていた。
リーゼは。
「――完成!」
新しい魔法を作った。
「《五属性融合・エレメンタルブレイク》!」
巨大な魔法が空へ飛ぶ。
――ドォォン!
「……」
俺は空を見る。
「また庭がなくなった」
「……」
リーゼが目を逸らす。
「ごめん」
エリシアがため息をつく。
「また植え直しましょう」
アリシアは。
毎日のように剣の訓練。
ノアは空中戦を覚え。
セレナは王女としての教育と剣術を続けていた。
そして。
アクアは。
「レオン!」
「どうした?」
「思い出した!」
「何を?」
「昔のこと!」
俺は驚く。
アクアは言った。
「銀髪のお姉さん」
「女神様?」
「たぶん」
「何をしてた?」
アクアは少し考える。
「泣いてた」
「……泣いてた?」
「うん」
「そして」
「レオンに言ってた」
「何て?」
アクアは。
俺を見る。
「――ごめんなさい」
俺は。
胸がざわついた。
女神が。
なぜ俺に謝る?
「他には?」
「分からない」
アクアは悲しそうにする。
俺は頭を撫でる。
「無理に思い出さなくていい」
「……うん」
そして。
翌日。
俺たちは王立魔法学院へ向かうことになった。
「いよいよだな」
俺は荷物を持つ。
セレナが隣にいる。
「楽しみだね」
「うん」
リーゼ。
「絶対、私が学年一位になる」
エリシア。
「私は精霊魔法科が楽しみです」
アリシア。
「友達……」
ノア。
「俺は授業についていけるかな」
アクア。
「ぼくは?」
俺は笑う。
「お前は授業中に寝るなよ」
「はーい!」
王城の馬車が動き出す。
目指すは。
王立魔法学院。
だが。
学院の門前に到着した瞬間。
俺は足を止めた。
巨大な門。
その中央に。
見覚えのある紋章。
「……アストラ?」
神剣が震える。
《違います》
「じゃあ何だ?」
《あれは――》
《神喰らいの紋章です》
俺は。
学院を見上げた。
「……学院そのものが」
「敵の拠点なのか?」
その瞬間。
校舎の最上階から。
赤い瞳が。
俺たちを見下ろしていた。




