第88話 黒翼の少年、仲間になる
「学院で待っている……か」
俺は呟いた。
王都へ戻る道。
ノアは馬車の隅で黙っている。
「……」
アリシアがちらちら見ている。
「何?」
「……翼」
「見るな」
「珍しい」
「……」
アリシアは興味津々だった。
リーゼが聞く。
「本当に神喰らいの器なの?」
「たぶんな」
ノアは答える。
「でも、俺自身は神喰らいじゃない」
「そこは安心していい」
「じゃあ」
俺が聞く。
「これからどうする?」
ノアは黙った。
しばらくして。
「……分からない」
「なら」
俺は言う。
「俺たちと来れば?」
ノアが顔を上げる。
「いいのか?」
「もちろん」
「俺は一度、お前を殺そうとしたぞ」
「もう終わったことだ」
ノアは驚いた。
「……変な奴」
「また言ったな」
「褒めてる」
「それならいい」
こうして。
ノアが仲間になった。
王都へ戻ると。
国王が驚いた。
「神喰らいの器を……仲間にしたのか?」
「本人が望んでます」
ノアも頭を下げる。
「俺はもう神喰らいには従わない」
国王はしばらく黙り。
「……分かった」
そして。
ノアにも王都滞在許可が出た。
その夜。
俺たちはいつもの家で食卓を囲んだ。
「はい、ノア」
セレナが料理を渡す。
「……?」
「食べて」
「……」
ノアは恐る恐る口に入れる。
「……美味い」
セレナが笑う。
「よかった」
リーゼが言う。
「明日は魔法研究ね」
エリシア。
「庭の手入れもお願いします」
アリシア。
「剣の稽古」
アクア。
「一緒に寝る?」
「アクア、それは意味が違う」
みんなが笑った。
ノアは。
その光景をじっと見ていた。
そして。
小さく笑う。
「……これが」
「仲間ってやつか」
俺は頷いた。
「ああ」
「悪くないだろ?」
ノアは。
少しだけ笑った。
「……悪くない」
だが。
その夜。
アストラ・ゼロが俺にだけ聞こえる声で告げた。
《レオン》
「ん?」
《ノアが仲間になったことで――》
《六つ目の権能への道が開きました》
「……六つ目?」
俺は空を見る。
《そして》
《その権能は――》
《神喰らいに対抗するための力です》




