第86話 もう一人の器
「神喰らいの器……?」
俺はノアを見る。
「どういう意味だ?」
ノアは笑った。
「お前は知らないのか?」
「知らないから聞いてる」
「そうか」
ノアは翼を広げる。
「なら、戦いながら教えてやる」
「……面倒だな」
俺は剣を抜く。
「来い」
ノアが消えた。
「――!」
速い。
俺は咄嗟に剣を横へ構える。
――ガキィン!
爪と剣がぶつかる。
「へえ」
ノアが笑う。
「反応できるんだ」
「そっちこそ」
俺は蹴りを入れる。
ノアは空中へ逃げる。
「――黒翼!」
無数の黒い羽根が飛んでくる。
「断絶!」
全てを切る。
しかし。
羽根が爆発する。
――ドォン!
「レオン!」
セレナが叫ぶ。
「大丈夫!」
俺は煙の中から出る。
ノアが笑う。
「やっぱり強い」
「お前もな」
「当然」
ノアは空中で止まる。
「俺は――」
「お前より先に、神喰らいの力を受け入れている」
黒い魔力が膨れ上がる。
「俺の身体には、神喰らいの欠片がある」
「……!」
「お前にもある」
「何?」
「胸の奥」
「そこに眠っている」
俺は胸を押さえる。
確かに。
何かがある。
ノアは笑う。
「それを目覚めさせれば」
「お前は俺より強くなる」
「でも」
俺は首を振る。
「いらない」
「……なぜ?」
「そんな力に頼らなくても」
俺はアストラを構える。
「俺には仲間がいる」
ノアは。
一瞬だけ寂しそうな顔をした。
「……仲間」
「そんなもの」
「俺にはいない」
「だったら」
俺は言う。
「作ればいい」
ノアが驚いた。
「……」
その瞬間。
ノアの胸から。
黒い紋様が広がった。
「ぐっ……!」
「ノア!」
「来るな!」
ノアが叫ぶ。
「俺は……」
「神喰らいに食われる!」
俺は剣を構える。
「なら」
「俺が切る」
「何を?」
「お前と神喰らいの繋がりを」
ノアが目を見開いた。
「……そんなこと」
俺は笑う。
「やってみるまで分からないだろ」
神剣が。
輝いた。




