第85話 東の黒翼
「レオン」
朝。
俺は目を覚ました。
窓から差し込む光。
いつもの朝。
「……昨日のことが夢みたいだ」
神喰らい。
千年前の自分。
そして学院。
普通なら。
頭がおかしくなりそうな話だ。
でも。
俺には仲間がいる。
「おはよう」
階下へ行く。
「おはようございます、レオン」
エリシアが朝食を作っていた。
「おはよう」
「レオン!」
リーゼがやってくる。
「今日、魔法の研究を――」
「朝飯食べてからな」
「……分かった」
アリシアは静かに食べている。
アクアはパンの上で跳ねている。
「美味しい!」
「落ちるなよ」
「大丈夫!」
そして。
玄関が開く。
「おはよう!」
セレナ。
「お、王女様が普通に来るなよ……」
「今日は王女ではなく友達として来ました!」
「それならいいけど」
穏やかな時間。
俺は思った。
こういう日常を。
守りたい。
だが。
その日の昼。
王城から緊急連絡が入った。
「東の国境が襲撃されました」
騎士が言う。
「魔族か?」
「いいえ」
「黒い翼を持つ少年が一人」
「一人……?」
「その少年だけで――」
騎士が震える。
「国境砦を壊滅させました」
俺は立ち上がる。
「名前は?」
「分かりません」
「ただ」
騎士は続ける。
「こう言っていたそうです」
「――レオン・アークライトを呼べ」
俺は黙った。
アストラ・ゼロが震える。
《……危険です》
「どれくらい?」
《神喰らいの力に近い》
「……!」
俺は剣を取る。
「行こう」
セレナが立つ。
「私も」
リーゼも。
「当然でしょ」
エリシア。
「お供します」
アリシア。
「私も行く」
アクア。
「ぼくも!」
俺は笑った。
「よし」
王都を出る。
東へ。
そして。
数時間後。
俺たちは。
黒煙に包まれた砦を見た。
その城壁の上に。
一人の少年が立っていた。
黒髪。
赤い瞳。
そして。
黒い翼。
少年は俺を見る。
「……ようやく来た」
「お前は誰だ?」
少年は笑う。
「俺か?」
「俺は――」
黒い翼を広げる。
「ノア」
「お前と同じ――」
「神喰らいの器だ」




