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05残酷な殺意

「明日はいよいよ、デビュタントね」

「俺以外の奴と踊るのか」


「フィンともちゃんと踊るわよ」

「そうじゃなきゃ行かせない」


 フィンに出会って十年が過ぎた、私は十五歳になっていた。そして明日は社交界にデビューするデビュタントが行われるパーティがあった。五歳の時と変わらずフィンは相変わらず私にべた惚れだ。舞い込んでくる縁談なんかに殺気を放っている、そんなフィンだが最近は私から離れて軍に入団している。夜には絶対に帰ってくるが、昼間は将校として軍で働いている。フィンの剣の腕は凄くてもうすぐ爵位が貰えそうだった。


「爵位をもらったらマリーを嫁にするんだ」

「フィン、私はいいって言ってないけど」


「うぅ、駄目なのか?」

「駄目だとも言ってないわ、無事に爵位が貰えるといいわね」


 私的にはもう十年もフィンとつきあって、彼のお嫁さんになってもいいと思っていた。お父さまやお母さまにも好きな人と結婚しますと言ってあって、縁談は片っ端から断って貰っていた。どうせこの侯爵家は兄が継ぐのだからそれでいいやと思っていた。兄のリセスはそれに納得せず、しつこく縁談を持って来た。兄はどうも視野が狭いところがあって侯爵家を継いでいいのか心配だ。明日をデビュタントに控えた日、私はお父さまに呼び出された。


「マリー、可愛い子。デビュタントの準備はできたかい?」

「ええ、大丈夫です」


「フィンとやっぱり踊るのかい?」

「約束ですから」


「マリー、お前は賢い。実は侯爵家をお前に継がせようかと思っている」

「ええ!?」


 私は思ってもいないことを言われて驚いた。別に侯爵家を継ぐのはいいが、フィンと結婚できなくなるのは困る。そうしたらお父さまはこうも言った。


「お婿さんは誰だっていいよ、召喚獣と結婚するのも珍しくない」

「お父さま、その話。フィンにはしました?」


「いや、まだお前と母さんにしかしていない。兄のリセスは反対するだろうが、どうもあの子は目先のことしか考えていないところがある。領主としては不向きだ」

「お婿さんが誰だっていいのなら、侯爵家を継ぎますわ」


「そうか、フィンにも早く話しなさい。そうすれば軍を辞めてうちに戻ってくるだろう」

「ええ、そうします」


 私はいきなりグレンチェ侯爵家の跡取りになった。私はそのことを真っ先にフィンに話しにいった。フィンはちょっと怒っていたまた新しい縁談の話しだと思っていたのだ。


「フィン、私が侯爵家を継ぐことになったの。だから軍を辞めて戻ってこない?」

「それは俺と結婚してくれるということか」


「ふふっ、今まで言わなかったけど私はフィンの事が大好きよ。だから私のお婿さんになる?」

「なる!!」


 真夜中に近いというのにフィンは除隊届を書き始めた。そうして書き終わると私のところにきて唇にキスをした。触れるだけのキスだった、私も嬉しくてフィンの唇に同じようにキスをした。


「マリーが侯爵家を継ぐのはいい、あのリトスはどうなる?」

「お父さまがどうにかすると思うわ」


「あいつには気を付けた方がいい」

「私の邪魔をするっていうこと?」


「あいつは欲張りで見栄っ張りだ、侯爵家を継げないと知ったらマリーに何をするか分からない」

「フィン、除隊届は郵便で送って今すぐ軍を辞めてくれる」


「もちろんそうする、マリーから俺は離れないよ」

「それなら、安心だわ」


 私はお兄さまの自分の召喚獣を殺すような残酷な性格をよく分かっていなかった。子どものしたことだと思っていたし、お兄さまも成長したと思っていた。翌日のデビュタントで私はフィンをパートナーにして王室主催のパーティに出席した。フィンは元々カッコ良かったから急遽用意した衣装も似合っていた。そうして家族で王室に挨拶したのだが、お父さまはその時こう言った。


「国王陛下、和が家を継ぐ長女のマリーです」

「うむ、話は聞いている。召喚獣と結婚するそうだな」


「はい、マリーの召喚獣は優秀です」

「グレンチェ侯爵家に光あらんことを」


 その話を聞いてお兄さまのリセスは真っ青になっていた。なんとか国王陛下に挨拶したが、その顔色は今にも倒れそうだった。そして謁見が済むと体の調子が悪いと家に帰ってしまった。私はフィンと一緒にダンスを踊ってパーティを楽しんだ。お父さまとお母さまもその様子を見て微笑んでいた。だから私は知らなかった、お兄さまが私を殺そうと決めたなんてそんな残酷なことは何も知らなかった。


「愛してるよ、マリー」

「フィン、愛してるわ」


 そうしてデビュタントも終わって私たちは帰ることになった。侯爵家から迎えの馬車が来てそれに皆で乗った。でもフィンだけが何かソワソワしていた。馬車は間違いなくうちのものだったし、迎えの者も知っている人だった。私は何となくフィンの腕に抱きついていた。そうしたら崖に差し掛かった瞬間ぐらりと馬車が揺れて、迎えの者は馬車を飛び降りた。そのまま誰も操縦しない馬車は崖から落ちていった。

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