04告白
「とう!!」
「――っ!?」
フィンが人化できることが侯爵家に伝わってからフィンは剣術の稽古に夢中だった。剣術が上手くなって私を守るのだと必死だった。今も家の護衛たちに稽古をつけてもらったところだった。フィンの木剣は護衛の木剣に弾き飛ばされた。
「もう一本お願いします」
「ああ」
フィンは私の召喚獣として侯爵家で大切に扱われていた。フィンの剣術はどんどん上手くなってやがて護衛の中でフィンに勝てる者がいなくなった。
「マリー、俺は頑張ったよ。褒めて」
「ふふっ、いいわよ」
フィンは私に褒められて頭を撫でられるのが大好きだった。だから私もフィンが何か頑張った時には遠慮なく褒めた。そんな穏やかな日常が続いていたある日だった。私に縁談の話しが来た。それを聞くとフィンはこう言った。
「マリーはまだ五歳だぞ、まだ早い」
「そうよね、お父さまに詳しく聞きに行きましょう」
私をフィンに蛇に戻ってもらい右腕に巻き着けてお父さまのところへ向かった。お父さまは書斎にいて私が来ると縁談の話をしてくれた。
「私もまだ早いと思うんだが、お前に縁談が来ている」
「まぁ、何故でしょう?」
「おそらくフィンが人化できることでお前に召喚獣を操る才能があると思われている」
「私は特に何もしていないのに」
「気にするな、この縁談は断る。いくらなんでも五歳のお前には早過ぎるからな」
「それを聞いて安心しました」
この縁談の話しは結局お断りになったのだが、それからフィンの様子が変になった。常に私の傍にいて髪なんかにキスするようになったのだ。
「フィン、どうして私の髪にキスするの?」
「お前が好きだからだ、将来嫁にしたいからだ」
「ええ!?」
「嫌か?」
私は考え込んでしまった、フィンのことは大好きだった。でもお嫁さんにしたいほど好かれているとは思っていなかった。確かに高位の召喚獣と結婚する人もいる。例えば王家だ、王家は龍の召喚獣と結婚して龍しか使えない特別な力を持っている。私はとりあえずこう言った。
「フィンが龍でもない限り、お父さまは私と結婚させないと思うわ」
「それなら大丈夫だ、普段は蛇だが俺は龍だ」
「ええ!?」
「マリーにだけ本当の姿を見せる、他の誰にも年頃になるまで言うな」
そういうとフィンは人化を解いた、するとそこには蛇ではなく黒龍がいた。私の右腕に巻きつきその黒龍は私の唇にキスをした。私は混乱して声も出せなかった。フィンはまた人化して私を抱きしめると唇にひとさし指を当てて言った。
「マリー以外には内緒だぞ」
「……フィン、確かにあなたは好きだけどお嫁さんになるかは別よ」
「俺以外の男に目を向けたらそいつを殺してやる」
「そんな物騒なこと言わないの、いいわ。フィン、その話は前向きに検討するわ」
私はファーストキスをフィンに奪われたわけだが怒る気になれなかった。フィンは美しくてカッコよかったし今ではフィンのことが大好きだったからだ。だからフィンのお嫁さんになるのも悪くないと思っていた。でも私はそのことをフィンに伝えなかった。召喚獣の熱愛は酷くて王家の者でも召喚獣に閉じ込められた者もいたらしいからだ。私がフィンを大好きだと言ったら、なんだかいますぐ攫われるような気がしていた。
「マリー、俺を愛してくれ」
「……検討するわ」
それからフィンは私に堂々と求愛行動をするようになった。髪や頬にキスをするのは当たり前でずっと傍にいた。剣術の稽古も私が見ていなければしなくなった。私には時間があったし、フィンの剣を見るのが好きだった。
「フィン、私が見てるから剣術の稽古を護衛としなさい」
「分かったよ、マリー」
こうして私には秘密ができた。フィンが龍だなんて知らなかったことを知った。人のいないところでフィンは炎と氷それに水を自由に操れる姿を見せてくれた。龍じゃなければできないことだった。普通、王家しか飼えない龍がうちにいるなんて凄いことだった。フィンにその訳を聞いてみた。
「元々母は王家の龍だった、でも俺のような蛇を産み落としたことで王家から捨てられた。別に王家を恨んではいない、おかげでマリーに会えたからな。彼らは幼い龍が時々蛇として生まれてしまうことを知らないんだ。あとは召喚獣商のところで黒い毛玉になって身を隠していた。俺が龍じゃなくても買ってくれる人のところへ行きたかったんだ」
フィンはそう言ってまた私の髪にキスをした、私はそれを心地よく思っていた。蛇のフィンも龍のフィンも大好きだった。でもそれはもっと大人になってからフィンに言おうと思った。
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