03召喚獣お披露目会
「今日が召喚獣お披露目会よ、フィン。準備はいい?」
「シュー」
「大丈夫ってことね、あとで人化して驚かせましょうね」
「シュシュ―」
私は使用人にドレスを着せられ髪を結って貰ってお父さまとお母さま、それにお兄さまのいる玄関に行った。あれからお兄さまは召喚獣として子虎を買ったが、子どもの姿にしか人化できないらしい。だからなのか私とフィンを見るとふんっと顔をそらした。そうして私たちは馬車に乗り王室主催のパーティに出かけていった。今夜の主役は召喚獣と契約したばかりの子どもたちだった。
「ルル様、ミア様、ごきげんよう」
「ま、マリー様。ご、ごきげんよう」
「きゃあ、マリー様。蛇が!?」
「ああ、大丈夫。フィンは私の召喚獣よ」
「そうでしたの、驚きました」
「し、失礼しました!!」
「ルル様は兎の召喚獣なのね、ミア様は仔馬。どちらも可愛らしいわ」
「へ、蛇もカッコいいですわ」
「ええ、綺麗な黒蛇ですわ」
ルルもミアも同じ侯爵令嬢だが、一応礼儀として様付けで呼び合っている。ルルは金の髪に緑の瞳、ミアは赤い髪に同じく赤い瞳を持っていた。二人はフィンを褒めてくれたがその目に怯えが混じっているのは仕方のないことだった。だから私は早くネタバラシすることにした。
「フィン、人化しなさい」
「はい、マリーお嬢様」
「まぁ!?」
「ええ!!」
フィンが人化してみせると周囲の人々が驚いていた。子どものうちに人化させられる召喚獣を持つ者は少ないからだ。私はフィンの姿を護衛たちに覚えなさいと命令した。お友達のルルもミアも目を真ん丸にして驚いてくれた。私は大満足だった。
「あらっ、侯爵令嬢でも最近は人化した召喚獣を飼えるのね」
そこで私の大嫌いな女の子がやってきた。金の髪に金の瞳を持つペルニャ・ビーグ公爵令嬢だった、うちより貴族として上だからといってこの女の子は下々の貴族に嫌がらせをするので有名だった。彼女も人化した召喚獣を連れて来ていた犬のような耳がついた青年だった。美しさとカッコよさでは圧倒的にフィンが勝っていた。そしてペルニャ公爵令嬢はとんでもないことを言った。
「蛇でも極上の美貌じゃない、金貨千枚でわたくしに売りなさい」
金貨二十枚あれば庶民が一年働かずに暮らせる。ペルニャ様の提案したのは大金だったが、我が侯爵家もそれくらいで召喚獣を売ったりするわけがなかった。
「失礼、ペルニャ様。お売りできませんわ」
「あらあら、強欲ね。金貨二千枚ならどう?」
「金貨を何枚つまれてもフィンは売りませんわ」
「つまらない、お前あの召喚獣を食べておしまい!!」
ペルニャ様の召喚獣は狼だった巨大な狼に変化してフィンに襲い掛かった。フィンは素早く近くにいた護衛の剣を奪い取ってその狼に向かって振るった。その一撃で狼は左目を失った、狼はなおもフィンに襲いかかろうとしたが、駆け付けたそれぞれの家の護衛たちに止められた。
「まぁ、これは一体どういうことなの?」
「ペルニャ様の召喚獣がフィンを食べようとしたの」
私は駆けつけたお母様にそう言った。ペルニャ様のお母様も来ていてペルニャ様を叱っていた。ペルニャ様と違って母親の方は至って常識人のようだ。ペルニャ様は一応私に向かってお詫びの言葉を紡いだ。だが私とすれ違う時にこう言った。
「その蛇、いつかわたくしのものにするわ」
私はフィンの背中の後ろからこっそりペルニャ様を睨みつけた。ペルニャ様は自分のお母様から怒られても平気のようで残酷なことを言っていた。
「左目がなくなった召喚獣なんていらないわ、明日売りに行って新しいものを買いましょう」
私は本来なら召喚獣は一度主人と決めたらその人にしか尽くさないので、売られたらあの狼が死んでしまうことが分かった。そうしてなんて酷いことをするのかしらとペルニャ様をますます睨み続けた。そんなちょっとした騒動は起こったが、召喚獣お披露目会は無事にすすんでいった。第一王子が龍の人化した召喚獣を披露した時には女の子の間で甘い悲鳴が上がった。でも私はそれよりあの狼の子が心配だった。
「俺以外の召喚獣を見ないで、マリー」
「だってフィン、彼は死んでしまうに違いないわ」
「主から見捨てられたんじゃ仕方ない、だから俺を見捨てるなよ。マリー」
「私は絶対フィンを見捨てないわ」
フィンはご機嫌で私を御姫様だっこしてくれた。その様子をルル様とミア様が羨ましそうに見ていた。お父さまとお母さまはフィンが人化できることに少しだけ驚いていた。こうして召喚獣お披露目会は終った、私は上機嫌でお兄さまは黙ってお父さまとお母さまと帰ることになった。
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