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02殺傷

 フィンが人化できると知ってしばらく過ぎたが、私はフィンが人化できることを隠していた。理由は簡単、お友達との召喚獣お披露目会で人化を披露して驚かせたかった。だからフィンは昼間は基本的に蛇の姿で過ごし、夜にだけ人化して私のだきまくらになっていた。人化したフィンはカッコよかった、戦闘服のようなものを着ていて軍人さんみたいだった。時々昼間でも人化したが、トイレに行っていた。以前、私の腕から離れた時もそうしていたらしい。


「スプーンはこの順番で使うのです」

「だってさ、フィン分かった?」

「シュー」


 家庭教師に食事のマナーを教わる時もフィンは蛇の姿で一緒にいた。だからフィンは私と一緒にいろんな授業を受けた。特に剣術は気に入って、夜に人化している時素振りをしていたくらいだ。私と一緒にこっそり冒険者ごっこもやった。木剣をもって勝負するのだ、当たり前だがいつもフィンの勝ちだった。


「フィン、この計算はどうやるの?」

「ああ、これはこの式を使うのです」


 フィンは頭も良くて私以上に家庭教師の授業を理解していた。だから夜寝る前にフィンに宿題を手伝ってもらうこともあった。家族の皆はモフモフが好きな私が急に蛇のフィンを可愛がり出したので不思議に思っていたらしい。特に兄のリセスからはこう言われた。


「マリー、いい加減にその蛇を殺せよ」

「ヤダッ!! フィンはもうマリーのだもん」


「可愛い子虎か、綺麗な鳥を買ってやるからさ」

「いらない!! 私はフィンがいてくれればいいの」


 リセスは蛇があんまり好きじゃない、私もフィンが人化するまでは嫌いだった。でも今は蛇のフィンも大好きだ。ひんやりと私の腕にまきつく感触も気に入っている。お父さまとお母さまは不思議そうにしていたが、フィンを殺せとは言わなかった。でも兄のリセスはこのままだと私が恥をかくと思っているようだ。だから頻繁にフィンを殺せと言ってきた。もちろん私は取り合わなかった。


「フィン、スプーンやフォークの使い方も上手くなったね」

「お披露目会では食事もでるんだろう、俺もマリーに恥はかかせたくない」


「えへへへ、人化できるだけで皆びっくりするよ」

「そうか、マリーの友人を驚かせなきゃな」


 こうしてフィンが人化できることは召喚獣お披露目会まで秘密のはずだった。でも兄のリトスがフィンを殺せってしつこくて、フィンと相談して兄にだけは人化できることを教えることになった。温室に兄を呼び出して、使用人には誰も来ないでと言っておいた。そうするとリトスは来たのだが剣を持ってきていた。


「マリー離れろ、今日こそその蛇を殺す!!」

「お兄さま、その前にフィンをよく見て」

「そうですよ、マリーのお兄さま」


 フィンがそう言って人化してみせるとお兄さまは思わず剣を地面に落とした。口をあんぐり開けてびっくりしていた。私はお兄さまを安心させる為に、フィンに臣下のように控えさせた。


「お兄さま、フィンは人化できるの。これで召喚獣お披露目会も安心でしょ」

「マリーのお兄さま、マリーは俺の人化は召喚獣お披露目会まで隠しておきたいのです」

「…………ず」


「ず?」

「ず?」

「ずるい!! マリーの召喚獣だけ人化するなんてずるい!! 俺の鳥も人化させてやる!!」


 そう言ってお兄さまは温室から走ってでていかれた。私は残されたお兄さまの剣を拾ってお兄さまの使用人に届けておいた。お兄さまはというと自分の召喚獣、美しい鳥にこう言っていた。


「人化しろ!! 人化しろってば!!」

「ぴゅい?」


「ぴゅいじゃない、人化するんだ!! 早く!!」

「…………」


 そのお兄さまの召喚獣は首を振っていた、まだ人化することができないのだろう。お兄さまはそれからしつこく自分の美しい鳥に人化しろと迫っていた。私は呆れてその場を後にした、その前に一言だけ言っておいた。


「お兄さま、人化は召喚獣次第です。その美しい鳥を人化できないからって殺さないでくださいね」

「マリー、こいつだって人化できる!! ちょっと怠けているんだ!! 人化しろ!!」


 狂ったように人化しろと叫ぶお兄さまを私は放っておくことにした。ただお母さまに私はこう告げ口しておいた。


「お兄さまが自分の召喚獣の鳥に人化しろって迫ってるの、鳥を殺したりしないように使用人に見張って貰ったほうが良いと思うわ、お母さま」

「人化はその召喚獣との相性ですからね、分かったわ。使用人に見張らせましょう」


 これでお兄さまの件は大丈夫だと私は思った。でも私は考えが甘かったらしい、お兄さまは人化しない自分の鳥に怒って、人化しろと攻め立てて水を与えず衰弱死させてしまった。お父さまとお母さまからそれでお兄さまは怒られていたけど、これで新しい召喚獣を買いにいけるって聞き流していた。私はそんなお兄さまにゾッとした、新しい召喚獣が人化できる子だといいけどと思った。


「フィンの人化、お兄さまには見せない方がよかったかな?」

「いいえ、遅かれ早かれマリーのお兄さまは同じことをしたと思います」


 私は自分があの美しい鳥を殺しちゃった一因になったことに落ち込んだ。でもフィンは遅かれ早かれ同じことが起こったと言って慰めてくれた。さぁ、召喚獣お披露目会まであと少しだった。

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