06敵対者
「水よ!! 俺達を守れ!!」
「フィン!?」
「うわぁ!!」
「きゃあぁ!!」
崖から馬車は転げ落ちた、護衛の者たちはどうしていいか分からず崖上にいた。フィンだけがどうするべきなのか知っていた。彼は水の魔法で落ちていく馬車を包んだ。崖の下にあった川から水が吹き上がって馬車を受け止め川のほとりにゆっくりとおろした。その間私は一瞬気を失っていたらしい、気が付いたら馬車は崖下の川のほとりに壊れ倒れていた。
「フィン、大丈夫!?」
「マリーこそ大丈夫か!?」
「ええ平気よ」
「良かった、下が水が豊富な川で良かった」
お父さまとお母さまは気絶していた、それから護衛の者たちが崖下に下りて来ていた。私はフィンとお父さまとお母さまを起こして怪我が無いか確認した。幸い、誰一人怪我をしていなかった。
「フィン、私たちとマリーを守ってくれてありがとう」
「貴方とならマリーは幸せになれますわ」
お父さまとお母さまはそう言ってフィンを褒めた。フィンがどうして水の魔法を使えるのか、そんなことは聞かなかった。お父さまとお母さまにとってフィンが私を守ってくれるならそれはどうでもいいことだったからだ。護衛の者たちと合流したらあの馬車を操っていた御者が捕まっていた。
「この者には侯爵邸で理由を聞かなければならないな」
お父さまはそう言ってその御者を捕らえたまま侯爵邸に帰ることになった。馬車は壊れてしまったが、お父さまもお母さまも乗馬ができた。私はフィンが操る馬に乗せて貰った。そうしてフィンはこっそりと私だけに言った。
「リトスの仕業だ、あいつ喰い殺してやる」
「そうなの? フィン、だったら正当な裁判にかけるべきよ」
「マリーが言うならそうする」
「でもお兄さまがやったという証拠が少ないわね」
「御者の証言だけでは足りないか?」
「侯爵家の長男を罰するにはちょっと証拠不足ね」
とにかく私たちは無事に侯爵家に帰ってきた。そうしたらお兄さまのリトスが最初は笑顔だったのが、私を見た途端に真っ青になってしまった。
「これから御者を拷問する、リトス異論はないだろうな」
「……はい、お父さま」
こうして馬車を操っていた御者は拷問にかけられた、すぐに彼はお兄さまの仕業だと吐いた。お兄さまのリトスは自分を貶める陰謀だと言った。お父さまはそんなお兄さまに言った。
「お前から侯爵家の相続権を剥奪する、それに謹慎だ。牢の中で大人しくしていろ」
「そんな、お父さま。何かの間違いです!! 陰謀です!!」
「親を殺すように命じる子どもを信じられない」
「僕はそんなことは命じてません!!」
こうしてお兄さまは侯爵家にある牢の中で謹慎することになった。私は侯爵家の正式な跡取りになった。するとその噂を聞きつけてか、ペルニャ公爵令嬢から手紙が届いた。
”あの蛇を金貨三千枚でわたくしに売りなさい”
私がその手紙をフィンに見せると彼は手紙を粉々になるまで破ってしまった。私は一応お返事の手紙を書いておいた。
”フィンを売る気はありません”
でもその後もしつこくペルニャ公爵令嬢は侯爵家を継ぐならそれ相応の身分の者と結婚すべきで、フィンはその邪魔になると手紙を何度も書いてきた。それどころか私に勝手にお見合い相手が会いに来た。茶色の髪と赤い瞳をした男の人だった。
「アルト・レチェンテです。本日はお見合いの機会を頂き光栄です」
「あのアルト様」
「はい、なんでしょう?」
「ペルニャ様に何と言われたか知りませんが、私にはもう婚約者がいます」
「ええ!?」
「ですので心苦しいですが、お引き取りを」
お見合い相手は善良な侯爵家の次男か三男で、私の言葉にびっくりしていた。幸い、しつこくくいさがる男はいなかった。私はもうさっさとフィンと結婚してしまおうと思って、お父さまとお母さまにもそう言った。
「お前が望むならそうしなさい」
「命の恩人ですもの、反対なんてしないわ」
フィンにもちゃんと指輪を二つ買ってプロポーズすることにした。私にはフィンの瞳の色の黒い石を、フィンには私の瞳の色の青い石をそれぞれ指輪にした。
「フィン、私と結婚してくれる?」
「俺以外の誰と結婚するんだ、もちろん俺はマリーと結婚する」
こうして結婚式が開かれることになった。私は親しい友人だけ招いて小さく静かな式にするつもりだった。フィンもその意見に賛成で、付き合いの浅い貴族なんて会いたくないと言った。そうして私はお父さまとお母さまに手伝って貰って結婚式の準備を始めた。そうしたらいつの間にかお兄さまが牢を抜け出していた。もちろんお父さまは人を使って探させたがその行方は分からなかった。
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