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第2話 「大好物よ!」

店が半壊してから、数日。


「ペペロンチーノお待ちー!!」


今日も蛇丸は、いつも通りバイトに明け暮れていた。


「あの子新しいバイトの子?、ずっと壁直してるけど……」


常連客が小声で聞く。


「いいじゃない。ここ以外に行く場所ないと思うの。それに……可愛いし」


店長・和春はにこやかに答えた。


その視線の先。


「こんなはずじゃなかったのに……」


ネークは、壁の修理をしていた。


ぎこちない手つきで板を打ち付けながら、明らかに不満そうな顔をしている。


「おい!ネーク」


「なによ……」


振り向きもせず、ぶっきらぼうに返す。


「腹減っただろ。これ食えよ」


蛇丸は皿を差し出した。


「こ、これは……!」


ネークの目が、ぱっと輝く。


「カエルじゃないのー!」


「ん?カエル好きなのか?」


「好き……そんな言葉じゃ言い表せないほどよ」


ネークは皿をじっと見つめながら言った。


「私の世界でも、よく食べていたわ。高級食材よ」


「へえ、そうなんだな」


蛇丸は少しだけ引きながら頷く。


(そこは蛇なんだな……)


ネークは皿を手に取り――


「いただくわ」


次の瞬間。


ネークの口が、大きく開いた。


「……は?」


そして、そのまま。


――丸呑みした。


数秒の沈黙。


「……え?」


蛇丸が固まる。


「……まあ、大きな口ね」


和春はどこか感心していた。


ネークはゆっくりと顔を上げる。


「……美味しいわね」


ぽつりと呟く。


「いやいやいやいや!!今のどうなってんだよ!?」


「外は香ばしくて、中は柔らかい……調味も絶妙だわ」


「食レポしてる場合じゃないだろ!」


「なによ、うるさいわね。これくらい蛇の常識よ」


ネークは腕を組み、満足そうに頷く。


そのとき、和春が笑顔で近づいてきた。


「あら、気に入ってもらえたかしら」


「え、これ店長が作ったんですか!?」


「そうよ。そろそろ新メニュー欲しいかなって思ってね」


「でもなんでカエルなんですか?」


「迷ってたんだけど、ネークちゃん見て思いついたのよ。蛇といえばカエルでしょ?」


「発想が雑すぎるだろ」


ネークはすっと立ち上がる。


「蛇丸。この店……悪くないわね」


「急に評価上がったな」


「食は力よ」


腕を組み、堂々と言い放つ。


「人間がこれほどのものを生み出すとは思わなかったわ」


「ただの料理だけどな」


「違うわ」


ネークは首を振る。


そして、皿をビシッと指差した。


「これは――」


一拍。


「私の“大好物”よ!!」


「タイトル回収したな今!?」


ネークはくるりと振り返り、厨房を見つめる。


「決めたわ」


「何を」


「この店を、支配するわ!」


「スケール小さくなってないか?」


そのとき。


「あっ!いけない、開店時間じゃない!」


和春が声を上げる。


「蛇丸ー!シャッター開けて!」


「はーい!」


蛇丸は動きかけて――止まった。


「……おいネーク」


「なによ」


「それ、客に出す予定のやつなんだけど」


ネークの手元には、すでに空の皿があった。


「え?」


「全部食ってんじゃねえか!!」


ネークは満足そうに微笑む。


「いいじゃない。支配者に献上したと思えば」


「してねえよ」


「……もっとある?」


「ねえよ!!」


――その日の夕方。


「……はぁ」


ネークは店の裏で、しょんぼりと座っていた。


「なんで私が働かされてるのよ……」


「食った分働けって言われただろ」


蛇丸が呆れたように言う。


「納得いかないわ……」


「でも美味かったんだろ」


「……それは、そうね」


少しだけ間を置いて、ネークは小さく呟く。


「……また食べたいわ」


蛇丸は苦笑した。


「じゃあちゃんと働け」


「仕方ないわね」


ネークは立ち上がる。


そして、少しだけ笑って言った。


「この星の“食文化”……悪くないわ」


――こうして、最強の蛇による地球侵略は、


ちょっとずつ“食”に支配され始めていた。

第2話を読んでくださりありがとうございます!

今回はネークの大好物が判明しました。

地球との文化の違いに、これからもたくさん振り回されていきます。

少しずつウィステリアの日常も賑やかになっていくので、楽しんでもらえたら嬉しいです!

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