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98/152

98話

 悪魔の貫手が、首に突き刺さる寸前。


 悪魔が、真横に弾き飛んだ。


 そして数十メートル先――ジーンおばあちゃんの魔法でできた池に、盛大に飛沫をあげて突っ込んだ。






 大きな大きな背中。





 長年の壮絶な訓練によって培われた筋肉の隆起が、服の上からでもわかるほど。


「すまん。遅くなってしもうた。エル。生きてるな」


 そう言って振り返った、おじいちゃんの微笑み。それに、言い表しようのない安心感を覚えた。


「……遅い、よ」


 我慢しないと、涙が出そうだ。


「ガッハッハ。すまんすまん。ちょっと国境で戦争があってな。少し手間取った」


 ――もう、大丈夫だ。


 そう、思わせてくれた。


「アスリッタ! エルを頼む!」


 おじいちゃんが指示を出すと、「はい!」と女性の声が聞こえた。


 女性は、横たわる俺の横へやってくる。そして、俺に手を添えた。


「少し違和感があるかもしれませんが、我慢してください」


 そう、彼女は言った。


 俺は、少しうなずいて了承した。


 その様子を見て、女性は唱え始める。


「清き水よ、我が意に応え――その身を巡り、見た全てを我に示せ。ブルーダイアグノーシス――水の診断」


 彼女の手のひらから生成された水が、俺の体内に浸透していく。


 手のひらに触れられている部位から、冷たく心地の良い感覚が、指や足先まで広がっていった。


「肋骨、四箇所骨折。脛骨に亀裂。ふくらはぎと両腕の上腕は筋断裂……加えて、打撲と擦過傷が全身に多数。それに――魔力欠乏の症状も見られますね。意識を保てているだけで、不思議なくらいです」


 ――すごい。


 今の数秒で、俺の身体状況をそこまで詳細に把握したのか。


「続いて治療に入ります。清き水よ、我が意に応え――かの者を癒やせ」


 体内を巡る水が、うにょうにょと蠢いているのがわかる。


 少し、不思議な感覚だ。


 そう思っていると、息をするたびに走っていた激痛が――体の各部位から、少しずつ和らいでいく。


 打撲や裂傷も、弾力を帯びた水に包まれるようにして――痛みが、消えていった。


「すごい……治った?」


 驚きのあまり、そう漏らしてしまう。


「いえ、全然治っていません。応急処置の域を出ていません。私の魔力でしばらくは効果が続きますが――今は、絶対安静ですよ」


 彼女は、釘を刺すように俺に言った。


「ありがとうございます! えっと……アスリッタさん?」


「はい、初めまして。アスリッタと申します。詳しいご挨拶は後ほど。状況を」


「そうだ! 父さん! アスリッタさん、父さんの腹が! あの悪魔に……!」


 アスリッタさんは瞬時に、予断を許さない状況だと察知し――おじいちゃんにアイコンタクトを送る。


「頼んだ」


 おじいちゃんは、表情を変えることなく――その場を離れる許可を、即座に与えた。


「わかりました。そこへ行きましょう。私が担ぎますので、案内を」


 そう言うと、アスリッタさんに抱えられるようにして、その場を離れた。


 遠ざかっていく、おじいちゃんと――大剣を背負ったもう一人の男の人。


 あの人も、アスリッタさんと同じく――じいちゃんの部下なのだろう。


「エルくん、案内を!」


「あっちです!」


 俺たちは、父さんの元へと向かった。


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― 新着の感想 ―
キター真打ち登場ヾ(´∀`*)ノ
よかったぁ〜 皆が無事でいて欲しい 家族、爺ちゃんも含めて。 亡くなる物語多いけど、亡くなってほしくないんよ
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