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96/152

96話

 魔力を、衣のようなイメージで纏う。


 二枚目を羽織る――累纏・弐。


 そして三枚目。


 累纏・参。


 累纏は、じいちゃんやジーンおばあちゃんが使う魔力による身体強化とは、根本的にアプローチが異なる。


 通常の身体強化は、魔力を増やせば強化量もそれに比例して上がっていく。


 だが累纏は、衣を重ねるという特性上――強化量が、倍加する。


 累纏・弐で、二倍。


 累纏・参で、さらにその倍。


 強化倍率は、約四倍。


 感覚が、鋭敏になる。視界が明瞭になり、時間の流れがゆっくりと感じられる。


 今なら、舞い散る砂埃の粒子さえ箸でつまめそうだ。


 ――もう一段階。


 ここまでは、技術的に難しくはない。


 累纏・弐の延長に過ぎないから。


 集中力は跳ね上がるが、すでに訓練は済んでいる。


 ――問題は、ここからだ。


 さらに、羽織る魔力を編む。そしてその魔力を、属性変換する。


 バチバチと、魔力が放電音を立て始めた。


 それを、纏う。


 累纏・雷神。


 ――できた!


 身体中から、放電が迸る。


 だが、これは長くは持たない。頭が、パンクしそうだ。


「もう終わったー?」


 悪魔が、巨体をくねくねと揺らしながら、のんびりとこちらへ歩いてくる。


 ――油断している隙に、仕留める。


 親指で、地面を蹴った。


 景色が、ぐにゃりと歪む。自分自身が、雷そのものになったような感覚。


 バチッという放電音と共に、悪魔の右側頭部を蹴り飛ばした。


 無防備だった巨体が、数メートル吹き飛ぶ。




 しかし悪魔は左腕でガードし――その勢いを、かろうじて受け止めてみせた。


 俺の攻撃は、止まらない。


 駆け抜けた軌跡に、電光が走る。


 飛んだ先に先回りし、両手で頭部を殴打する。


 悪魔は、頭から地面にめり込んだ。


 ――まだだ!


 天から振り下ろされる、神の鉄槌。


神の鉄槌(トールハンマー)!」


 この雷の衣を纏っている状態の、最大のメリット。


 本来なら不可能だったはずの、身体強化状態での高難度魔法の行使。


 属性変換の手間を、限りなく排除できるからこその芸当だ。


 大量の雷が、悪魔めがけて集中的に降り注ぐ。


 数キロ先にまで届く、雷鳴の嵐。


 目を覆うほどの、眩い雷光。


 その破壊力は――ただの人間だと、肉の一片すら残すことを許さない。


 ――これが、俺の限界。


 構想段階の大技とトールハンマー。


 魔力は、あと少ししか残っていない。


 ――頼む、これで終わりにしてくれ。


 ――もう、立たないでくれ。


 雷の雨が止むと、悪魔がいた場所には跡形もなかった。


 技名の通り、巨大なハンマーで何度も大地を叩き潰されたような有様だ。砂は融解し、ところどころ硝子になっている。


 ――悪魔の姿は、ない。


 勝った、のか?


 これだけの高火力だ。肉片一つ残らなくても、不思議はない。


 ふと、急いで背後を振り返る。


 だが、そこにも悪魔の姿はなかった。


「流石に、終わり……か?」


 累纏・雷神の魔力消費は激しく、あと一分ほどで底をつく。


 ――ギリギリだった。


 身体強化を切ろうとした、その瞬間。


 足元が、爆ぜた。


 急いで、半歩飛び退く。


 土まみれの顔が、地面から飛び出してきた。満面の笑みを浮かべて。


「あはははははは! あなた大好きよ! 素晴らしいわ!」


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― 新着の感想 ―
爺ちゃんが来てくれないとこの人?は滅せないのかなぁ 汗 それとも見逃しで宿敵になるのかな? (嫌だなぁ〜強いし)
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