95話
危なかった。あと一瞬、サンダーガンが遅れていれば、悪魔は倒れたジーンおばあちゃんの息の根を止めていただろう。
放った一撃はあっさりと避けられたが、それでいい。狙いは、ジーンおばあちゃんを救うことだけだった。
――チェーンバレット。
当たるまで、撃ち続ける。
累纏を発動したまま、何十発と連射する。雷鳴が、絶え間なく轟く。
だが、その全弾を、悪魔は軽々と躱してみせた。
「ふふふ! それ、ユニーク属性ね? 雷ってとこかしら?」
声は、背後から聞こえた。
親指で地面を蹴り、素早く反転して距離を取る。
また、これだ。さっきと同じ。気づけば、もう背後に回り込まれている。
「だったら、何だってんだよ」
「ふふふ。そう邪険にしないでよ。あなたのこと好きなのよ。だからギリギリまで仲良くし・た・い・の」
「だから、良いこと教えてあげるわ」
悪魔は、太くゴツゴツした人差し指を自分の唇に押し当てて言った。
「あなたと一緒よ」
ーー一緒?一体どう言う意味だ?
「悪魔はね。みんな、人間で言うユニーク属性を一つ持っているのよ。ふふ」
――ユニーク属性を。
動揺を押し殺しながら、サンダーガンを連射する。だが、当たらない。
「あなた、その歳でこれだけの魔法を使いこなすなんて、本当に面白いわ。ここで殺すのは、勿体無い……」
そう言いながらも、悪魔は涼しい顔でサンダーガンをすべて躱していく。
「……うーん。どうしましょうかね」
迫り狂う雷撃を避けながら、顎に指を当て、何やら考え込む。
「うん。やっぱり今日殺そう。私、好きなものって最初に食べちゃうタイプだから」
姿が、また消える。
背後からの殴打に、今度はまったく気づけなかった。
十数メートル吹っ飛び、地面を転がって、ようやく止まる。
――次元が、違う。
「げほっげほ!」
口から血を吐く。肋が、何本か折れたらしい。
痛む脇腹を押さえながら、立ち上がった。
悪魔は、猫が鼠をいたぶるように、楽しげにこちらへ歩いてくる。
「ああ、楽しいわ。村を背負って戦う、将来有望な神童。それを無慈悲に殺す、わたし。はあぁん」
あいつにとって、これはただの娯楽に過ぎない。
――死ぬ。
父さんも。母さんも。村のみんなも。全員、殺される。
どうせ死ぬなら、やれることを全部やって死のう。
まだ構想段階だったけれど。
幸い、相手は油断している。魔力を編む時間くらいは、稼げるはずだ。
――やってやる。
この世界では、もう悔いは残したくない。
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