85話
浜辺、投擲部隊。
「みんな、行くよ! 攻撃開始!」
シグネさんは、号令と同時に――「よいしょーっ」と、拳大の石を投げつけた。
石は、鉄砲――いや、ミサイルのように一直線に飛んでいき、帆船を貫通した。
……すごすぎる。
コントロールもさることながら、あの頑丈な船底を、あっさりと貫いていった。
今頃、あの船は――船内に水が大量に流れ込んで、大変な騒ぎになっているだろう。
次々と、婦人たちの無慈悲な弾頭が、発射されていく。
自分で立てた作戦とはいえ――とんでもないな。
雨のように降り注ぐ、石の砲弾。
すでに、何隻かが――沈み始めていた。
少年たちも、負けていない。
俺が教えた布のスリングを活用し、隊列を組んで、弾幕に切れ目ができないよう工夫しているようだ。
身体強化で、すでに大人以上の筋力を得ている彼らが、そこにさらに――遠心力を味方につけている。
おかげで、とてつもない威力を引き出すことに成功していた。
彼らの攻撃も、次々と船体を打ち砕いていく。
「みんな、いい調子だよ! この調子で、全部沈めるよ!」
「おーう!」
――順調すぎるくらいの、滑り出しだ。
「シグネさん! 俺は配置につきます! あとは、お願いします! くれぐれも――この浜辺には、近寄らせないでください!」
「わかったよ! 任せな!」
この浜辺には、女性や子供たち、そして戦闘に参加できない老人たちの――避難場所もある。
だから、ここにさえ近づかせなければ、それでいい。
海流の関係で、この場所には船でしか辿り着けない。
だけど、これだけの投擲攻撃を浴びせれば、まず辿り着けはしないだろう。
――これでいい。
あれだけの痛手を負った状態で、取れる手段は限られている。
予定通りだ。
◆
俺は、累纏を発動し――最後の砦の位置へと、急行した。
「エル!」
すでに配置についていたギンが、真っ先に声を上げる。
それに合わせて、他の面々も、次々とこちらへ集まってきた。
「浜辺は、どうだ?」
「順調だよ! シグネさんたち、頑張ってる!」
それを聞いて、皆が――一様に、安堵の表情を浮かべた。
「こっちの首尾は、どうですか?」
「槍部隊は、すでに配置についている。いつ来ても、問題ない」
答えたのは、ハラルドさんだった。
「わかりました。あと二十分から三十分ほどで、敵が来ると思います」
「わかった。伝えておこう」
「ジーンおばあちゃん!!」
「ここだよ」
奥のほうから、ジーンおばあちゃんの声が返ってくる。
「ジーンおばあちゃん。今のところ、作戦通り。もう少しで、雑木林の中に入ってくるはず」
「わかったよ」
ジーンおばあちゃんには、事前に打ち合わせておいた作戦を――ここで、実行してもらう。
「派手に、やればいいんだね」
にやっと、笑う。
「これでもかってくらいね」
俺は笑って、そう返した。
いつもお読みいただきありがとうございます。
「続きが気になるな」と少しでも思っていただけましたら、
ブックマークや☆での応援をいただけると、執筆の大きな励みになります。




