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84/152

84話

開戦!


ここまで読んでいただき本当にありがとうございます。


ブックマーク、ページ下部の星タップをお願いします。







 沖合、二百メートル付近。


 ヴァイキングの船団は村へと、進み続けていた。


「頭目。このままいけば、あと三十分ほどで村の西側の、あの浜辺に到着できるかと思いやす」


 村の東側は、岩礁地帯になっている。船をつけるには、都合が悪い。

 だから、狙うのは西側――のはずなのだが。


「この距離にしちゃ、意外と時間がかかるんだな」


 ボブロンが、そう零す。


「へえ。浅瀬に近づくにつれて、潮の流れが強くなってきてるみてぇで。西側に回るのに、少し手間がかかっておりやす」


「わかった。全員に急ぐよう伝えろ。連中が、いびきをかいてる間に――襲いたいからな」


「わかりやした!」


 ――その時だった。


 木材が、粉砕されたような衝撃音。


「なんだ! 今の音は!?」


 ボブロンが、声を荒げる。


「ビョルナングの船のようです! 何が起きたかは……足場でも、踏み抜いたんですかね?」


「足場を踏み抜いたくらいで、あんな音が鳴るか! 今のは――何かが、爆ぜたような音だったぞ」


 その直後。


 もう一発。


 ――バコン!


 今度は、帆を貫いた。


 その後も、次々と――何かが、船団を襲う。


 バコン! ドゴン! バコン! バキ! バコン!


 音が鳴るたび、船に穴が空き、マストが折れる。


「うがああああ!!」


「いでええ!!!」


 ――何かが、飛来している。


 しかも、それは人間にも容赦なく襲いかかり、いともたやすく体を貫いていく。


「お頭!! 各船、何かに襲われています!! うわ!!」


 手下の足元にも、何かが撃ち込まれる。足場が砕け、船底まで貫通していった。


 そこら中の船から、悲鳴が響き渡る。船団は、瞬く間に――大混乱に陥っていた。


 何だ。一体、何が起こっている。


 ボブロンは、顔を歪め、怒りを剥き出しにする。


 ――襲撃? 一体、どこから?


 凄まじい速度で飛来する、何か。


 混乱の最中、それはボブロンの額めがけて――一直線に、飛んできた。


 だが、獣めいた直感が――寸前で、それを察知する。


 巨大な斧を、振るう。


 弾かれたそれは、勢いを失い――足元に、ごとりと転がった。


 拾い上げる。


「……何だこれ。ただの、石……だと?」


 ボブロンの額に、青筋が浮かび上がる。


 握った拳の中で、石は――あっさりと、砕け散った。


「頭目!! 見てください! これ、全部――あの浜辺から、投げられてます!」


 ――今、何と言った。


 投げられている?


「おい! こんな時に、ふざけてる場合じゃねえだろ! 浜辺から、まだ二百メートルはあるんだぞ!」


「とにかく、見てください!!」


 ボブロンは、目を細めながら――手下が指し示す海岸へと、視線を向けた。


 そこには、大量に積み上げられた石。


 そして、それを次から次へと投げつける女たち。加えて、布のようなものを使い、投擲している子供たち。


 自分の目を、疑った。


 目の前の光景を、受け入れるまでに――しばしの時間を要した。


「頭目!!」


「くそ!! 見えたよ! ありえねえだろ!! どうなってんだ、この村は!! 全員、とにかく陸に上がるぞ!」


「西側への到着は――すでに、困難です! 船もかなり損傷していますし、何より、あの投擲が止みません!」


「そんなことは、わかってる!」


「東側は岩礁地帯ですが……泳げば、辿り着けないことはありません!」


 それは、実質――船を捨てる、ということだった。


 ――くそ。これだけの船を揃えるのに、一体どれだけの金と時間をかけたと思っている。


 だが、背に腹は代えられない。


「だああ! くそ!! できる限り陸に近いところまで船で行き、そこから先は――各自、泳いで岸までたどり着け! 村の東側だ! 雑木林の前で、落ち合うぞ!」


 ボブロンは、張り裂けんばかりの大声で、全船へとその号令を飛ばした。


 まだ初冬とはいえ、海の水温は低い。

 突き刺すような冷たさが、瞬く間に体の自由を奪っていく。


 いくらヴァイキングといえど、長時間の海中移動は――できれば、避けたい。


 いくつかの船は、すでに沈み始めていた。


 負傷者も、かなりの数にのぼる。


 一秒ごとに、その数が――増えていく。


 手数が、多すぎる。


 また一つ、自分を襲った石を――斧で、叩き割る。


「ちくしょう!! くそ! くそ! くそ!! こんなところで、なんて様だ!!」


 ボブロンは煮えたぎる溶岩のように怒り狂った。


「あの女子供どもめ……! 生かしたまま、皮を剥いでやる……!!」


 そうして、ヴァイキングたちは雨のように降り注ぐ凶弾に晒されながら――村の東側を、目指し始めた。


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― 新着の感想 ―
船を捨てた段階でこの冬略奪品を持ち帰るのが困難になる。全兵力を持って出た訳じゃないだろうし、非戦闘民も残ってるだろうけど、彼らが困るのは近隣の報復を受ける来年冬かな
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