80話
続いて、槍部隊。
こちらは、もはや――恐ろしい仕上がりになっていた。
前世で得た知識に、こんなものがある。
長槍を持たせれば、農民でも――短期間の訓練で、剣を扱う戦士に匹敵する兵士になる、というものだ。
それが、今回は。
前世のオリンピア選手が裸足で逃げ出すレベルの、身体能力を持った村人たちに、置き換わる。
――とんでもない話だ。
自警団の主導のもと、槍の型訓練が行われている。
突き。引く。
その動作があまりに速すぎて、ところどころ――穂先の軌跡すら、見えなくなっていた。
このレベルの槍が、何十本も一斉に襲いかかってきたら。
もはや、逃げる以外の選択肢はないだろう。
そして――槍本体ついても、進展があった。
身体強化で強化された筋力に対して、木製の槍では、正直心許ない部分があったのだが。
ジーンおばあちゃんが、なんと――土属性の魔法で地中の鉱物をかき集め、それを火で鍛造した、鉄製の槍を人数分、まるごと用意してくれたのだ。
「久々に、疲れたよ……」
そう零して嘆いていたが――さすがは、万象の魔女。伊達に、その二つ名を背負っていない。
これで、槍部隊――五十名。
もう、何も問題なさそうだ。
ついでに言えば、この雑木林の中にも――大きな細工を、施す予定だ。
……本当に、ヴァイキングたちには、同情する。
ただ、搾取するだけの――何の変哲もない村のはずだったのに。
◆
もちろん、最後の砦――遊撃隊のメンバーの訓練も、抜かりなく行っている。
俺自身は、今使える魔法の習熟度を上げつつ、新しい魔法の開発にも重点的に取り組んでいる。
作戦のために一つどうしても覚えておきたい魔法があるのだ。
もちろん、じいちゃんとの実戦訓練も、変わらず継続中だ。
最近では――シグルとエイリクも、じいちゃんの訓練に加わるようになった。
二人とも、じいちゃん相手に、真剣な表情で模擬戦を繰り広げている。
そして――父さん、村長、グンナルさん、ハラルドさんの四人は、別で集まって訓練をしているらしい。
気になって、じいちゃんに少し聞いてみた。
「なあ、父さんって、実際どれくらい強いの?」
「ん? ウェールズか? ありゃ、かなりのもんじゃぞ」
――かなりのもの?
「テュール祭も、前回の優勝はウェールズじゃったしのう」
……全然、知らなかった。
いつも通り漁に出て、いつも通り疲れた顔で帰ってくる、あの父さんが。
「ちなみに、ウェールズは――身体強化が、元から身についとった口じゃな」
それも、初耳だった。
じいちゃんも、確か――同じタイプだったはずだ。
……もしかして、遺伝か何か、関係あるんだろうか。
だとしたら、俺のこの規格外な成長も、あながち努力だけの結果じゃないのかもしれない。
どうやら、あの四人の訓練は――父さん主導で進んでいるらしい。
じいちゃんが「問題ない」と太鼓判を押すのだから、きっと、本当に問題ないのだろう。
遠距離、中距離、そして最後の砦。
三段構えの布陣は、確かな厚みを増しながら――当日に向けて、仕上がりつつあった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
「続きが気になるな」と少しでも思っていただけましたら、
ブックマークや☆での応援をいただけると、執筆の大きな励みになります。




