↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
74/150

74話

 テュール祭は、滞りなく進行した。


 決勝は――俺と、エイリク。


 結果、優勝は、俺のものとなった。


 途中で棄権することも、考えてはいたが――ギンの面子を考えると、それはできなかった。


 試合が終わるや否や、多くの村人たちが、俺の周りに詰めかけてくる。根掘り葉掘りと、次から次へと質問が飛んできた。


 俺は、それに一つひとつ丁寧に答えながら――同時に、ジーンおばあちゃんの祈祷の宣伝にも、抜かりなく注力しておいた。


 その甲斐あってか。


 その日のうちに、ジーンおばあちゃんの家には、祈祷の依頼が殺到する事態となった。結果、明日からは予約制で、一日十人ずつ請け負うことになったらしい。


 ――明日からも、また忙しくなるな。


 そして、ギン。


 あの後しばらくして、無事に目を覚ましたと聞いた。


 ……けれど、俺は、ちょっと気まずくて、まだ会いに行けていない。


 勝者が、敗者に――一体、何と声をかければいいというのか。



 ◆



 祭りが終わり、俺は、そのまま家へと帰った。


 すると――居間には、母のサイサと、父のウェールズが。


 二人揃って、やけに神妙な面持ちで、きっちりと正座をしていた。


「エル。……そこに、座りなさい」


 俺は、その言葉に、大人しく従う。


 ――ついに、この時が、来たか。


 祭りに出て、宣伝までしてしまうと決めた時から――こうなることは、わかっていた。父さんや母さんにも、当然、知られることになる。


「テュール祭、見たぞ」


「う、うん……」


 ウェールズが、低く、静かな声でそう切り出した。


「どうして、ママたちに言ってくれなかったの……?」


 サイサが、今にも泣き出しそうな顔で、そう続ける。


「そうだ。エル。……どうして、出場することを、言わなかった」


「……ごめんなさい」


 俺は、素直に頭を下げた。


 けれど――謝罪一つで、二人の溜飲が下がる様子は、まるでない。


 ……何て説明すればいいんだ。いや、そもそも――どこから、説明すればいい。


 いっそのこと、全部話してしまうか。


 いや。それをすれば、きっと――もっと二人を、悲しませることになる。


 俺が、次の言葉に詰まっていると。


「――出場するって、知ってたら」


 サイサが、ぽつりと口を開いた。


「ママ、もっと、もーっと、やりたいことが、たくさんあったのに……!」


 ――ん?


 その言葉に、ウェールズも、うんうんと大きく頷いている。


「垂れ幕だとか、団扇だとか……作って、エルのこと、応援したかったわ……!」


「村を出ている親戚連中も、全員、呼び寄せなきゃいかんかったしな」


「……ちょっと、待って?」


 俺は、思わず、二人の顔を見比べた。


「僕が、勝手に試合に出たこと――怒ってるんじゃ、ないの……?」


「怒ってるわよ?」


 サイサが、頬を膨らませる。


「私、エルの試合、見られなかったのよ? だから、せめて――応援くらいは、したかったわ」


 ウェールズも、うんうんと、深く頷いた。


 ――俺は、しばし、言葉を失った。


 ……あれ? これ、俺が想像してた「叱られる展開」と、なんか、違くない……?


 結局――次回からは、必ず事前に言うこと。


 その約束を取り付けて、その場はお開きとなった。


 ――この二人って。もしかして、ちょっと、ズレてるのかな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。