71話
会場を出ると、俺の周りにはあっという間に、人だかりができた。
「おい! 坊主! あれはどうやったんだ?」
「なんでそんなに強いんだ?」
「普段、何を食ってる?」
「親は誰だ?」
「俺の金をどうしてくれる!?」
よしよし。みんな、注目してくれているようだ。
……最後のは、知ったことか。
「ジーンおばあちゃんのところで、祈祷をしてもらったんだ! なんか、それで体が強くなったんだよ! ほら、こんなふうに」
いい宣伝の機会だと思い――俺は大きく跳躍し、人だかりをひとっ飛びに飛び越える。くるくると回転しながら着地し、振り返った。
「ね!」
呆気に取られる、人だかり。
一拍置いて――どっと、騒ぎ出した。
「すげー! ジーンって、予言師のジーンさんだろ? そんなことできたのか!」
「そういえば、うちの母ちゃんも最近ジーンさん家に通い詰めて、何かやってるぞ! それも、何か関係があるのかも!」
「それ、うちもだ! うちは付きっきりの世話が必要だったばあちゃんまで、先週からまた歩けるようになって大騒ぎしてたんだ!」
その話題で、あっという間に持ちきりになった。
これで噂はまたたく間に広まり――ジーンおばあちゃんの家には、人が殺到するだろう。
そう思っていると――試合場のほうで、大きな歓声が再び上がった。
開始早々、対戦相手の大人を手刀で意識を刈り取った――ギンへの、歓声だった。
「おい、今年は一体全体どうなってるんだ!」
「子供が……子供が、優勝しちまうんじゃないのか!?」
「俺の金が……」
「おい、賭け直しだ! さっきの子供に、全額入れ直す!」
観客のほうも、出場している子供たちがただ者じゃないと確信したらしい。
賭け屋も、賭け直しを求める客が殺到し――てんやわんやになっていた。
「ギンお兄ちゃん! バッチリだね!」
試合場を後にしたギンに、駆け寄って労う。
「お……おう!」
「どうしたの? どこか怪我でもした?」
「いやいや。怪我なんて、何もしてない。すぐに終わったし……」
「なんていうか……俺って、本当に強くなってるんだな。あんなでかい大人に、簡単に勝てるなんて……」
「ふふ、そうだね。言われてみれば確かに。――じいちゃんに毎日コテンパンにされてるから、実感が湧いてなかったもんね」
「でも、これもギンお兄ちゃんの、血のにじむような努力の賜物だと思うよ!」
ギンは、それを聞くと――照れくさそうに頭を掻き、「そうだな」と笑った。
そうして、次々に試合は進んでいく。
エランギルンのメンバーは、全員が圧倒的な勝利を収め――目的だった"宣伝"としても、十分すぎる成果が見られた。
第二回戦も、同じ日に開催された。
俺としては――もう、十分な宣伝効果はあったと思っていた。
だから、ここから先は、負けてもいいかな。
……なんて、試合前にそう考えていると。
「エル」
ギンから、声をかけられた。
ちょうどいい。降参するつもりだと、伝えようとする。
「あ、ギンお兄ちゃん。次の試合さ……」
「――次の試合、本気でやってくれないか」
「え?」
ギンは、真剣な表情をしていた。
次回!ギンVSエル




