69話
村は、賑わっていた。
テュール祭は前夜祭からすでに始まっており、屋台や酒が――至るところで、飲み放題食べ放題になっている。
焼いた肉の匂いと、酒の匂い。あちこちで、呑んだくれたちがはしゃぐ声。
そして、これから――メインの出し物が始まる。
男たちの威厳をかけた、戦いが。
「何ー? 子供が五人も参加するだと? ぶっはっはっは! そりゃいいや!」
「誰に賭ける? ガキに賭けたら、大金持ちだぞ」
「っは! そんな金をドブに捨てるような真似する、アホはおらんだろ!」
「ちげーねー!」
そんな会話が、至るところから聞こえてくる。
もちろん賭けも行われており、見る側の熱気も、最高潮に達していた。
俺たちは、試合開始前――円陣を組むように、集まっていた。
「よし。俺たちの今日の目標は? シグルくん!」
「ん? えっと、あれだろ? 俺たちがめっちゃ強くなってることを、見せつけるんだろ?」
シグルが、あっさりと答えた。
「そう! 要は宣伝なのです! 俺たちの身体強化を広めるため、大人たちに注目をしてもらわないといけません!」
「なので――どうすればいいですか? ギンくん!」
「あ、あー。……派手に、勝つ?」
「その通り! なるべく力の差を見せつけるように! それが一番の宣伝になります。みなさん、いいですか?」
皆が、一様に返事を返す。
――なんだか緊張して、いつもは使わない敬語になってしまった。
「エル、なんか言葉遣いが気持ち悪いわよ!」
――ランに、そう言われてしまった。
まあ、いい。切り替えていこう。
すでに、対戦表は公開されている。
試合形式は、トーナメント戦。
そして――対戦カードの組み分けには、おそらく運営側の意思が反映されている。
見事なまでに、子供たちは一回戦全員が、大人との対戦に配置されていたからだ。
こちらとしては、好都合だ。
初戦から、仲間同士で潰し合う――なんて事態は、避けられそうだった。
そして、俺の出番は――第二試合目。
しかも相手は、自警団所属――若手筆頭と噂の、グンナルだという。
――何から何まで、都合がいい。
速攻で、力の差を見せつけよう。
そのまま、優勝までさせてもらうとしよう。
こういう大会なんて、もちろん前世でも一度も出たことがない。
楽しみだ。緊張するけど――それも含めて、悪くない。
そうして――第一試合が、幕を開けた。




