68話
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じいちゃんとの、いつもの訓練場所。
地面は、穴ぼこだらけだ。
俺たち三人は、じいちゃんの教え通り――親指の訓練を、繰り返した。
来る日も、来る日も。
何度も親指の皮が破れ、治りかけては、また破れる。
そうしているうちに、徐々に――皮膚が、固くなり始めてきた。
そのかいあってか、模擬戦も、様子が変わってきていた。
地面を蹴る。地面から離れる、その瞬間に――親指で押し込む。
すると、まるで上空から鉄球でも落ちてきたかのような、陥没痕ができる。
その驚異的なスピードに、景色がぐにゃりと歪む。あっという間に――じいちゃんの、顔の目の前まで到達する。
その勢いをそのまま乗せて、回し蹴りを放つ。
しかし、じいちゃんは――寸前で上体をそらし、あっさりと回避する。
そこにギンが、絶妙なタイミングで接近し――じいちゃんの左足に、タックルを仕掛けた。
「ぬおおおう!」
さすがのじいちゃんも、あのタイミングで避けきるのは不可能だった。
転倒するまでには至らずも、バランスを保とうと――体勢が崩れる。
そこへ――ランお姉ちゃんが、上空から脳天めがけて蹴りを放つ。
しかし。
「どこかで、見た連携じゃのう」
ジークは、少年のような笑みを浮かべた。
ギンが、渾身の力で――じいちゃんの左足に、しがみついている。
じいちゃんは、その左足を、ギンもろとも振り上げた。
「え? うおああああ!」
「え、ちょっ、ギン!」
ランとギンは、宙で交錯した。
「ガッハッハ! 未熟、未熟!」
――突如、走る閃光。
背中に、強烈な衝撃。全身を貫く痺れが、身体を支配する。
ジークは、思わず――地面に手をついた。
遅れて、轟く雷鳴。
――サンダーガン。
背後から距離を取り、タイミングを見計らっていたエルが――笑みを浮かべながら、そう言った。
――
「今日は、わしの負けじゃな。三人とも、よくやった。強くなった」
俺たちは、初めて――じいちゃんに、模擬戦で地面に手をつかせた。
ここまで、長かった。
思い出すのは、親指の特訓ばかりだ。というか、模擬戦以外は――ほぼそれしかしていない。
辛かった。
親指で立つ。その次は、親指だけで跳躍する。その次は、親指だけを使って走る。
今更だが――これ、児童がやることじゃない。
前世だったら、大炎上しているに違いない。
だが、その甲斐あってか――機動力は、爆発的に向上した。
【名前】エル
【レベル】4
【力】78(+7)
【器用】64(+10)
【敏捷】95(+30)
【知能】65(+5)
【魔力】201(+11)
【運】10
【魔法】身体強化、雷魔法
【スキル】魔力操作、魔力同調、サムマスター(NEW)
そして。
――変なスキルが、生えた。
サムマスター。サムは、親指。親指先生、といったところか。
何だそれ。
先の模擬戦で見せたような、親指を起点にした移動速度の強化や攻撃力アップは――このスキルのおかげなのだろう。
ランとギンのステータスも、久しぶりに確認した。
【名前】ギン
【レベル】8
【力】68(+55)
【器用】42(+32)
【敏捷】61(+52)
【知能】14(+5)
【魔力】35(+27)
【運】4
【魔法】身体強化(NEW)
【スキル】サムマスター(NEW)
【名前】ラン
【レベル】8
【力】35(+27)
【器用】48(+37)
【敏捷】55(+46)
【知能】22(+12)
【魔力】68(+41)
【運】4
【魔法】身体強化(NEW)、光魔法(NEW)
【スキル】予知夢、サムマスター(NEW)
二人とも、ものすごい成長ぶりだ。
特にギンは、じいちゃんとのマンツーマン訓練で――体術面の伸びが著しい。
そしてランお姉ちゃんは、光魔法を一つ習得していた。発動までは時間がかかるし、まだ初級のライトボールだけだが――それでも、魔法は魔法だ。回復系の魔法を覚えるのも、時間の問題だろう。
さっき、じいちゃんに一泡吹かせられたのも――二人の成長あってこそ、なのは間違いない。
「三人とも、明日の試合に向けてはバッチリじゃな」
三人揃って、頷く。
――そう。テュール祭は、明日だ。
俺たちの目的は、とにかく勝ち上がって――大人たちの注目を集めることだ。
そして、それをジーンおばあちゃんの"祈祷"へと誘導する。
それがうまくいけば、村全員の身体強化の習得が――ほぼ完了する。
何としても、勝ち上がらなければ。
「あ、わかってると思うがエル。明日は、雷魔法は禁止じゃぞ。死人が出る」
「……わかってるよ。もちろん、最初から――そのつもりだった、から。……はは」
「そのリアクション、怖いからやめてくれ。我が孫ながら、将来が心配じゃわい」
いや……いつも、化け物じみたじいちゃんとしか戦ってないから、すっかり忘れていた。
あんなの、まともにぶっ放したら――人間なんて、簡単に貫通する。
じいちゃんが、おかしいだけだった。
明日はそう言うところも気をつけないと。




