56話
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翌日。
戦ごっこで負かした連中に伝えておいた、集合場所。
ランの家の前で、ランとギンの三人で待っていた。
「本当に、来るのかぁ?」
ギンが、あくびを噛み殺しながら言う。
「わかんない。でも、何人かは来ると思うけどなあ」
俺は、そう返した。
……実際のところ、十人くらいは来ると踏んでいる。
十歳前後の男子で、それも全員、あんな戦ごっこに本気で興じている連中だ。「強くなれる」と聞いて、試さずにいられるはずがない。
――なのに。
集合時間になっても、誰も来ない。
……見誤ったか?
もしかして、ギンが圧倒的すぎて、怖がられているんだろうか。
「な……なんだよ」
気づけば、無意識にギンを見つめてしまっていた。
いや、いや。
こうなるように仕向けたのは、俺だ。ギンのせいにするのは、お門違いというものだろう。
……とはいえ、このまま誰も来ないなら、計画の練り直しが必要になる。
「あ! エル! 来たわよ!」
ランが、嬉しそうに声を上げた。
「え? どこ?」
振り返ると、前方から――丸刈りの少年を先頭に、ぞろぞろと歩いてくる一団が見えた。
名前、なんだったっけ。
……そうだ、エイリクだ。丸刈りのエイリク。
「すまない。待たせた。全員集めるのに、時間がかかってな」
エイリクは、まっすぐギンのもとへ歩み寄ると、深々と頭を下げた。
「お、おう?」
ギンの顔には「なんで俺に言うんだ」と、書かれている。
「来てくれて、ありがとう!」
俺は、代わりにエイリクへと駆け寄って、歓迎の意を示した。
「なに言ってんだ。今日から、エランギルン軍なんだから――当たり前だろう」
エイリクはそう答えると、今度はギンのほうへ向き直り、居住まいを正した。
「改めて――我がトール軍、全十四名。本日をもって、エランギルン軍に帰順させていただきます」
――なるほど。
ギンも、ようやく合点がいったらしい。エイリクの、先ほどからのやけに畏まった態度の理由に。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。おれは、昨日の戦いで代表を名乗っただけで――エランギルン軍の頭目、ってわけじゃないんだが」
「お、そうなのか。じゃあ、誰なんだ?」
エイリクの問いに、ギンは答えに詰まり、助けを求めるように俺のほうを見た。
「うーん……一旦、ギンお兄ちゃんでいいんじゃないかな? ねえ、ランお姉ちゃんは、どう思う?」
「うん、私もそれでいいわよ。軍とか、よくわかんないし。私はどっちでもいいー」
ギンは、予想外の結論に戸惑っている様子だった。
だが――エイリクや、その仲間たちのほうへ目をやると。
みんな一様に、期待と憧れの入り混じった目でギンのことを見つめている。
……よほど、昨日のあの活躍に感化されたらしい。
「じゃあ、ギンお兄ちゃん。簡単に、意気込みを」
俺が促すと、エイリクたちの間に、ギンの言葉を待つ空気が満ちた。
「……はあ。わかった」
ギンは、一つ大きく息をついてから、口を開く。
「今日から、エランギルン軍の――一時的に、頭目を務める、ギンだ。今日からよろしく頼む。……一時的、だからな。落ち着いたら、改めて誰が頭目になるべきか、決め直すからな」
――どっ、と。
エイリクたちの間から、拍手が沸き起こった。
それに対しギンはどこか照れくさそうに、頬を掻いた。




