55話
魔法の訓練を終えたあとは、じいちゃんの訓練に合流する。
いつもの岩場でランと落ち合うと――今日もまた、ギンが草の上に、ボロ雑巾のように転がっていた。
「お、来たか。ほれ、ギン! 休憩は終わりじゃ」
じいちゃんの声に、ギンが呻きながら、よろよろと体を起こす。
「じいちゃん、ギンにどんなこと教えてるの?」
「内緒じゃ」
じいちゃんは、にっこりと笑ってみせた。
「ギン兄ちゃん――」
「な、内緒だからな!」
……ふうん。気になるなあ。
今度、魔法の練習を早めに切り上げて、見に来てみようか。
そんなことを考えながら眺めていると。
「言わないからな!」
ギンは、そう言い残して、じいちゃんのほうへと駆けていった。
……まあ、いいか。
「よし、じゃー今日も、昨日と同じく――親指の訓練からじゃ。よーい、どん!」
地味で、辛い訓練が始まる。
親指一本だけで、立ち続ける。ランとギンは、揃って顔をしかめながら、それに耐えていた。
「ねえ、じいちゃん。お話、してもいい?」
「ん? なんじゃ?」
俺は、まだしばらくは余裕がある。
……せっかくだし、このじいさんについて、もっと知っておこうと思う。
「じいちゃんって、普段、何してるの?」
「ん? わしは、国王じゃぞ」
――え?
今、なんて言った。
国王?
「……こくおう?」
「ああ、知らんでも無理はないか。国王っちゅうのは――国の代表じゃな」
「意味は知ってる!」
……そうか。
以前、ジーンおばあちゃんが言い含んでいたのは――こういうことだったのか。
そりゃ、一国の主だなんて、子供相手だろうとそう気軽には言えないよな。
「わしは、長年――様々な戦場を渡り歩いてきてな」
じいちゃんは、遠くを見るような目で、ゆっくりと語り始めた。
「多くの敵を葬ったが……逆に、仲間も、どんどん増えていってのう。その家族まで、みんな自分の手で守ろうとしたら――もう、国を作るくらいしか、なかったんじゃよ」
「……国を、作ったの?」
「ちょうどその頃、"残虐王"と呼ばれとった――わるーい奴がおっての。そいつをどかして、国を貰ったんじゃ」
「そしたら、その国民も――わしを慕ってくれてのう。もっともっと、仲間が増えてしもうた。がっはっは!」
――大英雄じゃ、ねーかよ。
かっこよすぎるだろ。
「どんな、国なの?」
「わしが、嫌いなもんは――ぜんぶ、なくした。わしにとっては、いい国じゃ」
じいちゃんは、顎髭をさすりながら、誇らしそうにそう言った。
「……行ってみたい」
「もちろんじゃ! 連れてってやる! 楽しいぞ!」
――たぶん。
この人が王をやっている国なら、本当にいい国なんだろうな。
「でも――王様なのに、こんな長い時間、ここにいて大丈夫なの?」
ふと湧いた、何気ない疑問だった。
――だが。
じいちゃんは、わかりやすく動揺した。
「う、あ、うん。そ、そうじゃ。国王――だからな。大丈夫じゃ」
……これは。
何か、あるな?
まあなんにしても――先の楽しみが、また一つ増えた。
ヴァイキングの襲来を乗り切って――いつか、ランやギンとも一緒に、行けたらいいな。
――そうして。
やがて親指が悲鳴を上げ始めても、終了の時間まで――俺たちは、顔を歪ませながら、耐え抜いた。
(ステータス)
【名前】エル
【レベル】4
【力】66(+2)
【器用】44(+5)
【敏捷】62(+3)
【知能】55(+4)
【魔力】170(+9)
【運】10
【魔法】身体強化
【スキル】魔力操作、魔力同調
このたび、現在進行中のエピソードにおける主人公エルの年齢を、2歳から4歳に変更いたしました。
それに伴いギン、ランの年齢、及び三人のステータスが変更されています。
よろしくお願いいたします。
以下は9話に登場したギン、ランの初期ステータスです。
【名前】ギン
【レベル】8
【力】13
【器用】10
【敏捷】9
【知能】9
【魔力】8
【運】4
【名前】ラン
【レベル】8
【力】8
【器用】11
【敏捷】9
【知能】10
【魔力】27
【運】4




