53話
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魔力でイメージを造形する、か。
正直、造形自体はお手のものだった。雷のイメージも、この属性だとわかった時からずっと頭の中で温めてきたものだ。
空に一瞬だけ走る稲妻——短くも力強く、複雑な軌跡を描くあの光。それを、魔力の整形だけで再現する。
必要なのは緻密さと、魔力を走らせる速度。
……こんな感じか。
正面に向けて、稲妻を一閃させる。
悪くない。だが、まだ速度が足りない。
何度か試すうちに、感覚が掴めてきた。あとはこれを、途切れることなく連続して放てるようにすれば——
できた。
「ジーンばあちゃん、できた」
「はぁ? エル! あんたちょっと早すぎでしょ! おねえちゃんを置いていかないでよ!」
なぜかランがご立腹だが、知ったことではない。こっちは一刻も早く魔法を使いたいのだ。
「どれ、見せておくれ」
「え、ジーンおばあちゃん、魔力見えるの?」
「ああ。これはね、魔力視っていうんだよ。一応、世間じゃ特異体質扱いされてるけどね、魔力の扱いが上手くなれば自然と身につくもんさ。お師匠様の受け売りだけどね。私も後発的に身についた口だよ。エルもそのうち見えるようになるだろうさ。ほら、やってみせておくれ」
——魔力視。
今でも、魔力の大きさや形はなんとなく感覚でわかる。でもそれはあくまで感覚的なもので、たとえるならひどく眠い時に霞む視界のような、頼りない状態だ。だからきっと、相手の魔法発動のタイミングを察知することまではできない。
けれど魔力視があれば、それができるようになるかもしれない。
だとしたら、ぜひとも身につけたい能力だった。
魔力視のことを記憶のメモに書き留めてから、ジーンばあちゃんに魔力で作り上げた雷の造形を見せる。
複数の稲妻が、エルの手前数メートルの空間を断続的に走った。力強い龍を思わせるものや、細く鋭い刃物のような素早いものが入り乱れ、乱立する。
「……驚いたね。完璧以上だよ」
「やった」
その様子を見ていたランが、頬を膨らませた。
「えー! わたし、まだ全然できないんだけど!」
「当たり前だ。イメージの構築は魔法発動の起点だよ。そう簡単にできるもんじゃない。普通は苦労するもんさ。だからこそいろんな練習法があるんじゃが……エルには必要なさそうじゃな」
ジーンは呆れたようにそう言うと、明日から次の修行に進むよう告げた。
「エルだけずるい!」
「お前はまだまだイメージの構築ができてないだろう。それを早く終わらせるんだよ」
「でも、どうやればいいかわかんない。光のイメージって言われても、よくわかんないもん。ねぇ、どうするのか教えておばあちゃん」
ジーンはもう少し自分で考えるよう促したが、ランが頑として譲らないので、根負けした。
「わかった。じゃあ、イメージのコツというか、よく言われることを教えてやろう。自分にとって、その属性を表す象徴は何かを考えるんだよ」
「象徴?」
ランには、まだピンときていない様子だった。
「例えば私は、四属性それぞれに象徴となる生物を決めておる。火は不死鳥。水は鯨。風はドラゴン。土はゴーレム。……ランにとって、光とは何が象徴になる?」
ジーンはそう言って、ランに課題を与えた。ランは俄然やる気を取り戻したのか、ああでもないこうでもないと試行錯誤を再開する。
それにしても、象徴となるイメージ、か。
面白い。俺もやってみよう。
「ジーンおばあちゃん、それエルもやる」
——どんな鋭い剣でもびくともしない、きめ細やかな鱗。長い爪で空を悠々と舞い、雷を自在に操る、人外の中の人外。
龍。
その姿を、魔力で作り上げた。大きさはエルより一回り大きい程度。周囲には、激しい稲妻を纏うように、空中で静かに佇んでいる。
「ジーンおばあちゃん、できた」
「……なんじゃ、これは」
魔力視で見ていたジーンは、開いた口を閉じるのを忘れていた。
「もう! エル! もう何もしないで!」
ランが、またしても怒りの声を上げた。




