49話
ブックマーク、評価していただきありがとうございます。1pt1ptが励みとなっております。
引き続きよろしくお願いします。
評価は各話どこからでもできます。
1番下にスクロールしたところの⭐︎のマークです。
シグルは自身の目を疑っていた。
——村の爪弾き者。
——子供の輪にすら入れてもらえない存在。
——己よりも遥かに格下で、眼中にすら入らない相手。
——親子揃って救いようのない劣等人。
そのはずだった。
それなのに——。
「なんだ、これは……。一体、何が起こっている……?」
両軍が入り乱れる戦場のただ中で、縦横無尽に敵兵を無力化していく少年がいた。ギンだ。
——こんなに。
——おれは、こんなに強くなっていたのか!
ギンの胸には、これまで味わったことのない高揚感が渦を巻いていた。全能感にも似た興奮。相手の動きは、まるで泥沼の中でもがいているかのように鈍く映る。敵が木剣を一振りする間に、こちらは五発の攻撃を叩き込める。
——楽しい。
敵を打ち倒しては、糸を引くようにその場を離れ、別の場所でまた一人を沈める。それを繰り返すうちに、敵兵たちの間には次第に混乱の色が広がっていった。
「何がどうなってるんだ!」
「スチュートがやられた! そっちへ行ったぞ!?」
「どこだ、どこにいる——うわぁっ!」
怒号にも似た声が戦場のあちこちで飛び交う。混乱を煽るように、ギンはさらにギアを上げた。
後頭部へ一撃。
鳩尾へ一撃。
顎へ一撃。
次々と、機械のように正確に相手を沈めていく。
わざと敵が混乱するように倒していたのには理由がある。丘の上から強襲を仕掛けるはずのエルたちを、少しでも援護するためだ。
敵を打ち倒しながら、ちらりと丘の上へ視線を投げる。だが、エルたちが動き出す気配はまだない。
——そう思った、次の瞬間。
視界から敵の姿がふっと消えた。ギンは足元——いや、地面全体に目をやる。
——これ、全部おれがやったんだよな……。
六十人近い兵士たちが、うめき声を上げながら地面に転がっていた。その周囲には、形も様々な木剣や木盾が、まるで嵐の後のように散乱している。
残るは大将格の二人のみ。
ギンはゆっくりと視線を上げ、エイリクとシグルを見据えた。
「……とんでもない。こんなに強い年下がいたとは。信じられん……」
エイリクがそう呟いた——次の瞬間には、その体はすでに地面に沈んでいた。
「これでお前だけだな。——戦う前に言ってたこと、覚えてるよな?」
「なんの話だ! 俺は何も言っていない!」
「冗談だろ? まあ、割とおれはどうでもいいんだけどさ……」
戦う前に交わした言葉。
どちらが真実を語っているか——それは、この勝負の結果によって決まる。
勝敗は神々が定めるもの。
より正しき者が勝つ。
それがこの地に根付く掟であり、揺るがぬ理だ。
それを、自分から持ち出しておきながら。
負けそうになった途端、無かったことにしようとしている。
「いや——おれは別に、お前のことなんてどうでもいいんだよ。無かったことにしたけりゃ、それでもいい。けどよ……そんなこと言っちまって、本当に大丈夫なのか?」
そう言って、ギンは指を空へと向けた。
「神々——見てるよなあ? こんな不義理、普通に怒らねーもんなのかな」
シグルは指摘された内容に今気付いたのか、顔面は血の気が引いたように青白くなった。




