48話
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名乗りを上げたギンを、シグルが、あからさまに見下した目で眺めてくる。
値踏みするような視線で、エイリクはギンを、頭のてっぺんから足の先まで、ゆっくりと眺め回した。
――ふん、と、シグルが鼻を鳴らす。
「大将だぁ? お前が?」
「盗人の息子が、偉そうに大将気取りかよ」
――その一言に、ギンの肩が、びくりと強張った。
「……」
「ああ、そうか」
薄い笑みを浮かべながら続ける。
「あの連れ達には、言ってないのか?」
――シグルは、そのまま畳みかけた。
「村の備蓄金を持ち出して、トンズラした盗人野郎だって」
「……親父は、そんなことしてない」
ギンの声は、低く、それでいて、はっきりとしていた。
「へえー? じゃあ、なんで、どっかへ行っちまったんだ? 備蓄金は?」
「……誰かに、嵌められたんだ」
「ふっへっへ! またそれか!」
シグルが、腹を抱えるようにして笑った。
「久々に聞いても、やっぱり面白いぜ。どうあっても、父親は罪を犯してないって思い込みたいらしいな」
そう言って、シグルはひとしきり笑ったあと、ふっと目を細めた。
「いいぜー。じゃあ――この戦いで、どっちが楽しいか、わかるなぁ?」
そう言い残すと、シグルは木剣を肩に担ぎ、自陣へと戻っていく。
「ギン」
最後まで残っていたエイリクが、静かに口を開いた。
「おれは、詳しい事情は知らん。あいつの言うことが、全部真実だとも思わん」
――その声には、意外にも、嘲りの色はなかった。
「だが――あいつの言うことに、一つだけ同意する」
エイリクは、まっすぐにギンを見据えて、言い放つ。
「勝者が、正義。勝ったものが、正しい。これは――絶対だ」
そう言い残し、エイリクもまた、自陣へと戻っていった。
ギンも、丘の上へと戻ってくる。
先ほどの会話の内容を、俺たちに共有した。――もちろん、一部は伏せながら。
「エランギルン軍かぁ。悪くないね!」
ランが、腕を組んで満足げに頷く。
「そう? なんだか、ゴツゴツしてそうで、可愛くない」
俺は、正直な感想を漏らした。
――そうしていると。
ドン、ドン、ドン。
戦の始まりを告げる太鼓が、平原に鳴り響いた。
両軍が、一斉に動き出す。
「おい、始まったぞ! ……つか、こっちに向かってきてねぇか!?」
ギンが、声を上ずらせる。
どうやら、両軍――まずはこの丘を取りに来るらしい。
開始位置は、人数差もあって俺たちに譲ってくれた形になっていたが……どうせ、すぐに全滅するだろう、という算段だったのだろう。
「じゃ、ギンお兄ちゃん。作戦通りで」
「本当に、やんのかよ、あれ……ったく! もう、なるようになれ!」
そう吐き捨てると――ギンは、身体強化を発動した。
前世のオリンピック選手など、比較にすらならないほどの速度で。
ギンは、たった一人、敵勢へと――突撃していった。




