47話
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翌朝になり、俺はランとギンと共に――子供たちの集まる草原へとやってきた。
いよいよ、戦ごっこの日だ。
両軍、それぞれ距離を空けて、互いに睨みを利かせている。
そして俺たち三人も、少し離れた丘の上から、その様子を見下ろしていた。
「それで、エル」
ギンが、やや緊張した面持ちで口を開く。
「ここから、どうするんだ? いくらなんでも、あの人数に対して、こっちは三人だぞ。突っ込んでいったって、すぐに叩きのめされて終わりだ」
「え? ギンお兄ちゃん、本気で言ってるの?」
俺は、思わず心底驚いた顔をしてしまった。
その反応に、ギンとランのほうが、逆に俺の発言を理解できていない様子だった。
……ああ、なるほど。この二人、まだわかっていないのか。
「よし、決めた」
俺は、ぱんと手を打った。
「うちの軍の大将は――ギンお兄ちゃんで!」
「うえ!? お、俺か!? エルのほうがいいだろ!」
ギンは、まさか自分がそんな大役を任されるとは、微塵も思っていなかったらしい。目に見えて動揺している。
「大丈夫。大丈夫」
俺は、軽い調子でそう繰り返した。
「作戦は――まず、ギン兄ちゃんが一人で、単騎突撃をする」
「アホか」
即座に、ツッコミが飛んでくる。
「大丈夫。大丈夫。大将が単騎で突撃するなんて、みんな予想しないでしょ? 戦っていうのはね、予想外のことをしなきゃ意味ないんだよ」
「そういうもんか……? でも、それだと、すぐに俺が倒されて、俺たちの負けになっちまうぞ」
「え? そんなに早く倒されるの?」
「いや……しばらくは、頑張るけど……」
急に歯切れが悪くなるギンに、俺はにやりと笑いかけた。
「ね。じゃあ、大丈夫」
「――兄ちゃんを倒すのに、向こうが手こずってるうちに、きっと向こうの大将が痺れを切らして出てくる。そこを、僕とランお姉ちゃんの二人で突っ込んで――一網打尽! っていう作戦。どう?」
ギンは、まだ納得がいっていない様子で、低く唸った。
「うーん……わかった。やれることは、やるよ」
そうして――作戦は、決まった。
しばらくすると、両陣営から、それぞれ大将だけが、すっと歩み出てきた。
「ギンお兄ちゃん! ほら、早く行かないと!」
「お、おう……」
背中を押されるようにして、ギンが歩き出す。
そうして――三人の大将が、平原の中央に集った。
「トール軍、大将――エイリク」
「オーディン軍、大将――シグル」
――そして、視線が、ギンへと向けられる。
……おい。俺たち、自分たちの軍の名前なんて、全然考えてなかったぞ。
……もう、適当でいいか!
「エランギルン軍、大将――ギン」
名乗りを上げるギンを、エイリクとシグルが、あからさまに見下した目で眺めてくる。
……まあ、そりゃそうだよな。
こうして、こいつらから疎ましく思われるのには――理由がある。
俺の親父が、盗人だから。
――いや。
正確には。
盗人だと、思われているから。




