38話
「まさか、光属性とはな。全く、血は争えんわい――ガッハッハ!」
じいちゃんが、愉快そうに笑い声を上げた。
「他人事だと思って……全く」
ジーンおばあちゃんが、呆れたように呟く。
当のランは、状況がまだ飲み込めていないのか、きょとんとした顔のままだ。
「おばあちゃん。私、珍しい才能があるってことじゃないの?」
「いいかい、ラン」
ジーンおばあちゃんの声色が、すっと真剣なものに変わった。
「珍しい才能っていうのはね。時に、危険にもなるんだよ。特に、各地で争いの絶えないこの時代にはね。下手をすれば――優秀な魔法使い一人のために、街ひとつが滅ぶ。なんてことだって、起こりかねない」
ランの表情から、みるみる血の気が引いていく。
不安げに、視線を彷徨わせた。
「でも――大丈夫」
ジーンおばあちゃんは、ランの頭にそっと手を乗せた。
「ランには、私がいる。それに、これは間違いなく素晴らしい、稀有な才能だ。使い方さえ間違えなければ、そんなことにはならない。それどころか――多くの人を、救うことだってできる。それだけは、忘れるんじゃないよ」
ランは、その手のぬくもりに安心したのか、少しずつ表情を緩めていった。
「光属性って、どんな属性なの?」
気になって、俺も尋ねてみる。
「希少属性という名のとおり、とても珍しい属性でね。一番の特徴は――治癒だよ。実力次第じゃ、失った腕や足だって、生やせるようになる」
――強い。
こういう転生ものだと、光属性って、だいたい強キャラの証だったりするよな。前世の記憶が、そんな軽口を叩いてくる。
生存という一点だけを見ても、これ以上ないくらい理想的な属性だ。
……いいなあ、光属性。
俺も、そうだったりしないかな。
「ラン。これから、魔法の修行は私がつけよう。だから、しっかり光属性を扱えるようになるんだよ」
「うん。わかった」
ランは、強い意志を宿した目で、頷いた。
「さて。次は……」
「僕、やりたい!」
いよいよ、俺の番だ。
さっきから、ワクワクが抑えられない。
――これでもし、属性なし、なんて結果だったら。
しばらく寝込む自信がある。
「はいよ、エル坊。手を置くんだ」
ジーンおばあちゃんが、石を俺の前に押し出してくれた。
そっと、手を乗せる。
ひんやりとした感触。触り心地自体は、ただの石と変わらない。
……これ、どこで採れるものなんだろう。あとで聞いてみようか。
そういえば、魔力石で武器も作れるって言ってたな。それも、ついでに。
「エル坊? もう、魔力は流しているのかい?」
「あ……ごめん、まだだった。流すよ」
考えごとを中断して、慌てて魔力を流し込む。
――どくん、どくん。心臓が、いつもより大きく脈打っている気がした。
石は、すぐに色を変え始めた。
二色――だけど、ランのときとは違う。左右じゃない。上下だ。
上は――金色、だろうか。
下は――灰色、のような色。
……何色なのか、それ自体はわかる。だけど、それが何を意味するのかは、俺にはわからない。
答えを求めて、ジーンおばあちゃんとじいちゃんへ視線を向けた。
――二人とも、口を大きく開けたまま、固まっていた。
「クックッ……ガッハッハッハ!! やりよった! わしの孫が、やりよったわい!」
「間違いなく、何かしらの素養はあるだろうと睨んではいたが……ここまで規格外だと、逆に頭が冷えるもんだね」
二人とも、それぞれのテンションで盛り上がっている。
……いいから、早く教えてほしい。
その視線に気づいたのか、ジーンおばあちゃんが、改めて口を開いた。
「これは、前代未聞なんだけどね。エル坊は――ユニーク属性の、複数持ちってことになる」
「ユニーク属性?」
さっきの説明には、出てこなかった分類だ。
「ユニークというのは〜」
じいちゃんが、腕を組みながら引き取った。
「さっきの、基本属性、希少属性――そのどちらにも分類されない属性を指すんじゃ。その人間固有の属性、とも呼ばれておる。なんせ、発現すること自体が少なすぎて、よくわかっとらん。もしかしたら、同じユニーク属性を持つ者が、他にもおるかもしれんがな」
「え……ってことは、結局、僕が何の属性に適性があるのか、わからないってこと?」
「まあ、待ちな」
ジーンさんが、にやりと笑う。
「同じユニーク属性を持つ人間が、実在するのか――その答えなら、今日、出た。なぜなら、私はこの上側の色――その属性を持つ人物を、知っている」
その場の全員が、じいちゃんの次の言葉を待つ。
俺も、思わず息を呑んだ。
「エル坊の一つ目の属性は……雷。で間違いない」




