35話
翌日。
いつもの広場に、また四人が集まった。
俺、ギン、ラン、そして——じいちゃん。
すっかり、いつものメンバーだ。
「今日は何するの?」
ランが伸びをしながら尋ねてくる。
ジーンおばあちゃんとの話し合いは、今日の午後からの予定だ。それまでは、普段どおり訓練でもしよう——そう伝えようとした、そのとき。
「ちょっと、ワシからみんなに話したいことがあるのじゃが」
じいちゃんが、ふいに割り込んできた。
その声色に、いつもの間延びした調子はなかった。
俺たちは顔を見合わせてから、じいちゃんを囲むようにして地面に腰を下ろす。
じいちゃんは、真剣な表情で俺たち三人をゆっくりと見回した。
「ふむ。何から話そうか……そうじゃな。まずは――お前さんたち、将来なにになりたいとか、あるかの?」
単純な問いだった。だけど、その奥に、何かを見極めようとするような気配を感じる。
俺たちは、思わず顔を見合わせた。
最初に口を開いたのは、ランだった。
「私は……今のところ、特には何も。ただ、なんとなく、おばあちゃんの後を継ぐんだろうな、とは思ってたわ」
「ふむ。ギン坊は?」
「……俺は」
じいちゃんも俺たちも、静かにギンの言葉を待つ。
「俺は……海に出たい! 海に出て、いろんなものを、この目で見てみたいんだ!」
ギンは、まっすぐにじいちゃんを見つめながら、大きな声でそう言い切った。
じいちゃんは、にかっと笑うと、ギンの頭をガシガシと撫でた。
「ガッハッハ! いいのう! なれなれ!」
「それで――エルは?」
将来、なりたいもの、か。
考えてみると、これまで真剣に考えたことがなかった。両親を、家族を、友達を、自分自身を守るために強くなること。頭の中は、いつもそれでいっぱいだった。
……色んな場所を、旅してみるのも悪くないかもな。ふと、そんなことを思う。
「じいちゃん。僕、まだ二歳だよ。まだ、なんにも決めてないよ」
「……そういえば、そうじゃったな。お前さんの行動が、年齢に見合わなすぎて、すっかり忘れておったわい」
じいちゃんは、ひとりで納得したように頷くと。
「じゃあ、お前は一旦いい。どうせ、あんまり関係ないしのう」
——関係ない?
なんだ?
「よし。では――ワシから、みんなに提案がある」
ギンとランも、きょとんとした顔でじいちゃんを見つめていた。
じいちゃんは、たっぷりと間を取ってから――にやりと笑った。
「ワシの、弟子にならんか?」




