31話
「あわわわー、こわかったぁぁぁ!!!」
見事にじいちゃんへ踵落としを決めた本人——ランが、今になってがくがくと肩を震わせていた。
あれだけの一撃を叩き込んでおいて、今さら怖がるのか。
「でも、成功したでしょ!! すごいよ、ランお姉ちゃん!!」
俺は駆け寄って、ランの両手を取った。
——今回の作戦は、こうだ。
まず、ギンが陽動役として真正面から手数の多い連打を仕掛ける。派手に、目立つように。ジークの意識を、引きつけるためだ。
その隙に俺が合流する——のだが、実はそこには、ひとつ仕込みがあった。
合流する直前、俺はランを腕に抱え上げ、【累纏・弐】の力を全開にしたまま、彼女を空へと投げ上げたのだ。
あとは、砂埃が晴れるタイミングを見計らって、落下してきたランがジークに一撃を叩き込む——それだけ。
言葉にすればシンプルだが、実際は綱渡りもいいところの作戦だった。投げるタイミングが少しでもずれれば、着地点も威力も、まるで別物になっていただろう。
それでも、成立した。
ギンとランが、身体強化を常時発動できるまでに育ったからこそ——できた離れ業だ。ひと月前なら、間違いなく不可能だった。
……今考えたら無茶な作戦だったけど、うまくいってよかった。
「みんな、よくやった!!」
ギンも駆け寄ってきて、三人で肩を叩き合い、作戦の成功を喜び合う。
達成感というやつが、じわじわと胸の奥から込み上げてくる。
「ジーンおばあちゃん! どう、見てた!?」
俺は声を張り上げ、まだ地面に座り込んだままのジーンさんへと駆け寄った。
「ああ……見てたよ。よくやったね」
その声からは、いつもの毒舌も、余裕も鳴りを潜めていた。
「続きは、中で話そう。……その前に、悪いけど、起こしてくれるかい。腰が、抜けちまってね」
尻餅をついたまま、助けを求めてくるジーンさん。あの威厳たっぷりの村の預言師は、そこにはいなかった。
——ああ、そういえば。
「ガッハッハッハ!! じゃから言うたじゃろうが!!」
じいちゃんが、大声で笑いながら歩み寄る。そして、ジーンさんの背に腕を回すと、よっこらせ、と気軽な調子で担ぎ上げた。
村でただ一人の預言師が、悪友の背中で、ぐったりと運ばれていく。
——なんとも、締まらない光景だった。




