表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
24/53

24話

 翌日。俺はギンとじいちゃんの三人で、ランの家を訪れた。


「ランの家って、やっぱでかいよなー」


 ギンが門を見上げて、感心したように呟く。


 実を言うと、ランはお嬢様なのだ。

 彼女の祖母——ジーン・ファンバイクは、この村でただ一人の預言師であり、村じゅうから絶大な信頼を寄せられている。言ってしまえば、村長よりも偉い存在なのだ。


 門の前で待っていると、ランが小走りで出迎えてくれた。


「あ、いらっしゃい。ちょっと待ってね。おばあちゃんに、来たよって言ってくるから」


 そう言うと、ぱたぱたと軽い足音を立てて、奥へと駆けていった。


「なにげに、エルがランの家に来るのって初めてだよな」


「うん、そうだよ」


「ランの家ではな——めちゃくちゃうまいお菓子が出るんだぞ!」


 ギンが、にかっと白い歯を見せて笑った。


「本当!?」


 僥倖である。

 渡りに船である。


 この世界に転生して以来、俺は甘いものというものを、一度も口にしたことがなかった。

 父が漁師ということもあって、食卓に並ぶのは基本的に海の幸ばかり。どうしても、塩気の効いたものに偏ってしまうのだ。

 前世とは比べ物にならないほど満ち足りた暮らしではあるが——たった一つ不満を挙げるとすれば、この甘味の欠乏だった。


 だから、期待に胸が膨らむ。


「がっはっは! エルは甘いものが好きか! よし、今度じいちゃんが、何か持ってきてやろうな!」


「うん! おじいちゃん、すき!」


 そう言って、とりあえず持ち上げておく。

 ——期待してるよ、おじいちゃん。


「まったく。あんたも相変わらずだねえ、クソジジイ」


 背後から、しわがれた声が飛んできた。振り返る。


 そこに立っていたのは、一人の老婆だった。

 足首まで届く蒼いマントを羽織り、手首や首元からは、ガラスのようにきらきらと光る装飾品や、獣のものらしき骨をじゃらじゃらとぶら下げている。


「おお! クソババア、まだくたばっておらんかったか!」


 ジークが、心底嬉しそうに大声を張り上げる。


「こっちのセリフだよ。まったく、十年も顔を見せないで。てっきり、無事にヴァルハラへ召されたものかと思っておったよ」


「がっはっは! あいにくさまじゃ! おかげさまで、孫と一緒に遊んどるわ」


 そうして、二人の遠慮のない掛け合いは、しばらく続いた。旧友——いや、悪友の再会というやつだ。


「おばあちゃん! ここにいたの!? わざわざ探しに行ったのに!」


 ぱたぱたと戻ってきたランが、当の祖母がとっくに俺たちと立ち話をしているのに気づいて、頬を膨らませた。


「すまんすまん。ちょっと用事があってな、外に出ておったんじゃ。——ああ、ジーク。これ、わしの孫。かわいいじゃろう」


「知っとるわ。昨日一緒に遊んだんじゃからな。じゃが、わしの孫のほうがかわいいわい」


 年寄り二人が、さっそく孫自慢の張り合いを始める。

 俺達はそれを適当に聞き流し、ランに案内されるまま、家の中へと足を踏み入れた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ