22話
じいちゃんから色々と話を聞いたあと。
明日、予知夢の真偽を確かめるため、みんなでランの家に行くことになった。
俺は「このまますぐ行こう」と言ったのだが、じいちゃんが「心の準備が……」と口ごもったので、結局明日に持ち越しだ。
いったいどういう関係なんだか。
そうして俺は、じいちゃんにだっこされて家に帰ってきた——のだが。
「お義父さん!? ど、どうしたんですかその格好!?」
玄関先で、母が悲鳴じみた声を上げた。
「いやー! エルに空中から叩き落とされてなー、がっはっは!」
「空中? 叩き落とされた? どういうことですか!?」
「がっはっは!」
俺がここまで動けることを、母はまだ知らない。そこへきて、この空気の読めないじいちゃんである。
わかってはいたが、母は案の定、大混乱に陥っていた。
その後、たまたま早く仕事を上がってきた父のおかげで、騒ぎはなんとか収まった。
ちなみに真相は——俺たちが仕掛けた落とし穴に、じいちゃんが勝手に落ちた。ということにしておいた。
あとはいつも通りだ。じいちゃんが際限なくだる絡みしてくること以外は、平穏そのものである。
そして、幼児にとってはあまりにも早すぎる就寝の時間がやってくる。
——だが、ここからが本番。俺の訓練の時間だ。
さっそく、ステータスを表示する。
【名前】エル
【レベル】1
【力】25 (+3)
【器用】10 (+2)
【敏捷】15 (+3)
【知能】26 (+1)
【魔力】58 (+5)
【運】10
……一日で、結構上がってる!
なんでだ!?
思い当たる節は——じいちゃんとの、あの勝負か。
実践になると、得られる経験値が増える、ということなのか。
じいちゃんが言っていた「常に戦場に身を置け」というのは、つまりこういうことなのかもしれない。
これから強くなっていくためには、実践的な訓練もどんどん取り入れていったほうがよさそうだ。
……うーん、でも。実践って、どこからが実践なんだろう。
ギンやランと組み手をするだけじゃ、ダメなのかな。
うーん。ここは要検証、だな。
さて。
そう意気込んで訓練を始めようとした——のだが。
体が、極度の筋肉痛でだるい。指一本動かすのも億劫なほどだ。
やはり、今の俺に決定的に足りないのは、強靭な肉体だ。
累纏を使いこなすには、それに耐えうる器がいる。
このままでは、数秒発動しただけで戦闘不能——そんなお粗末な事態にもなりかねない。
何か、効率のいい鍛え方を考えなければ。
……そこで、ふと思いついた。
累纏を発動して、たった数秒でこれほどの筋肉痛になるのなら——発動状態で筋トレをすれば、それだけで凄まじい負荷になるんじゃないか?
通常の筋トレの、何倍、いや何十倍もの効果があるんじゃないか。
ものは試し、っと。
……いや。今日はさすがに、危険か?
……三秒だけ。三秒だけなら、大丈夫だろう。
累纏を、発動した。
感覚が一気に研ぎ澄まされ、時間の感覚がとろりと溶けていく。
逆立ちのまま、腕立て伏せを一瞬でこなす。
まだ一秒くらいのはず。
そのまま筋トレメニューを一通りこなした。
——あれ?今、何秒たった?
わからない。時間の感覚が、まるで掴めない。
その、時だった。
「エル!」
じいちゃんが血相を変えて、部屋へと駆け込んできた。
そこで俺の意識は——ぷつりと、途切れた。




