21話
「……なるほどのう。予知夢か」
ジークはランの話を最後まで聞き終えると、その顔をまじまじと見つめた。
「ランちゃん。ちなみにお主のばあちゃんの名は、なんという?」
「ジーンだよ」
ランは首を傾げながら答える。
「……っ。まさか。ジーン・ファンバイクか?」
ジークが、がっはっはと腹を抱えて笑い出した。
「あの化け物ババア、まだ生きとったか。がっはっは!」
俺とギンとランは、三人そろって顔を見合わせ、そろって首を傾げた。話がまるで見えない。
「がっはっは、すまんすまん。ランちゃんのばあちゃんはな、わしの旧友でのう。いや——悪友、と言ったほうがしっくりくるかの」
「おばあちゃんの、友達なの!?」
ランが目を丸くする。
「ああ。昔は冒険者として、いっしょに旅をしたこともある。非常に優れた魔法使いじゃったよ」
そう言って、ジークはランの頭をくしゃりと撫でた。
「そうか。あやつに、こんな大きな孫ができておったか。まさかわしの孫と一緒に遊んでおるとはなあ」
しみじみとした声で呟いてから、ジークは軽く咳払いをした。
「——すまんすまん。それで、予知夢の話じゃったな。まずわしから言えることは、その予知夢は……おそらく、正しい」
「「「え?」」」
三人の声が、きれいに重なった。
「いや、特に理由があるわけではないんじゃがな。おそらく——いや、間違いなく、その予知夢の力は、あのババアの血じゃろう」
「でも、ランお姉ちゃんはおばあさんに、間違いだろうって言われたんだよ」
ギンが不思議そうに口を挟む。ジークは顎を撫でながら、ゆっくりとうなずいた。
「あー、それはおそらく……お前たちが、まだ小さすぎるからじゃろう。子供にそんな話を聞かせても、怖がって夜も眠れなくなるだけじゃからな」
なるほど。一理ある。ランが俺たちにこの話をして、全員が混乱して、下手に親にでも伝えたら——村じゅうが大混乱になりかねない。
「だからな、あのババアのことだ。何かしらの策は、ちゃんと考えておるはずさ」
「なんとか、なると思う?」
ランが、すがるように尋ねた。
「どうだかなあ。わしがおれば、なんとかはなると思うんじゃがな。じゃが、わしも何年もずっとここにいるわけにはいかんのでな」
「え? じいちゃん、どっかいっちゃうの?」
「ぐは……っ、孫がかわいすぎる……! 残念じゃが、そうなんじゃ。もはやわしは、あまり自由な身ではないのでな」
ジークの声に、ほんのわずか、影が差した。
「あの! どうやったら、そこまで強くなれますか!?」
ギンが、目をキラキラと輝かせながら身を乗り出した。
「がっはっは。修行! 実践! 修行! その繰り返しじゃ! あとは常に、戦場に身を置くことだな」
そう言って、またガシガシとギンの頭を撫でる。
どうやらギンは、ジークのあの圧倒的な強さに、すっかり心を撃ち抜かれてしまったらしい。
ジークは撫でる手を止めると、今度は俺のほうへ向き直った。
「ところでエル。お前は——これから、どうしたいんじゃ?」
俺はしばらく考えた。
隣で拳を握るギンと、腕を抱えるランの顔を順に見て、それからまっすぐにジークへと向き直る。
答えは、とっくに決まっていた。
「俺は——この村のみんなを、全員救いたい」




