表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
19/50

19話

 結末は、あまり格好いいものではなかった。


 累纏の反動で全身の力が抜け、空中から地面へと落下しかけたところを——上半身が地面に垂直に埋まっているジークに、足で受け止められた。


「ふっごっご!ふぐあっがごー!」


 地中から声がした。


 ……おそらく「がっはっは!つかまえたぞ!」だろうとは思う。思うが——上半身を地面に埋めたまま足でキャッチするとはどういうことだ、あのじじいは。


 しばらくして、ジークは地面からずるりと這い出してきた。頭から土をかぶって、それでも笑っている。


「がっはっは。いやあ、やられた、やられた。戦闘ではないにしても、人間に土をつけられたのは久方ぶりじゃわい」


 そう言いながら、ジークの目が俺へと向いた。


「それにしても……」


 笑顔のまま、目だけが変わった。


「エル。おぬし——まさか」


 視線が、全身を射抜いた。


 ぞくりとした。笑っているのに、まるで戦場で敵と向き合うような目だった。四十年の歴戦の重さが、ただの眼差しにじわりと滲んでいる。


「がっはっはっは!」


 次の瞬間、ジークは盛大に吹き出した。


 手を叩いて、目頭の涙を拭いながら、腹を抱えて笑い続ける。


「はっはっは! 前言撤回! 神はおるかもしれんな! わしの孫は神の子じゃ!」


 ……急にどうした。頭がおかしくなったか。いや——もとからか。


「じいちゃん。勝負は?」


「はっはー? 地面に落ちた時に頭で体を支えたようなもんじゃからな。左腕と右足以外を使ってしもうた——わしの負けじゃ」


 勝負には、勝ったらしい。


 最後以外は手も足も出なかったも同然だったが、本人がそう言うなら、まあいい。


「で。何がそんなにおかしかったの?」


 まだひっく、ひっくと笑いの余韻が抜けていないジークに尋ねた。


「あーいやな。長らく戦場を渡り歩いてきたが、エルお前さんほどの才能に出会ったことがない。強者を求めて旅をしたこともあったが——まさか自分の孫が最強の戦士になるかもしれんとは。おかしくてな。悪魔付きでもないのに、とな。まさしく神の子としか考えられんのじゃ。わしは神を信じとらんのだが、初めて信じそうになっとる。がっはっは!」


 どうやら、実力は認めてもらえたらしい。


 だが。気になる言葉があった。


「あくまつき?」


「その名の通り、悪魔が取り憑いた人間のことじゃ。依り代となることで人外の力を宿す。何度か戦ったことがあるが——強く、狡猾で、やっかいなんじゃ」


「なんでぼくがそうかもって思ったの?」


「ああ。悪魔は子供にも取り憑く。その場合は年齢に関わらず、やっかいな敵になる——だからな。まあ、悪魔付きであれば、相対すればすぐにわかる。邪悪な気をまとっておるから。エルにはそれがない。じゃが、その実力はそれほどのものじゃということだ。こうして体験した今でも、信じられんほどにな」


 思っていた以上に、認めてくれたようだ。

 だが、悪魔付きか。やはりこの世界は思っている以上に物騒なようだ。


「じーちゃん。約束、おぼえてる?」


 ジークがぴたりと止まった。


 少しの間があって——ヒゲの奥で、口元がゆっくりと動いた。


「……もちろんじゃ。ギン坊とラン嬢もつれてきてからゆっくり話そう」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ