15話
ジークは、喜んでいた。
戦。依頼。魔物。亜人種。あらゆる闘争に身を投じてきた四十年。幾度となく命の際に立ち、そのたびに生き延びてきた。
——よもや、孫とおいかけっこをする未来があるとは。
なんとバチあたりなことだろう。やはり神というのは、いないのかもしれないな。
そんなことを考えながら、ジークは子どもたちの小さな足跡を目で追った。
たどり着いたのは、海辺の岩礁地帯だった。
波に削られた岩肌がでこぼこと連なり、一見しただけでスムーズな移動を拒んでいることがわかる。
「ふむ、なるほど。これは片足では進みにくいのう」
しかし——ジークは笑った。
子どもの小細工。なんとかわいらしいことか。
右足を封じられたまま、岩肌を踏み台にして飛び跳ねるように前へ進む。常人ならば慎重に足場を選ぶような地形を、ジークは軽やかに、しかし恐ろしい速度で踏み越えていった。
「げ……っ!」
最初に見つかったのはギンだった。
大岩の陰に身を潜め、そっと隙間から様子をうかがった——その瞬間、目が合った。
ジークは既にこちらを向いていた。
人間離れした速度で距離が縮まってくる。まるで地面を滑るように、いや、宙を泳ぐように。
ギンは反射的に踵を返して逃げ出した。
——しかし次の瞬間、ジークは隠れていた大岩に、速度を殺さぬまま左腕を叩き込んだ。
岩が、砕けた。
盛大に、豪快に、ただの石ころのように。
砕け散った破片が周囲に飛び散る中、ギンは咄嗟に腕で顔をかばいながら必死に回避した。幸い、大きな傷は負わずに済んだ。胸をなでおろす間もなく——
「つーかまえた!」
背後から声がした。
時すでに遅し。
ジークの手がギンの首根っこを掴んで持ち上げていた。




