表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

41/44

第四十話「禁忌の行方」

 そしてユーキにも新たな試練が訪れる。それはヴァスパーラ共和国とアーシラドゥン王国へ潜入しての偵察任務だった。両国との話し合いは行き詰まっており、今回のトライポッド越境に対して、もう悠長に構えている時間はこの国にはなかったのだ。


 従属の魔道士を従え、水晶の卵に操られる人間を排除し情報を集めるのだ。


「こんな仕事は断ってもいいのよ?」

「いや、僕だけがのんびりとしていられないよ。皆、命を賭けて戦っている」

「そう……、無理はしないでね」

「分かってる」


 マリエッタとフィリスの件もあり、カナはユーキを気づかう。


「カルトにはカルトだ。神でも悪魔と手を結んででも、ヤツらを排除しなければ」


 火星人の目的は、この世界の全ての生物の排除である。自分たちだけは助かるとの、悪魔の囁きが反乱の芽を生んでいた。


「レティシア様ってどんな人なの」

「優しくて慈悲深い人よ。産まれながらに強い力があった。だから……」


 カナは下を向く。


「そうか……」


 王族もまた揺れていた。


   ◆


 城の深部。地下の廊下を、ユーキは案内の魔道士と共に進む。この国一と言われる魔道士に対面するためだ。


 促され対面の間に入り、暗闇に目をこらす。壁に掛けられているいくつもの魔法ランプがほのかに光り、奥から黒い魔法衣に身を包んだ男が音もなく現れフードを外す。


 黒に濃い青色が混ざった長髪に、青白い顔色の年配の男だった。


「私はこの国の従属を束ねている(おさ)だ」


 やはりこの国は禁忌(タブー)を温存していたのだと、ユーキは頷いた。


「ユーキ、君の力を調べさせてもらったよ」


 透明な塊が空中を浮遊して現れ、男の手の上で止まる。


「そしてこれもな……」

「水晶の卵!」

「公にはなっていないが、ここサザンウォルダでもいくつか見つかっている。どのような仕組みが知っているかな?」

「だいたいは……」

「一見して見慣れない風景が映っているだけだがな……、常人が認識できない一瞬、まったく別の映像が流れている。それは美しい楽園を連想させたり、人間同士が醜く争ったり、他には暗闇の中で光が不規則に点滅したり様々だ」


 それは現実世界では、禁止されている映像表現であった。人の潜在意識に訴え、一定の影響下に置けるとされるが、火星人は科学的に解明し実用化しているのだ。


「それだけではないぞ。直接頭の中に語りかけ、この力に囚われれば逃れることは出来ん。恐るべき水晶だよ。従属の力を使う……」

「つまり無力化もできると?」

「うむ、その力もまた存在する。来なさい」


 (おさ)は後方の暗闇に向けて語りかける。現れた人物が目深(まぶか)に被っていたフードを外すと、長い水色の髪がハラリと広がった。


「フィローラ! どうしてここに?」

「ノワールの冒険者よ。姪が世話になっているそうだね」

「姪? 従属の魔導士の姪がフィローラだって?」

「……黙っていて、……申し訳ありませんでした……」


 フィローラは涙ぐんでから下を向いて手を握り、声を絞り出す。


 魔導士がユーキのことをあえてノワールと呼んだ意味は、今は分かっている。あの骨董品屋の店主から聞いた話はこうだった。


 今から数百年も昔、まだこの大陸が今のような国家体制になる前の話だ。


 従属を使う魔導士たちが数十万の民衆を操り、次々に小国の王宮を破壊して回った。王族と貴族は各地域で団結し、それが今の国家のそれぞれの原型となっている。


 しかし従属させられる民衆は増える一方で、混乱は収まらなかった。


 その時に突然現れて禁忌(タブー)の従属を浄化したのが、ノワールの騎士と伝えられていた。


「ノワールの騎士については知っているか?」

「知り合いに、だいたいの話は聞きました……」


 ノワールがどのようにして従属を浄化したかは、伝説でも語られていないそうだ。


「うむ、そうか、その話には続きがある。騎士に付き従った一人の魔女がいた。彼女こそが従属の魔法を使い、世を収めた。そしてそれは従属させられるノワールがいてこそ可能だったのだ」

「転生人……」


 魔女が必要とした力とは魔力を取り込み、応用を加える力。


「ノワールがそうだったのか、我らが一族にも記録はない。二人は本当の名前すら明かさず、記録にも残さずこの世を去った。我々一族の者たちにもな……」

「フィローラがノワールの子孫? そして僕は転生人だ。それが、二人が選ばれた理由(わけ)……」

「いかにも……、そして君には姪に従属してもらう。いや、既に――な」

「僕がもう従属者になっている……、そうか、そうなのか……、従属はいったいいつから……」

「紋章を描いていただいたのが、従属の儀式の始まりでした」

「あの時に……」

「それから少しずつ力を強めて、クワクリルトン諸島で全ての儀式が終わりました……」


 あの衝動を抑えられなくなりそうになった夜の出来事だ。


「しかし、ユーキの心には竜の姿が焼き付いていて、それの排除には……その為には……」

「もういいっ!」

「そして最後に、この告白が必要だったのです……」


 フィローラは力なくうな垂れた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ