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第三十八話「強襲の三脚軍」

 翌日、王都は蜂はちの巣を突ついたような騒ぎとなった。北方の索敵でトライポッドが確認されたのだ。敵はアーシラドゥン王国との国境線を突破して、アーヴィア王国に進撃を開始した。



 アランたちは見学を促され、王宮にあるバルコニーへと上がる。眼下では王立軍の騎士団と近衛隊が集結していた。


「あれは何をやっているんだ?」

「出陣式です……」

「敵が来ているのに?」

「はあ……」

「やれやれだな……、まあ、初陣だし仕方ないか」


 クリフォードは呆れたように言う。貴族ばかりの精鋭は立場上、作法に色々とうるさいのだ。


「我が国は、とりあえず行ける者から出撃させるのだがな。魔族はどうなのだ?」

「我々はまだ統一間もないので、権威を示すためにも式典などは厳格に執り行うようにしています。これほど時間はかけませんけが……」


 ズベルアフは魔族の事情を説明する。


「敵が迫っていてもか?」

「皆我先にと勝手に飛び出すので、私が先陣を切って後続をまとめながら進軍します」

「それはそれで大変そうだな……」


 訓示を終えた部隊は次々に飛び立っていく。城壁の先の陣地にも兵が配置され始めた。


「部屋を用意して貰いました。地図もありますから作戦の説明をいたします」

「うむ。我々もどこに向かうか決めようか」


 ヴィセンテの話にクリフォードは全員に目配せする。互いの戦闘観戦は同盟の証明だ。



 部屋の大きな丸い机には王都周辺の地図が広げられていた。


「敵は総数三機のトライポッドです。現在山岳部の国境線を越えて我が領内に侵入しました」


 ヴィセンテが指示棒でトライポッドのいる予測場所を指す。


「街の名はディルダームか。ここが目標だな」

「予め街と山岳地帯との間には陣地を多数構築済みです。街の守備隊の配置は終わっているでしょう」


 敵の進撃は相変わらず国境突破を踏襲していた。だから備えの渦中に飛び込むこととなる。


「この辺りは森か……」


 クリフォードは地図の記号を読みつつ言う。


「戦訓により多数の落とし穴とロープを使った罠を仕掛けております」

「うむ、時間稼ぎにはなるな」


 修羅場をくぐり抜けてきたクリフォードの感想は辛口である。


   ◆


 ズベルアフ以下二名の戦士と、クリフォードが従えるシャノンとディナータの六人は観戦武官として戦いを見守ることとなった。案内役はカナ、そしてユーキとフィローラの三人だ。九人は北へと飛んだ。


「王立騎士団と近衛隊が先発して食い止め、ゴーレムの空中搬送を待つとのことです」

「うむ、我が国もゴーレムが活躍してくれた。必ずや敵を撃退してくれよう」


 カナの説明にクリフォードは力強く頷く。各国共に戦力は増強され、そして火星人もまたそれを上回る戦力を投入しつつあった。戦いはまさに泥沼の戦争へと突き進んでいる。


 先発隊の中には、マリエッタとフィリスがいるはずだ。


「ユーキ……」

「うん、僕たちは僕たちの仕事に集中しよう」

「はい……」


 二人の任務は要人の護衛である。よほどの事態にならなれれば戦いへの参加はなかった。


 この九人の戦闘力を持ってすれば、複数のトライポッドと戦えるのだがここは王都だ。王立騎士団と近衛隊のじゃまは出来ない。



 北方の街、ディルダームでは住民の避難が始まり、北の城壁の前では陣地の補強がなされ多数の兵が配置されている。


 更に飛ぶと森林火災と熱線、障壁のきらめきが見える。戦いは森から牧草地へと移っていた。ユーキたちは距離をとって高空に停止。そして戦場を俯瞰(ふかん)する。


 飛竜の編隊が上空に現れ、牽吊されたゴーレム一体を切り離す。空中には球体障壁に守られた数人のゴーレム使いが浮かぶ。その中に緑と赤い髪の毛の姿が見て取れた。


「マリエッタ、フィリス……」


 二人は念動力の力を見込まれ、新設されたゴーレムの部隊へと志願した。半ば強制に、である。


「あの娘たちがいるのか? もう立派なゴーレム使いではないか」

「はい」


 ついこのあいだ見た魔法少女たちが、今は別の職種となり最新兵器を操っているなど成長著しい。クリフォードは戦場に、驚き混じりの視線を送る。


 一体のゴーレムが降下しつつ、低空を王立騎士団数名が飛び、トライポッドに接近する。


 敵は偵察型が二機に戦闘型が一機だった。飛竜部隊は別のゴーレムを移送するため駐屯地へと取って返す。


「観戦だけとは歯がゆいものだな」

「ええ、強敵を前に見るだけなど、初めての経験ですよ」

「まずは我らが王国の軍事力を、御見聞ください。同盟国として」


 ズベルアフとクリフォードの対しては、王族のカナが説明役となるのだ。



 騎士たちの執拗な攻撃とゴーレムの奮戦に一機のトライポッドは撃破され、残った二機はロケットモーターに点火し、アーシラドゥン国境線に向けて撤退した。


 間違いなかった。既に火星人の拠点となっている国が、この世界には存在するのだ。


「凄いものだな……」

「驚きましたよ。我が軍団のゴーレム以上の働きです」


 同じ兵器を運用するクリフォードとズベルアフは、驚きの表情で戦い済んだ戦場を見ていた。


 一体のゴーレムが三体のトライポッドを退けたのだ。それも近しい知り合いが操っていたなど、ユーキは誇らしい気分になった。


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