第二十四話「魔族の戦場」
先頭を行くユーキたちは、いつものように遠距離まで前方を探査しながら、戦場らしき場所を探る。
「森林火災を発見しました」
「それだよ!」
「はい進路を修正します」
ユーキたちの変針に混成軍の帯も続く。
「間違いありません! トライポッドです……。二体確認しました」
「本当に二体もいるのか……」
「はい、数名が攻撃を仕掛けていますが、進撃は続いています。効果はあまり――、いえまだここからでは詳しくは分かりませんが……」
フィローラは言葉を濁し、ユーキはどうするかを考えた。多くの後続を率いる責任は重大だ。
「あっ、街への途中に陣地が構築されています。魔族軍の本隊はそこにいるようです」
「分かった。まずはそっちに向おう!」
一行は塹壕が掘られ、土嚢が積まれている陣地に下りたった。援軍を迎え、場は沸き返るかと思っていたが、魔族の兵たちは黙々と自分たちの責務を果たしている。
「クリフォード殿! よくぞ来てくれましたな!」
兵を従えて魔族の将が出迎えにやって来た。
「いえ、ドッジズムド殿。戦況はいかがですか?」
「うむ、見ての通りですな。御覧下さい」
既に戦いは森を抜けて草原へと移っていた。背後の森は燃え盛っている。
二体のトライポッドは共に熱線砲口を三機装備する、初めて見る戦闘型だ。二門は偵察型と同型で一門はややサイズが大きかった。
数名の魔族の戦士が空中を飛び回り障壁がきらめく中、連続攻撃を足元に加えている。それはトライポッドの進軍を遅らせていた。
陣地から連続した魔法光球の攻撃が始まり戦士たちは一旦引く。それはトライポッドを直撃するも光のエネルギーは弾かれ四散している。触手は防御態勢を取っているので、まるで効果がないという訳ではないようだ。
「貴殿の進言もあり、精鋭を集めた集中攻撃で、としていますがなあ……」
「決定的な打撃は与えられませんか……」
「ええ、各自の魔力も枯渇し始めました」
「協力させましょう。シャノン!」
「はっ!」
呼ばれたシャノンが一歩前に出る。
「軍団を率いて障壁と攻撃の魔法で援護だ。飛竜は遠方待機」
「はつ!」
「我々も行くと致しますかな?」
将軍も前に歩み出てカナを窺う。
「ええ、頼みます。将軍」
「任せて下さい」
そう言って胸を叩き、将軍がアーヴィア軍を、シャノンがフレイトス軍を率いて陣地に散る。魔族の兵たちが案内のために同行した。
場にはドッジズムド、ユーキと三人娘、クリフォード、そしてカナと護衛のアンガス、バイロンが残された。
「あなたたちも行きなさい!」
「いっ、いえ。私たちはカナ様の護衛で……」
「お傍を離れる訳には……」
「いいから行きなさい。空気を読みなさいよ! あいつを止めなければ私たちの命はないわ。敵前逃亡するつもりなのかしら?」
カナはけわしい顔を作りつつ、トライポッドを指さす。
「まっ、まさか! 逃亡だなんて……」
「すぐに行きますっ!」
二人は敬礼し、慌てて将軍たちの後を追って走った。
「彼は?」
「ああ、失礼いたしました。彼は……」
「アーヴィア王国の冒険者、ユーキです」
興味ありげにユーキを窺う魔族の将に、クリフォードが応えユーキは名乗る。
「ふむ、私はドッジズムド。アーヴィアで唯一ヤツと直接対決した冒険者ですかな? 例のノワール、そしてパーティーの魔法少女に……、予備協議の貴賓、戦神乙女。先ほどは将軍の姿も見えましたなあ――」
ドッジズムドは愉快そうにそう言って笑った。将ならば群将だ。他国の情報にも詳しはずで、もしくはどこかの戦場でユーキたちは彼の配下と相まみえていたのかもしれなかった。
「――いやあ、懐かしい。これではまるで同窓会だ」
それにしても、二機ものトライポッドの進行が直前に展開されているのに、この余裕は何なのかと皆は訝しむ。しかもそれは重武装の新型なのにだ。
視線に気が付いたドッジズムドは、少しバツが悪いような顔を見せてから表情を引き締めた。
「実はこちらに殿下をお迎えしているのですよ。それに……、いや御案内いたしましょう。こちらです」




